【第四章 連合軍】第十四話 【王国】魔王

 

俺は助かったのか?

着替えをしてくるように言われて、コア・ルームから追い出された。
部屋に辿り着いて、ベッドに倒れ込む。

「コア」

コアが俺に付き添ってくれている。
他の眷属は、玉座とコア・ルームに別れて待機をしている。

「はい」

コアが安心した表情をしている。
心配させてしまったか?

「助かったのか?」

「そのようです。しかし、魔王様。よく・・・」

「あぁ・・。そうか・・・。ハハハ。はぁ・・・」

「??」

「コア。魔王ルブランの主殿と謁見してから、俺の長い話を聞いてくれるか?」

「もちろんです」

魔王ルブランの主がどんな人物なのか解らないが、”この場所”に戻って来られたら、コアに日本での事を話そう。
俺が、愚かな人間だったのか・・・。そして、どんなに卑怯で卑屈で・・・。全部・・・。話そう。

”ハウス2379から通達”

転生してきた時に聞いた声だ。
ん?

コアが動いていない。
世界が止まっている?

”ハウス2379は、ハウス6174の支配を受け入れました”

ハウス6174が、魔王ルブランの主が治めている”ハウス”なのか?
どうせ、聞いても、答えがないのは解っている。

”ハウス2379の権能をハウス8174に譲渡します”

譲渡?
ポイントを貰ったのは俺たちだぞ?

何を渡すのだ?

”ハウス8174から権能が返還されました”

え?
返還?

”ハウス2379からハウス8174にリンクを申請”

リンク?
何が行われている?

コアは?眷属は?俺は?

”リンクが成立”

今度は、成立?
リンク?

うぅぅぅぅぅぅぅあああああ!!!!!

”ハウス2379からハウス8174に共有を申請”

はぁはぁはぁはぁ
一気に知識が流れ込んできた。

そうか、リンクは・・・。

俺が、ハウス8174の眷属になるのだな。

俺は、ハウス8174の主が討伐されない限り、死なない。

”一部の共有が成立”

え?

”ハウス2379は、ハウス8174の支配を受け入れます”

支配?
何か、大きく変わるわけではないようだ。

よくわからない。
ハウス8174の魔王なら知っているのか?

「魔王様?」

コアが動き出した。
やはり、時間が止まっていたのか?

よくわからないけど、良かった。

「なんでもない。着替えて・・・。俺が持っている服で大丈夫か?」

「湯あみをされますか?お手伝いを致します」

「待たせるのも悪いから、軽く汗だけ拭いてくれ、洗ったばかりの服があるよね?」

「はい。ございます」

「持ってきてくれ」

「かしこまりました」

服を脱いで待っていると、コアがお湯と新しい服と下着を持ってきてくれた。
身体を拭いてから、コアに服を着させてもらう。

「魔王様。武装は?」

「必要ない」

「コアも、武装は解除して、恥ずかしくない格好に着替えてくれ」

「かしこまりました」

コアが目の前で着替える。
俺の部屋にコアの着替えや装飾品が置いてあるのでしょうがない。本当に、しょうがない。抱きしめたい。

「魔王様?」

「急ごう」

「はい」

コア・ルームに戻ると、先ほどのミアと名乗った少女とヒアと呼ばれた少年が居ない。

「準備は出来ましたか?」

よく見ると、モミジと呼ばれる女性だけが残って、俺たちを待っていた。

「カンウ殿とミア殿とヒア殿は?」

「気にしなくても良いと言いたい所ですが、貴殿の眷属を率いて、上のゴミを片づけに出ています。すぐに終わるでしょう」

「え?俺の眷属?」

そんなに、王国の兵は弱くない。
確かに、カンウ(って、関羽雲長だよな?三国志の?)殿なら勝てるだろう。俺の眷属を率いる意味は?

「疑問はもっともです。貴殿の眷属からの申し出です。私たちが簡単にここまで来てしまって、貴殿を危険に晒したことを憂いていました。私たちに強くなる方法を聞いてきました。二度と、貴殿を危険に晒さないために・・・」

「そうでしたか・・・」

「いい眷属ですね」

「はい。自慢の奴らです」

モミジ殿の視線が優しい。
そうか、眷属を大事にしていたことや、日本語が読めたこと・・・。いろいろ含めて、俺は助かったのだな。

「そうですか。準備は大丈夫ですか?一緒に行くのは、貴女だけですか?」

「はい。コアと言います。魔王様のしもべです」

「わかりました。ここからは、無理ですので、玉座に戻ります」

「はい?」

玉座?
そこに何があるのか?

