【第四章 スライムとギルド】第十話 スキルと属性

 

もう疲れました。本当に、疲れました。これで、本題に入っていないのですから、拷問です。

でも、主殿の呟きを聞いてしまったら、”帰りたい”とは言えない。もっと言えば、私も主殿ともっと話をしていた。内容が心臓と胃に悪いのは諦めます。あとで、ギルドのメンバーを道連れにします。確定した未来です。しっかりと報告するまでが、私の仕事です。

「茜さん?大丈夫ですか?」

「なんでもないです」

「それなら良かったです。魔石の変形は慣れないと疲れますよね。あっ!でも、茜さんは、クロトちゃんとラキシちゃんが居るから大丈夫なのでしょうね」

「え?クロトとラキシ?」

「はい。眷属は、主と魔力を共有するので、クロトちゃんとラキシちゃんは魔力が多いので、疲れないと思います」

「魔力?多い?」

「はい」

そうか・・・。魔力の共有?
わからない。わからないけど、大丈夫。

「スキルの恩恵もあると思うのですが?」

「え?」

「茜さんは、スキルが増えたと思うのですが・・・」

主殿が教えてくれました。
確かに、スキルが増えたのですが、”眷属”との繋がりを維持する為のスキルだけだと思う。千明にも確認をしないとダメだけど・・・。

「増えては・・・。あっ!」

そうだ。
クロトとラキシが、糸を使っていた。私も、”できるようになる”と言っていた。

「ん?」

「いえ、クロトとラキシが、糸を出して立体駆動をやっていたので・・・。あのスキルが私にも使えるようになると・・・」

「あぁ・・・。そうですね。あれは、”糸”ではないのです」

「え?」

”にゃ”

クロトが肯定している。主殿の言っているのが正しい?
”糸”でないのなら?

「あれは、スキルではなく、魔力を糸状にして使っているので・・・。スキルでは無いのです。スキルを持っている人なら誰でもできると思いますよ?」

またダメな情報です。
糸が魔力だとしても、魔力を見えるようにして、クロトとラキシの体重を支えるくらいに強固にする?糸の方が、某アメコミを思い出して納得ができる。

「できるのですか?」

「はい」

いい笑顔で言い切られてしまった。

「ギルドで、クロトとラキシに教えてもらいながら検証をしてみます」

「はい!楽しいですよ!それに、楽が出来ます!」

主殿の”楽しい”が解らないのですが、スキルを使わない方法で魔力を使うのですか?

主殿が見本というか、”ずぼら”な人間向けの使い方を教えてくれました。
確かに、これは便利です。覚えたくなってしまいます。クロトとラキシが、私にもできると言っているので、大丈夫なのでしょう。立体駆動にもちょっと興味がありますが、主殿のように、その場から動かないで遠くの物を手元に引き寄せる技術は”私の”夢です。片づけも立たなくても出来るのですよ?
炬燵に入ったまま・・・。

「そうだ。茜さん」

あっ。これは、またダメな情報だ。

「なんでしょうか?」

「もうすぐ、売りたい物をまとめたパロットが戻ってきますが、その前に教えて欲しいのですが・・・」

やっぱり、ダメな奴でした。

スキルを融合する?
主殿が試してくれました。

確かに、有効です。
でも、ギルドで認識している人でもスキルは”ダブル”はごく少数で、”トリプル”は公式には10人も居ません。

「そうなのですか?強化系が多いのですか?」

「え?強化系?」

「あっ勝手に呼んでいるだけなので、違う呼び名があれば教えてください。肉体を強化したり、早く移動したり、視力を強化したりするのを強化系と呼んでいます。攻撃を加えるスキルは放出系と呼んでいます」

ちょっと待って欲しい。
認識しているスキルの数では、世界でトップクラス。もしかしたら、ワイズマンを越えている可能性もある。

「主殿。ちなみに、話せないのなら、いいのですが・・・。強化系とか放出系とか、どんなスキルがあるのですか?」

「ちょっと、私では把握が出来ていないので・・・。あとで、ライが来た時にでも・・・。あっ!そうだ!茜さんは、属性は何が得意なのですか?」

こう爆弾を放り込まれると清々しい気持ちになってくるから不思議です。
属性?水とか土とか?
取得したスキルで違うのではないの?

もしかして、ギルドだけではなく、いろいろな人たちが勘違いをしているの?

