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2020/03/31

【残された3分】冷めてしまった紅茶

 私と彼の距離を表現するのに、一番適切な言葉は、紅茶が冷めない距離。

 彼は隣の部屋に住んでいる。
 それは偶然だった。

 中学卒業までは、一緒の学校に通っていた。
 高校になったら、彼のご家族は引っ越してしまった。何か理由が有ったのだろう。

 中学卒業の時に彼に告白しようと思っていた。でも、告白ができなかった。
 学校で一番可愛いと言われている子に告白されていた。受け入れると思っていた。

「紀子!」
「え?」
「一緒に帰ろう。オヤジとオフクロとお前のご両親は先に帰ると言っていたぞ」
「なんで?」
「ん?なにが?」
「だって、さっき」
「見ていたのか?」
「うん」

 ダメ。泣いちゃダメ。

「紀子。俺は明日引っ越しをする」
「うん。聞いている」
「だからな」
「うん」
「あぁもう。俺は、お前が好きだ」
「え?なに?」
「聞こえただろう。もう一度なんて言わない」
「わたしのことがすき?」
「なんも言わない!」
「明、わたしも、好き」
「よかった」

 明は、彼は、高校は別々になったけど、会いに来ると約束してくれた。
 私も会いに行くと約束をした。明の新しい住所も私にだけ教えると言ってくれた。

 交際が始まった。

 そして、お互い都会の大学に合格した。
 別々の大学だ。明は、大学の寮に入ると言っていた。私は、一人暮らしをする事にした。

 引っ越しをした。
 隣も同じ地方の高校から、都会の大学に入った人が来ると教えられた。
 気にしてもしょうがないので、自分の荷解きをしていた。

 インターホンがなった。
(だれ?)

 確認したが姿が見えない。

「隣に引っ越してきた者です」

 聞き覚えがある声だがわからない。
 姿をわざと見せなくしているのだろうか?

「紀子。久しぶり。いや、5日ぶりか?」
「え?」

 そこには、満面の笑みで明が立っていた。
 夢じゃないよね?

「え?どうして?」
「隣に引っ越してきたからだぞ?」
「え?だって、寮に」
「最初は、寮に申請出していたけど、許可が出なかった。おじさんに相談したら、紀子が借りた部屋の隣が空いているからと言われて、オフクロもそれならと言ったからな」
「え?え?誰も教えてくれなかったよ?」
「俺が黙っていてくれとお願いした。実際、寮が空くかも知れないからな」
「!」
「紀子?」

 泣き出しそうだ。

「紀子。なくなよ。悪かった。そうだ。紅茶でも飲まないか?ほら、デートした時に飲んだやつあるだろう?お前が美味しいって言っていたやつだよ。あれがうまく入れられるようになったからな」
「へ?」
「ほら来いよ。俺の片付けは終わっているから、一緒に飲もう!」
「うん?」

 明に手をひかれるまま隣の部屋にはいる。
 明が隣に引っ越してきた?

「明?」
「なに?」
「紅茶の入れ方教えてくれる?」
「ん?いいけど?」
「ほら、この前、明が美味しいと言った・・・ほら、あの紅茶?」
「オータムナルか?」
「そうそう、そのオーなんとかが美味しかった!」
「わかった。でも、お前、紅茶よりも緑茶だろう?」
「そうだよ?でも、明と飲むなら紅茶の方がいい!」
「そうだな!紀子。今度の休みに、買いに行こう。合格祝いをしていなかったよな?」
「え?それなら、明にだって、私何もしてないよ?」
「ううん。紀子からは、俺が欲しかった物がもらえたから必要ない」
「え?なにか?」

 明がニヤニヤしている。
 この顔の時は、私の嫌がる事を言わせようとしている時か、恥ずかしがるような事をするときの顔だ。

 あ!

 引っ越しをする前、両家の家族公認で、私と明は、2泊旅行にでかけた。
 初めての二人だけの旅行だ。明は受験が終わってからバイトを始めた。貯めたお金で、伊豆旅行を計画してくれていた。卒業祝いだと両親を説得した。私の両親もどうやって説得したのかわからないが、了承してくれた。

 そしてでかけた伊豆旅行で初めて私は明に抱かれた。
 それまでキスしたりや触り合ったりはしていたが、そこまでだった。明なりの誠意だと言っていた。でも、伊豆旅行で初めて、明を迎い入れた。すごく痛かったが、すごく嬉しかった。明と一つになれたのが嬉しかった。

