【第四章 連合軍】第十九話 【連合国】 攻略開始
ロアを連れてバチョウは、ダンジョンを攻略した。
出来たばかりではないが、成長が止まっているダンジョンだ。20階層と浅く、防御も薄い。
ロアとバチョウの二人だけで攻略が完了してしまった。連れてきた者たちは、ダンジョンの外で待機している間に攻略が終わってしまった。
バチョウはロアにボスとの戦闘を任せた。
ボスは、流石に強かったが、ロアが余裕を持って倒せた。カプレカ島にあるダンジョンでいうと10階層のフロアボス程度だ。ロア一人でも過剰戦力だったのかもしれない。
ロアは、ボスを討伐後に魔王の居る部屋に突入した。
部屋に入ってから3分後にロアが出てきた。
「ロア。どうだ?」
バチョウは、部屋から出てきたロアに駆け寄って結果を聞いた。
それによって、ダンジョンからの脱出を考えなければならないからだ。
「ダメです」
ロアは首を横に振りながらバチョウに答えた。
ロアとバチョウは、魔王カミドネや魔王ギルバードの様な魔王を求めていた。
「どっちだ?」
バチョウは、既に脱出の準備を始めている。
二人で潜っているので、時間も必要ない。
「プライドだけが高い愚か者でした」
ロアの辛辣なセリフを聞いて、バチョウが肩をすくめる。
予想していたことだが、使える人材が欲しいタイミングでハズレを引いてしまった。
「討伐したのか?」
「はい。ドロップは、カプレカ島に送ります」
ダンジョンの外で待機している者たちが居る。
その者たちに移送をお願いする手はずになっている。
「ハズレだったな。次に行くか?」
バチョウは、渡された地図を見て、次のターゲットを探し始めている。
「バチョウ様。待ってください」
バチョウの動きをロアが止めた。
「どうした?」
「次の魔王が産まれる可能性がありますので、近くに部隊を配置したいのですが、ご許可を頂けますか?」
「そうだな。魔王カミドネに連絡をして、アンデッド部隊を派遣してもらえ、監視だけが目的か?」
「主な目的は監視です。次の魔王を奪われる可能性を減らしたいと考えています」
「そうなると、アンデッドだけでは難しいか?」
「はい」
「魔王様に具申する」
「え?」
「カエデとナツメも同じ問題が発生するだろう。魔王様に共同で具申してみる」
「わかりました」
バチョウは、ロアから離れて、魔王の側に居るはずの人物に連絡を入れる。
既に、同じ内容の具申が、ルブランの所に届けられていた。
バチョウたちが把握できている。連合国にあるダンジョンは、73箇所。
国が囲っている所も多いが、殆どのダンジョンは所属がはっきりとしない場所にある。そのために、施設もギルドの出張所があるだけの場所が多い。近くに、補給が可能な村や町があればいい方だ。
城塞村にあるギルドにも依頼を出して、ダンジョン攻略後の運搬を行っている。
ダンジョンの攻略は、魔王ルブランが行っていると大々的に宣伝する。
ダンジョンの奥底で震えている魔王たちにも聞こえるように・・・。
—
エルプレに入った4人は、約束をしていた場所で合流していた。
カエデは、先にエルプレに入って情報収集をしていたナツメに状況の説明を求めた。
「ナツメ。首尾は?」
魔王がダンジョンの奥底に居るのは確定している。魔王は、戦闘力も防御力も皆無だとされている。その為に、自ら外に出る事は殆どない。
「芳しくない。入口の確認が出来ない。王宮にあるとは思うのだが、王宮の中は厳重だ」
「厄介だな」
ナツメの説明を聞いて、カエデは面倒そうな表情を浮かべる。
連合国のエルプレを更地にするのは簡単だと考えているのだが、魔王からの許可が降りるとは思えなかった。許されているのは、攻め込んできた者や魔王は殺してもかまわないが、民間人は殺すなと厳命されている。
攻め込んできた者も、職業軍人以外はできるだけ殺すなとも言われている。
その魔王が、無差別な殺戮を許すわけがない。
「そこで、バチョウに倣おうかと思うのだが?」
「え?」
ナツメの思いもよらない発言に、3人はお互いの顔を見て固まった。ナツメから、”バチョウを倣う?”聞き間違いかと思ってしまった。