「主殿。ギルドでは、”属性”は、土属性とか水属性とか攻撃が・・・。主殿の言葉では、多分違いますよね?私の属性と言われても・・・」

「そうなのですね。また、私の勘違いですね。ごめんなさい」

「違います。違います。ギルドの認識と主殿の認識が違うだけで、どちらが間違っているとか・・・。なので、主殿が呼んでいる。”属性”を教えてください」

泣きそうな主殿の表情から、必死に言い訳を伝えてしまった。
事実、ギルドよりも、主殿の考えのほうが、正しいように感じています。”すんなり”信じられるのが正しい感情なのです。偉そう書かれた論文よりも、主殿の話は、実際に目の前で行われていて、検証された結果です。
正直、一つの情報だけでも発表が怖いです。

でも、中途半端に知って、後で後悔はしたくない。

「ありがとうございます。話さないと解らないですね。私たちが、属性と呼んでいるのは・・・」

既に、後悔の気持ちが勝ちそうです。
これで、物品の相談をしなければならないの?

少しだけ落ち着こう。

お茶が美味しい。
お茶を入れたのが蜘蛛とハクビシンでなければ、驚かなかったのですが・・・。そして、パルたちが集めた蜂蜜で作ったと言われたクッキーもすごく美味しい。もしかして、この蜂蜜も”世”に出してはダメな物?大丈夫。大丈夫。見た目は蜂蜜。味は(よくわからないが)最高級と同じだ。だから、大丈夫。

私が考え出すと、主殿は立ち上がって、奥に移動しました。
考える時間をくれたのでしょうか?

属性が合わなければスキルが覚えられない?
もしかして、魔物を倒しても必ずスキルが獲られないのは、それが原因?

基本属性は、「強化・助勢・放出・変異・特異」の5つに分類していた。
強化は、自らを強化する系統
助勢は、仲間を強化する系統(弱体もできるらしい。強化を剥がすこともできるらしい)
放出は、補助属性を付与して放出する系統
変異は、物質を変える系統
特異は、固有で取得するスキル

テイムに関するスキルは、特異に分類していた。
強化/助勢/放出/変異は、それぞれに補助属性があり、私たちが属性と呼んでいる「水・風・土・火」だと言われました。他にも、聖や闇があるらしいです。お腹が痛くなりそうです。

主殿がいうには、私と千明は、テイムが成立しているので、特異系ではないかと言われた。
蒼さんは、間違いなく強化系だろう。
円香さんは、微妙だけど変異系か特異系かと思う。主殿の説明では、強化系の可能性もある。
孔明さんは、助勢系だと思う。

合わないと、スキルを獲られないのは、検証が必要だがギルドとしたら有益な情報だ。
そして、主殿の話では、魔物を倒した事で、スキルを獲られなくても、スキルが得られる土台が出来ている。その土台の上に、適合している属性と補助属性を得られる訓練を行えば、スキルが芽生えると言われた。
ギルドにも、これに近い状況は報告されている。
”魔物を倒したがスキルが芽生えなかった”というを言っている人たちが居た。その人たちの中で、一定数の人にスキルが芽生えているのが確認された。ギルドでは、”確認を間違えていたのでは?”と考えられていたが、違ったようだ。検証が必要な情報だけど、その検証を主殿が行うのではなく、ギルドで行えばいい。その為のギルドだ。
補助属性には上位属性があると言われた。

もう、師匠でいいですよね?

「茜さん」

お盆に新しい飲み物とお菓子を持ってきてくれた。

あと、メモ用紙?ノート?

「はい」

「これ、私がスキルや属性を調べる時に使ったノートです。あまり綺麗ではないので恥ずかしいのですが、持っていきますか?」

「いいのですか?」

「はい。私が疑問に思った事や、調べて解らなかった事をまとめただけなので、ギルドならもっといろいろ知っていると思うので、必要ないかも・・・」

そんなことは、絶対にない!
大きな声で、主殿に賛辞の言葉を贈りたい。

「あっパロットたちの準備が終わったようです。え?うん。わかった」

「??」

「あの・・・。茜さん。ライとパロットが、実際に茜さんに見せた方がいいだろうというので、ご足労をおかけしますが、蔵まで一緒に・・・」

「もちろん、いいですよ。私も興味があります!」

あぁ興味はあるけど・・・。
円香さんの困った顔が見られそうです。すごく、すごく、すごく、楽しみです。

はぁ・・・・。
ギルドに帰りたくないな。絶対に、質問攻めに合う。

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