 旅行では、土産物屋さんで見つけた3分が測れる砂時計を買った。
 明が好きな紅茶を入れるのに必要などだと言っていた。

 ”最後の3分”
 明が私に教えてくれた紅茶を入れる時に一番大事な時間だ。

 準備の時間は必要だ。
 茶葉が開いて紅茶が出てくる3分間が、明が言っている”最後の3分”。この間に話をしながら、紅茶と対面に座る人の事を考える時間なのだと言っている。

 それから、私と明は、何度も何度も、”最後の3分”を楽しむ。

 明が部屋に帰ってくる。
 私が部屋に居るのを確認するかのように、そっけないメッセージが届く。

”今から行く”

 これだけで十分だ。
 私は、メッセージに”紅茶?”とだけ返す。

 部屋に居ないときには、部屋に居ないと返事を返す事になっている。

 明らからは一言だけの返事が返される。
 ここで明の気分が解る。絵文字の時もあれば、長文の時もある。一言の時が多い。でも、それで十分だ。

 明は鍵を持っているのに、わざわざインターホンを鳴らす。

 私は、明が来る前に紅茶の準備を始める。
 教えられたように、教えられた通りに、明が喜んでくれる事を期待して。


「これも片付けていいですか?」
「お願いします」

 疲れ切った老夫婦が、業者の問いかけに答えを返す。

 10月に差し掛かろうとしている時期。今年も気温が落ち着かずに夏のように暑い。
 都会の片隅の大学生が多く住むマンションの一室で片付けが行われている。

 この部屋に住んでいた。男子大学生が危険ドラッグをキメて運転していた車に跳ねられて死亡した。

 マンションまで3分くらいの場所だ。

 大学生は、彼女の為に予約していた、ケーキを取りに外に出て、事故にあってしまったのだ。

 些細な事で喧嘩していた大学生は、仲直りのためにケーキを予約していたのだ。大学生は、彼女にケーキを予約してある事を告げて、紅茶を用意しておいて欲しいと彼女にお願いした。彼らなりの仲直りの方法なのだ。

 彼女は、了承するまで3分間ぐずった。自分が無茶な事を言っているのは解っていた。でも、彼には解ってほしかった。彼とインターホン越しに話をした。彼が条件を出したが納得してくれた。彼女は、彼に謝罪して、彼も納得してくれた。

 彼女は、紅茶を入れる準備を始める。
 彼は、ケーキを受け取りに外にでかけた。

 たった3分。
 されど3分。

 かれを引き止めた3分で、彼女は彼を失ってしまった。
 引き止めないで、部屋に入れてから話せばよかったと彼女は悔やんだ。

 彼女は、彼から送られたメッセージとインターホンに残された、彼との最後の3分間に交わされた会話が彼女に残された物だった。


 彼が隣に居るのが当たり前だと思っていた。

”今から行く”

 彼は私にそっけないメッセージをくれる。

 これから、彼が好きなオータムナルの準備を始める。

 ポットに入る分量と二人分のお湯を沸かす。
 それから、二人分の茶葉を取り出して、軽く振るいにかける。小さな茶葉やゴミを取り除くためだ。

 一度目のお湯は、ポットとカップを温めるのに使用する。
 少しだけもったいないが、彼がこの方法が好きなのだ。

 二度目のお湯を沸かす。
 今度は、たっぷりと沸かす。

 お湯がフツフツと言ってきたら一旦火を止める。お湯を休ませるのがいいそうだ。
 その間に、オータムナルによく合うミルクを作る。

 ダージリンとしては茶葉も厚くてしっかりしているし、渋めになる。
 彼は、これに、甘めに作ったミルクを入れて飲むのが好きなのだ。

 ミルク人肌くらいまで温めた所で、インターホンがなる。
 スペアキーも渡しているし、部屋の番号も解っている。下のセキュリティロックの方法も解っているのに、彼は必ずインターホンを鳴らす。私は、インターホンを確認してロックを外す。

