IT企業の記事一覧
2020/01/22
【紡がれた意思、閉ざされた思い】最終話 紡がれた思い
石川たちは、真辺の家を事務所にして作業をしている。 27名も入れる広さではないが。ほとんどの人間が、ドクター松本の施設で作業しているので、事務所の機能があるだけで十分なのだ。皆が集まるだけなら、真辺の家で困る事がない。贅沢にも庭らしきものがあるのだ。 真辺の家は、郊外にある一軒家で、周りと見比べても大きい。石川達も驚いたが、すでにローンも完済しているという事だ。そんな条件もあって、事務所に使う事になった。 家の所有者は、最初は篠原にするという話しになったが、篠原が、真辺の『意思(遺志)を継ぐ』のは石川だから…
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【紡がれた意思、閉ざされた思い】第九話 閉ざされた思い
「石川!!!山本でも、井上でも、小林でもいいどういう事だ!俺に説明しろ!!!」 篠原が、警察病院の霊安室に飛び込んできた。 切られたと思われる場所には包帯がまかれている。包帯には、血だと思われる物が滲んでいる。 そして、横たわる真辺を確認した。真辺の横に立ち、顔を覆っていた布を乱暴に払い除けた。 「おい。起きろ。新しい現場だ。お前がいないとダメな現場だ。そうして寝ている余裕があるなら大丈夫だろう?もっともっと俺がお前にふさわしい仕事を持ってきてやる!おい、いつまで寝ている。いい加減にしろよ。おい。ナベ。起き…
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【紡がれた意思、閉ざされた思い】第八話 意思を継ぐもの
「篠原さん。どうしましょうか?」 「あ?石川か、任せる。山本さんは?」 「キッチンでお茶作っています」 「そうか」 篠原は、近くで作業をしていた、石川に状況を確認した。 「石川さん。このお茶使っていいのですよね?」 「ナベさんのお茶?いいと思うよ」 「本当ですか?すごく高い奴ですよ」 「いいよ。飲まないともったいないよね。それに、確か、ナベさんの地元のお茶だって言っていたよ」 「へぇ静岡なのですね。了解しました」 あの日から、2ヶ月が経っていた。 精神的な立ち直りはまだ出来ていないが、そんな事を真辺が望んで…
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【紡がれた意思、閉ざされた思い】第七話 別れ
施設に充てた白鳥からのメールで、メーカにハードウェアに関する支払いを行いました。 要約するとそういう内容が書かれていて、振込用紙が添付されていた。 勿論、メーカではなく、副社長の会社に・・・だ。 (終わった・・・) それが真辺の感想だ。 多分、それを見た皆が同じ思いだったのだろう。 真辺は、最悪な状況だが、確認しておかなければならない事を、石川に問いただした。 「石川。この件は、施設側やSIerは知っていると思うか?」 「・・・わかりません。ただ、SIerは知っていると思います」 真辺の考えと同じだが、問題…
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【紡がれた意思、閉ざされた思い】第六話 修羅場
「ナベさん。ナベさん」 真辺は、山本に起こされた。 「あぁすまん。寝てしまったみたいだ」 「えぇそうですね。それに、なんど見てもびっくりしますよ。本当に器用に寝ますよね」 「特技だからな。なんなら、秘伝だが、お前になら伝授してもいいぞ?」 「遠慮しておきます。俺は、やわからなベッドの上が好きですからね」 「あぁそうだな。隣に愛おしい奥方が居れば尚良だろ」 二人は、お互いを見て笑った。 鉄火場。修羅場。デスマーチ。どんな言われ方をしていても火中にいるのには違いない。しかし、真辺たちは笑う事を忘れない。余裕がな…
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【紡がれた意思、閉ざされた思い】第五話 確執と問題
「ナベ。お前休んでいるのか?」 呼び出された会議室で、昨日まで倒れて休んでいた篠原が真辺に言い寄ってきた。 そう言われるのも当たり前だ。 6月から始まったデスマーチ。9月に入っても収束していない。 6月はまだ良かった。 7月から残業時間がおかしな数字になり始める。 7月の残業時間、280時間。勤務時間ではなく、残業時間だ。 8月はもっと酷くなる”残業320時間”国が定める過労死の時間を、4倍した時間と同じになっている。 9月は、前月の半分位になる計算だ。 それもそのはずだ。 元々請け負った業務以外に、テスト…