「バチョウの報告では、王国のダンジョンは弱いそうだ」
バチョウは、既に13の魔王を討伐している。
ルブラン経由で、カエデとナツメも報告を受けている。
カエデとナツメとバチョウの連名で魔王に具申した事が影響している。
自分たちと同じ者たちを作り出して、連合国のダンジョンがあった場所に村を築かせる事だ。小さな村だが、どこの国にも属さない村を構築させて、ダンジョンを独占する。
連合国が攻め込んできたら、近くの村に逃げて、協力して奪い返す。
連合国から見たら、ゲリラが自分たちの領地に村を作った形になる。そして、ゲリラたちは戦闘能力で言えば、一騎当千の強者だ。それぞれ村に30名配置されている。
「そうだな」
バチョウの動きは把握している。
ダンジョンが何か囲われていたら、屋敷を強襲して、暴れている間に、ダンジョンの入口を見つけて、ダンジョンに攻め込む。
バチョウの報告から、誰かに囲われて安全を確保している魔王は研鑽を積んでいないのか、ダンジョンも単純で罠も少なく魔物も弱いと報告が上がってきている。
「カエデとキアとシアが核になって数名を連れて行けば攻略は可能だろう」
「ん?」
「ルブランの予想では、連合国のエルプレを支えている魔王は、エルプレに望まれるままに、武具やスクロールを渡している可能性がある」
バチョウの報告を、ルブランが補足して情報として皆に渡している。
武具やスクロールを渡して、魔王の安全を確約させている状態になっていると予測された。
「・・・」
「ポイントはある程度は溜まっている可能性もあるが、魔物の配置や罠は少ないだろうと予測される」
「え?」
「王宮の中に入口があるダンジョンで、魔物や罠を大量に配置させると思うか?」
「あっ」
「そうだ。だから、私とキオやキカたちで、王宮に攻め込む」
「そうか、ナツメが暴れている間に、私たちが魔王を討伐すればいいのだな」
「討伐まで行かなくても、ダンジョンの入口を発見してくれるだけで十分だ。あとは、王宮に居る連中を始末したら、私たちもダンジョンに潜ればいい」
「それなら、皆で王宮を攻めて、それから魔王の討伐を行ったほうがいいのでは?」
「そうすると、魔王が攻略を行っている者たちに集中する可能性が高い。王宮を攻められていたら、エルプレの王から魔王に救援が出るだろう?」
「魔王がエルプレの王族を見捨てたら、エルプレが生き残ったら討伐される可能性がある。と、いうことか?」
「そう、考えてくれたら、魔王はエルプレの要請に従うだろう?同時に攻めた方が、メリットがあると考えた」
大枠の作戦が決定した。
人員が不足していたので、バチョウに連絡をして、ゲリラ部隊としてカプレカ島から送り込まれた者たちを回してもらう事に決まった。
人員の到着まで、4人はエルプレで情報収集を行うことになった。
主に、王族の評判だ。
魔王からは、打倒してしまっても良いと言われている。
評判が悪ければ、魔王ルブランが打倒したと宣伝してもよいと考えているのだが、評判がいい王族なら、内政に反対する反乱分子がクーデターを起こしたと、見せかけるつもりでいた。
都合がいいことに、バチョウたちがダンジョンを攻略しながら、連合国に参加していたエルプレの兵士たちが身に着けていた武具を持っていた。
—
「カエデ様。ナツメ様」
キアが、王族の評判を報告していた。
上はクズの集まりのようだ。
「そう?第三王子は人望があるのね?」
「はい。連合国という枠組みも、第三王子は嫌っていて、脱退を叫んでいます。もちろん、他の王族や貴族からは異端者のように扱われています」
「魔王様に・・・。魔王ルブランに、謁見するくらいまでは大丈夫そうね」
「はい」
方針が固まった。
明日の夜明けの時間に、王宮に3方向から攻め込むことになる。
皆が、カプレカ島のシンボルを身に着けて、配置についている。
合図は、王宮に向けてカエデがスキルを放つことに決まった。
混乱している所で、王宮に攻め込むのだ。
積読本や購入予定の書籍の情報を投稿しています
小説/開発/F1&雑談アカウントは、フォロバを返す可能性が高いアカウントです