 休めていたお湯に火を入れる。

 彼の到着と同時くらいに、お湯が湧くのだ。
 彼を出迎えに玄関に行く。その時に、お湯を火から下ろす。

 持ってきてくれたケーキを受け取る。

 最初の3分間は準備の時間だ。

 ポットとカップをお湯から取り出す。
 ケーキをお皿に並べる。

 湧いたばかりのお湯をもう一度カップに注ぐ。
 二人分の茶葉とポットを持っていく。

 慣れた手付きで紅茶の準備を始める。
 茶葉を見て、お湯の量を調整する。少しだけお湯が熱いと感じると、ここでお湯を冷ますのだ。

 この間に、話しかけてはだめ。私だけが楽しめる。ゆっくりと眺めている事が許される時間なのだ。

 茶葉を入れたポットにお湯を注ぐ。
 そして、用意している砂時計をひっくり返す。

 最高の3分が開始される。

 私は、話をする。
 紅茶ができるまでの3分間。開き始める茶葉からの匂いを感じながら、話をする。

 3分間が終わってしまった。

 紅茶が冷めたら居なくなってしまう。湯気が上がらなくなったら、彼を感じられなくなる。
 
 残された3分。
 私が彼を感じていられる最後の時間。

 これは、私への罰。
 私が、あんな事を言わなければ、彼との距離はもっと近くなっていた。

 私は、永遠に彼と交わした”最後の3分”のために紅茶を入れる。
 彼が美味しいと言ってくれた、彼が私に教えてくれた、彼が私に残してくれた物のために、私は”最後の3分”を楽しむ。

 茶葉が開く3分間。
 私が、彼と言葉を交わした、最後の3分。

 彼が残してくれた。私の唯一の希望。


「なぁ母さん」
「なんですか?」
「のりちゃん」
「えぇ妊娠していて、産んで育てると言っているそうですよ」
「そうか、明の子供か」
「そうね。こんなに、哀しい初孫なんて」
「小野さんは?」
「賛成しているわ。謝罪しに行ったら怒られたわ。結婚を認めているから、子供を産ませますと言ってくれているわよ」
「そうか。嬉しいな。明の子供か。のりちゃんは抱かせてくれるかな」
「大丈夫よ。でも、明に似て、紅茶が好きになったら、この荷物を渡しましょう」
「そうだな」

「荷物片付け終わりました!」
「ありがとう」「今、行きます」

 老夫婦は何もなくなった部屋を確認してから、そっとドアを閉めた。

fin

2020/03/31

【第七章 王都ヴァイゼ】幕間 ドーリスと子どもたち

 私はドーリス。生まれは・・・。わからない。気がついた時には王都のスラムで生活していた。5歳になるときに、孤児院に入った。そこで、お母さんが出来た。王都に行った時に会いたかったけど都合が合わなかった。
 王都までヤスさんを案内した。王都では各ギルドを回って、神殿に新たにできるギルドが承認された。すでに根回しが終わっていたがやはり緊張した。現状の神殿の都テンプルシュテットの様子が伝わっていたら間違いなく各ギルドは別々に作ると言い出すに違いないからだ。幸いなことに、ヤスさんのアーティファクトの速度が異常だったために神殿の都テンプルシュテットの情報が王都まで届いていなかった。各ギルドでは建物や生活面で困らないのかと質問されたが、”困ったら、今まで生活していたユーラットに一時的に避難します”と伝えて納得してもらった。

 王都や街や村で、ヤスさんのアーティファクトに物資を積み込んで、神殿の都テンプルシュテットに帰る途中で、子供だけの集団を見つけた。

 急にヤスさんがアーティファクトの方向を変えたので何か問題でも発生したのかと思ったが違った。
 疲れ切った子どもたちが休憩所に居たのだ。神殿の力が及ぶ範囲なので、安全が確保されているが、それでも心配になってしまう。

 アーティファクトの光に照らされた子供を見たときに、スラム街で生活していたときの自分と重なった。
 スラムで生活していた時の私よりもいい格好をしているし、食べ物も食べているようだ。スラム街の子供ではなくて、孤児院の子供なのだろうか?でも、そうなるとなぜ?孤児院なら・・・。最悪の考えが頭をよぎる。

 ヤスさんがアーティファクトの光を操作して弱くした。子どもたちは怯えた目でこちらを見ているのだろう。
 最初は、ヤスさんが子どもたちの所に行こうとしたが、私が行くほうが良いと告げて、ヤスさんには遠慮してもらった。ヤスさんも解ってくれた。

 子どもたちに近づくと、男の子と女の子が幼い子どもたちを背中に庇いながら私を見つめる。

 私は、ゆっくりと歩いて、両手を広げて子どもたちに近づく。

「私は、ドーリス。この先にある神殿の街にあるギルドの職員です」

「え?この先は、ユーラットではないのですか?」

 女の子が私の言葉に反応する。

「君たちは、ユーラットに向かっているの?ユーラットにも繋がっているから問題ないよ」

 後、数歩で子どもたちの所にたどり着けるが、足を止める。
 彼らから警戒を解いて近づいてきて欲しい。

「・・・」

「ねぇ名前を教えてもらえる?さっきも言ったけど、私はドーリス。それで、あの光っている目の大きな物は、神殿から出たアーティファクトで”神殿の主”ヤス様が操作している」