モミジ殿と一緒に玉座に戻ると戦闘に適さない者が誰かと話をしている。

「あら、ラアが来たのですか?」

「モミジ様。斥候に適したマアが連合国側に呼ばれてしまったので、次点で私が来ました」

「そう?それで?」

「凄いですよ。私たちの所でも考えた方がいいかもしれないです」

「それほどですか?」

「えぇ。専門のスキルを持つマアには及びませんが、偵察や斥候には十分です。他にも、種族的な繋がりを利用した連絡網は侮れません」

「そうですか・・・。解りました。マアは、引き続き、この者たちを訓練してください。ミアと協力して報告書を作成して、魔王様に伝えましょう」

「わかりました!」

ラアと呼ばれた男子が、眷属たちと何かを話している。
褒められていると思っていいのだろうか?

「魔王。行きますよ?」

「え?はい?」

魔法陣が玉座の前に出現する。
モミジ殿が、魔法陣の中央に立って、俺とコアを呼んでいる。

魔法陣に、俺とコアが入ると光りだした。
何からトリガーになっているのか?

「魔王様。これは、転移の罠です」

「え?あっ」

転移の罠?
そんな物が・・・。思っていたら、別の場所に来ていた。

俺が作った玉座の間を数倍広くして、数十倍は豪華にした場所だ。

前方には、豪華な椅子に座る。日本人には見えない少年が座っている。
横には、一人の絶世の美女が立っている。

モミジ殿が目で合図をして、ゆっくりと歩き始める。
玉座に続く階段の手前3-4メートルの所で止まって横にずれる。

コアは解っているのか、その場で跪いた。
俺も、コアに倣おうかと思った瞬間に・・・。

「いいよ。君は、魔王だよね?」

「え?あっ。そうです」

跪かなくていいの?
本当に?

モミジ殿を見ても、大丈夫そうだ。絶世の美女を見ると、微笑んでいるから大丈夫なのかな?

「あれが読めたの?どの辺りまで、話を知っている?」

主語が入っていなくても解る。

俺が知っているのは・・・。
会長が死んで、選挙が開始された。
そのあとで、”十二支ん”が揉めて・・・。よく覚えている物だ。
キルアがゴンのために独自に動き始めたのもなんとなく覚えている。

アント編は泣いた。
コムギと蟻の王との最後は・・・。あれはダメだ。ズルい。

少しだけ考えてから顔を上げて質問に答える。

「俺、あっ私が居た時には、会長選挙の途中で・・・」

「へぇ。レオリオが、ジンをぶっ飛ばす辺り?」

「え?そんなことが?ゴンが、アント編で、ゴンさんになって寝込んでいるのに?」

なんでそんなことに?
それよりも、周りの視線が痛い。優しい視線に混じって嫉妬の視線が・・・。怖い。

「そうそう。ゴンは復帰するよ?ネタバレで良ければ・・・。あぁ本を渡せばいいかぁ。君なら読めるよね?」

「え!読めます!是非!」

「他に気になる物は?」

「沢山・・・。有りすぎて・・・」

「ははは。君は、コミック派?単行本派?」

「あっ単行本を待っていました」

「そうか、両さんも終わったよ」

「え?本当ですか?」

「本当。本当。俺がこっちに来る頃には、キン肉マンがまた始まったよ」

「えぇぇぇ」

「この辺りの話は、今後として、君は、ダンジョンをモミジたちに攻略された。そこで、俺に下った。そうだな?」

「はい。俺は・・・。俺の眷属だけは・・・」

情けないが、貫禄が違う。
心が負けを認めてしまっている。

「あぁ大丈夫。君たちを、殺しても俺にメリットはない。君に、頼みがある」

「頼みですか?」

魔王様の隣の美女が、魔王様に何かを渡している。メモ用紙のような感じだ。何が書かれているのだろう?

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