【第三章 帝国脱出】第三話 カリン戦闘をする
私は、糸野夕花と日本では名乗っていた。
異世界に勇者の一人として召喚されて、いろいろあって、名前を変えた。今は、カリンという。私が名乗っている名前だ。
まーさん(年齢不詳、本名不明)と、大川大地さんと、王城から脱出して、準備を整えて、王都を脱出した。
今は、辺境伯の領都に向かう馬車の中だ。
日本に居た時に、馬車に乗ることを考えていなかった。少しだけテンションが上がっている。
王都から離れるまでは、なるべく休まずに進んでいたが、王都から離れてからは、馬車の速度を落として進むようになった。休憩も頻繁に挟むようになった。
「まーさん。イーリス。少しだけ森に行ってきていい?バステトさんと一緒に行くよ」
「わかった。無理はするなよ」
「うん」
まーさんは、すぐに許可を出してくれて、バステトさんが近づいてきた。
「バステトさん。お願いします」
”にゃ!”
本当に不思議だ。
バステトさんは、私の言っている言葉が解る。それだけではなく、私よりも間違いなく強い。
今日は、ここで野営すると聞いている。
まーさんに説明されて、ゆっくり進むメリットを聞いた。確かに、気持ちとしては”安全な場所”に早く逃げたいけど、逃げる場所が分かっている場合には、逆効果になってくる。
私だけなら、王城から逃げ出せたとして、その後は、難しかっただろう。イーリスに頼んで、隠れて過ごしているのが限界だったと思う。辺境伯と交渉して、領地に逃げ込ませて貰うところまでは、出来たかもしれない。でも、その後・・・。辺境伯領の近くにある。帝国の領地外に逃げ出す所まで交渉できたのだろうか?アイディアは出せるが、交渉して許可を貰えるとは思えない。
あっバステトさんが、何かを見つけた。
スライム?
「バステトさん。私が攻撃していい?」
”にゃ!”
大丈夫なようだ。
「近づかないで、魔法で攻撃するね」
”にゃぁ”
やはり、魔法での攻撃がいいようだ。
イーリスに言われて、聖魔法と闇魔法の両方を修練していた。聖魔法は、攻勢魔法は少ないようだけど、まーさんが”使い方”だと教えてくれた。
聖魔法の攻撃方法は、他の魔法と同じで、聖属性の魔法をぶつける方法だ。そのときに、”形を変えられる”というのがまーさんの考えだ。実際に、やったら出来た。イーリスは驚いていたが、イメージがしっかりすれば、問題はない。攻撃の強さは、込める魔力で変わってくる。
初めてというわけではないが、バステトさんと二人だけでと言うのは初めてで、自分一人で魔物を倒すのも初めてだ。
スライムを倒すのに、どの程度の魔力が必要になるのかわからないけど、傷が治るのと同じくらいの魔力を込めた。魔力球を槍のようにして投げてみる。刺さるが、スライムの核までは届かなかった。
もう少し強くやらないとダメなのかな?
先程の攻撃の倍位の魔力を込める。
うーん。スライムは、動かない。
私の攻撃が効いているのか、効いていないのか、よくわからない。
動かないのなら、槍を2つにして、連続で攻撃してみる。同じ場所に当たれば、核を攻撃できるはずだ。
まだダメ。でも、効いている。動かない。スライムだけで、こんなに時間が掛かっていたら、やっぱり、私は回復役なのかな?剣を持って、”戦ってみたい”なんて夢物語なのかな?
よし、今度は、3つだ。
バステトさんが、動いた。奥から、色が違うスライムが出てきた。
「大丈夫!バステトさん。奥のも同時に攻撃する!」
”にゃにゃぁ!”
バステトさんが、私の足元に移動して、座った。
今の攻撃でいいようだ。槍を一つ、増やして4つの槍を連続で投げる。先に、動いている奥のスライムを狙う。
え?なんで?