 一気に情報を与え過ぎかも知れないけど、少ないよりも全部話していると思われたほうがいい。
 子供でも、子供だけで移動しているのだ、男の子と女の子は子供扱いしないほうがいいだろう。

「私はイチカ」「俺はカイル。神殿の主様?」「カイル!」

「イチカちゃんに、カイル君だね。解った。私の事は、ドーリスと呼んでね。そうだね。アーティファクトを操作しているのは、神殿の主のヤス様ですよ」

「なぁドーリス姉ちゃん。神殿の主様なら神殿の事は何でも知っているよな!デイトリッヒさんは神殿に居るのか?俺・・・。父さんと母さんの敵を・・・」

「カイル君。落ち着いて。そうだ。喉は渇いていない?飲み物を持っているけど居る?」

 イチカもカイルも首を横にふる。イチカが休憩所の湧き水を指差す。そうか、ここには水が有るから喉の渇きを潤せたのだろう。ヤスさんに感謝だ。
 イチカとカイルに庇われている子どもたちを見ると手には果物がある。たしかに、休憩所なら採取した物を食べても問題ではない。そうか、子どもたちが緊張しているのは、石壁の向こう側が神殿の領域だと教えられて居て、そこから果物を採取したから、神殿の主が来て怒られると思っているのか?

「カイル君。イチカちゃん。果物を取って食べても問題にはならないよ」

「え?」「本当か!」

「ヤス様の許可は出ているから安心して、この休憩所を使っている人たちが、お腹がすいたり喉が渇いたりしないように、神殿の力でサポートしてくれているのですよ」

 子どもたちから伝わってきていた緊張が和らいだ。

「ねぇパンを食べる?多く買っちゃったから食べてくれると嬉しいのだけど?」

 孤児院で育ったのなら、施しを受けるのは良くないと教えられている可能性が高い。だから、”食べてくれる方が嬉しい”と提案すれば受け取ってくれるだろう。リーゼほど大きくないが私もアイテムボックスが使える。領都で買ったパンがまだ残っている。全員に2-3個は渡せるだろう。

 思ったとおり、イチカは自分たちがお金を持っていないと言い出した。

「ううん。違うよ。パンを持っているけど、多く買いすぎて、このままだと腐っちゃうから食べてくれると嬉しい。アイテムボックスの中身を減らしたいからね。ただで受け取れないのなら、果物の採取を手伝ってもらえる?ここの果物を取っておきたいのよ」

「わかった!ドーリス姉ちゃん。果物なら弟や妹でも採取できる!パンと交換しよう!」

 カイルが子供数人と石壁を登り始める。簡単な魔法が使える子も居るのか光源を使った。危ないと思ったら、セバスの眷属が何かしら教えてくれるだろう。
 私はイチカちゃんに目線を合わせる。

「それで、イチカちゃん。何があったの?話せる範囲で教えて欲しい?何か私にできることがある?」

 私の言葉を聞いて、ピーンと張っていた糸が切れたのだろう。イチカちゃんは泣きながら事情を話してくれた。カイル君が弟と妹を連れ出したのも良かったのかも知れない。残ったのは、本当に小さい子ばかりで休憩所が安心できると聞いて目をこすり始めている。

 ヤスさんが呼んでいる。

「イチカちゃん。ごめんね。ヤス様が呼んでいるから行ってくる。あっパンを渡しておくね。カイル君たちはすぐに戻ってくるでしょ?」

「・・・。うん・・・」

「大丈夫だよ。すぐに戻ってくるよ」

「うん」

 ヤスさんと今後の予定を決めた。ツバキが来てくれているのなら安心できる。
 私は残ってツバキを待つ。ヤスさんには先にユーラットに行ってもらう。実は、ヤスさんに先に行ってもらうのには理由ワケがある。子どもたちへの配慮も有るのだが、子どもたちを神殿で受け入れる場合に、彼らの住む場所や生活環境が問題になってしまう。少しの時間にはなってしまうが、方針だけでも決めてもらえると嬉しい。ヤスさんは受け入れる前提で話をしているので、子どもたちを追い返す状況にはならないだろう。