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【紡がれた意思、閉ざされた思い】第四話 消火活動
「はぁどういうことだよ・・・ですか?」 「すまん。気が回らなかった」 「いえ、すみません。篠原さんが悪いわけじゃないのは解っています。事情の説明をお願いします」 いつもの店員の女の子がお茶とお絞りを持ってきてくれた。 (ナベさんって・・・。あんな冷たい目つきをするのですね) (あぁ仕事の話をしていると、時々な) 奥で店長と店員が話しているが、それどころではない。 「・・・。あぁ、会社の副社長は知っているよな?」 「えぇどっちもよく知っていますよ」 「そうだな」 「それで、”ろくでもない̶…
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【紡がれた意思、閉ざされた思い】第三話 状況確認
「片桐。すこし付き合えよ。聞きたい事が山ほどある」 「・・・。あぁ・・・。わかった」 真辺は、片桐を伴っていつも部下たちと行く居酒屋に向かった。 この居酒屋は独立系の居酒屋でオーナーが趣味で始めた店だ。独立系なので、チェーン居酒屋よりは値段は少々高いが、味がいいし、酒のセンスもいい。それに、店の作りが気に入っている。小さな個室から大きな個室まであるので、よく使っている。真辺の知り合いがデザインをした事でオープン時に紹介されてからの付き合いだ。 店に電話をかけて、個室の状況を聞いた。幸いにも、小さい個室が空い…
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【紡がれた意思、閉ざされた思い】第二話 新たな戦場^H^H職場
「ナベ!」 呼ばれた真辺は無視する事にした。正直なことを言えば、嫌な予感しかしない。声の主はすぐに解る。篠原営業部長だ、さっきの報告にも顔を出していたし、真辺が休暇を取る事を知っているはずである。 真辺は知っている。ここで、返事をしてしまうと、明日からの休暇がなくなってしまう可能性が高い事を・・・。 「ナベ!!聞こえているのだろう!」 真辺は聞こえないフリをして、自分の部署に急ぐ。 篠原と真辺の付き合いは長い。この会社に真辺を誘ったのが篠原だ。もう20年近い付き合いになる。篠原は、真辺の5つ上の先輩になる。…
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【紡がれた意思、閉ざされた思い】邂逅5 新人教育
倉橋の死から、7年が経過した。 その間、真辺たちは日々火消しに追われる生活をしていた。 真辺の部署は、人の出入りはそれほど多くない。多くないが、入ってくる人間が少ない。 20名を少し超えるくらいで推移している。 「ナベ」 「あ?あぁなんですか?俺は、明日からの休暇の為に、一番見たくない人の顔を見るのですか?」 「お前、何言っているかわからないぞ?休んでいるのか?」 「休み?休みなんていついらいですか?俺を避けて通っているようですよ」 「あぁ新しい仕事じゃない。お前が希望を出していた人員の話だ」 「なんだ、そ…
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【紡がれた意思、閉ざされた思い】邂逅4 初仕事
『火消し専門部署』社内で語られる時の部署名だ。 正式名称は、『営業部付きインフラ開発部』だ。その後、『副社長付きソリューション開発部』と看板が付け替えられる。 『火消し部隊』や『真辺組』と呼ばれる事が多く正式名称を知っているものは殆ど居ない。 真辺と高橋と山本と小林と井上と倉橋の死を乗り越えた6名と篠原が引き抜いてきた8名の合計の20名での船出となる。 5月末に、真辺は篠原と一緒に専務に呼ばれた。 面倒な話である事は間違いない。 「石黒専務。篠原と真辺です」 「よく来た。入ってくれ」 本来個室など必要ないの…
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【紡がれた意思、閉ざされた思い】邂逅3 新たな部署
「ナベさん。私たちいつまでここにいればいいのですか?」 「さぁ?」 真辺は、篠原から状況を聞いているので、予測はついている。 今、ここに居る者たちが会社にでかけたりしたら、待ち構えているマスコミの絶好の的になってしまう。 マスコミが会社の前から居なくなるまでは、保養所で過ごす事になりそうだ。 「ナベさん。倉橋さんのお葬式は?」 「本人の希望で密葬になった。会社としての告別式は日を改めてやる事になるようだ」 「誰情報ですか?」 高橋も情報を貰っているようだ。 「俺は、篠原さんだな」 「私は、副社長から聞きまし…
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