奥のスライムは、一つの槍が核に当たって核が弾けた。その場で、動きを止めた。
考えるのは後だ。
手前のスライムに3つを連続で投げる。最後の槍が、スライムの核に当たって弾けた。
「ふぅ・・・。え?あぁぁ。あっ!ん・・。っく。きゃぁ。あぁぁあぁん。ダメ」
立っていられなかった。
お尻を地面に降ろしてしまった。
おもらしをしなかった自分を褒めたい。少しだけ、本当に少しだけやばかった。
「カリン様!」
イーリスの声だ。心配して、近くに居てくれたのだろ。護衛の人も一緒だ。
「イーリス。大丈夫。なんか、急に身体を、何かが駆け巡って、驚いただけ・・・。もう、大丈夫」
立ち上がって、お尻に付いた土を払う。乙女としての矜持は守りきれた。地面を見ても濡れていない。
「大丈夫なら・・・。え?カリン様。戦っていたのは、そのスライムですか?」
「そうですよ?」
「まず、なんでスライムの形が残っているのですか?核が無いので、倒しているとは思うのですが・・・」
イーリスが何か、ブツブツ言っている。
護衛の人が近づいてきて、私が倒した二匹のスライムを持ってきてくれた。
「カリン様」
「はい?」
「奥に居たのが、通常のスライムです」
「はぁ」
「そして、手前に居たスライムは、スライムの上位種です。それも、色から考えると、進化を2ー3回はしていると思います」
「はぁ・・・。それは、どういうことですか?」
「とてつもなく強いスライムです。色から、物理耐性や魔法耐性を持っていた可能性があります」
「え?どうりで、魔法が効かなかった・・・」
「それで、お聞きしたいのは、どうやって倒したのですか?これだけ、スライムの形が残るのは、聞いたことがありません」
「えぇと・・・」
「エリオ。その話は、私が聞きます。カリン様のスキルに関係する話です」
「わかりました。もうしわけありません。カリン様」
護衛の人は、私に頭を下げてから、イーリスからも少しだけ離れた場所に移動した。
「それで、カリン様」
「別に聞かれても困らないのですが、聖魔法を槍状にしてスライムの核を狙って投げただけですよ?」
「・・・」
「カリン様。聖魔法の他には、例えば、火魔法で同じことが出来ますか?」
「属性は、闇だけですが、火ですか?やってみないとわからないです」
「そうですか・・・」
”にゃ!”
足元で座っていた、バステトさんが私の足を叩いた。バステトさんが見ている方向を見ると、後から出てきたスライムと同じ色のスライムが茂みから出てきた。こちらには向っていないが、核が見えるから、狙える。
「イーリス。あのスライムで試してみますね」
「お願いします」
火か、生活魔法の着火が”火”だな。
着火だけで、槍を作るのは無理そうだ。
聖魔法で槍を作って、周りを燃やしてみる。
あっ出来た。
【魔術:火を取得しました】
何か、頭の中に響いた。
出来た槍を投げると、核が壊れると同時に、スライムが蒸発するように消えてしまった。
「カリン様?」
「あっ出来た。それに、魔術:火を取得したみたい」
「え?そんな・・・。簡単に?」
「うん」
「あっもしかして、カリン様。先程、”身体の中を、何か駆け巡った”と、おっしゃいましたよね?」
「うん。あれは何?」
「一度に沢山の格が上がったのかもしれないです」
「格?」
「はい。初代様は、”レベルアップ”とおっしゃっていました」
「あぁジャイアントキリングになって、大量のレベルアップになったのかな?」
「その”じゃいあんときりんぐ”は初めて聞く言葉ですが、格が上がる時に、力が身体を駆け巡ります。本来なら、少しずつなので気が付かないのですが、本来なら倒せないような魔物を倒した時に、一度に沢山の格が上がるのです」
「そうかぁ・・・。まさに、その状況を経験したのだね。でも、格があがると、何か変わるの?」
「いろいろ言われていますが、少しずつの格の上がりと違って、一度に上がると別のスキルを覚えやすくなるようです。まだ、研究途上で、正しいとは言えないのですが・・・」
「そう・・・。でも、それなら、魔術:火を覚えたのは、格が上がって、スキルを覚えやすい状況になった可能性があるのね」
「はい」
「まだ覚えられるかな?」
「それは、わかりません。1個だけの場合もあれば、複数のスキルを覚えたという報告もあります」
「イーリス。剣を借りてもいい?」
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