 イチカの所に戻ると、さっきまで泣いていたのが嘘のように話しかけてきた。

「ヤス様はどうしたのですか?」

 アーティファクトが移動し始めたので不安に思ったのだろう。

「ヤス様は、アーティファクトに沢山の物資を積んでいるので、先に戻ってもらいました。ヤス様の部下がこちらに向かっています。イチカちゃんたちを神殿で受け入れてくれるそうです」

「本当ですか!」

「神殿に入るためには審査は必要ですが、多分大丈夫だと思います」

「審査?」

 不安に思わせるつもりは無いけど、嘘は言えない。門で審査を受けなければならなのは変わらないだろう。

「そうね。神殿に迷惑をかけたり、危害を加えたり、そんなことをさせないための審査だね」

「それなら・・・。わかりました、カイルにはしっかりと言い聞かせます」

「それで、イチカちゃん。一つだけ聞いていい?」

「なんでしょうか?」

「カイル君もイチカちゃんも、お父さんとお母さんとルーサさんの仇を取りたいの?」

 聞いて置かなければならないことが、否定の言葉を口にするかも知れない。でも・・・。

「・・・。ドーリスお姉ちゃん。私も、カイルも最初は・・・。リップル領を出るまでは、許せない気持ちが・・・。お父さんとお母さんを殺した奴を殺したい。私の手で殺したい。そう思っていました。でも・・・」

「でも?」

「はい。ルーサさんや冒険者さんに会って、商人さんにもいろいろ話を聞いて、考えました」

「カイル君も?」

「はい。弟や妹が寝てから、カイルといっぱい、いっぱい、話をしました。殺したい。許せない。でも、お父さんもお母さんも、カイルと私に言いました。”弟や妹を守りなさい。生きなさい”と・・・。だから・・・」

「だから?」

「弟と妹が成人するまで、私とカイルで守ります」

「いいの?」

「はい。決めました」

「そう・・・。決めたのね」

「はい」

「ヤス様には、二人の気持ちを伝えておきますね」

「お願いします」

「住む場所は、どうする?全員で住む?それとも、孤児院に入る?」

「できれば、孤児院に入りたいです。まだ、いろいろ勉強したいですし、他にも小さい弟や妹が居るのなら守ってあげたいです」

 泣きそうな声でイチカが宣言する。多分、この子は解っている。弟と妹が居なくなったら、カイルが子爵家に復讐に行くことを・・・。それを止めるために必死なのだ。恋心なのか、まだ微妙な所だろうが、イチカはカイルをうしないたくないのだろう。孤児院に入れば妹や弟が増える。お父さんとお母さんの言葉を守って、見守り続けるつもりなのだろう。
 イチカを抱き寄せる。

「解った。ヤス様にしっかり言っておく。それから、子爵家は私に・・・。私たちに任せてくれない?デイトリッヒさんと話してみる。いいわよね?」

 イチカはびっくりした声を上げるが、頷いてくれた。

 少し時間がかかったが、カイルが沢山の果物と薬草を採取して戻ってきた。
 石壁に栗鼠が見えたのは、多分ヤスさん眷属だろう。皆が子どもたちを見守ってくれている。

 子どもたちがパンを食べていると、ツバキが操作するアーティファクトが近づいてきた。
 ツバキは綺麗な服と靴とタオルを持ってきていた。ドワーフが作ったポーションも持ってきてくれていた。

 足を怪我をしている子も居たのでポーションを使って治療をした。他の子もタオルを濡らして身体を拭いてから、服を着替えさせる。

 イチカとカイルに説明してアーティファクトに乗ってもらう。

 乗り込んでしばらくは緊張していたのだが、疲れのピークはすでに越えていたのだろう。糸が切れたように眠ってしまった。
 今は、小さい子を中心にまとまって寝息を立てている。ツバキが持ってきてくれた毛布を身体にかけておけば大丈夫だろう。椅子では無く床に座ってしまったのはしょうがないことだろう。

2020/03/30

【第七章 王都ヴァイゼ】幕間 イチカとカイル

 私の名前は、イチカ。お母さんが付けてくれた。お母さんと言っても、私を勝手に産んで身勝手に捨てた女じゃない。私を育ててくれて、優しく家族になってくれた人。
 お父さんは少しだけ怖いけど、すごく優しい。いろいろ私たちに教えてくれる。カイルなんて、影でも父さんや母さんと呼んでいるのに、お父さんやお母さんの前に出ると、クソジジイやババアと言っている。
 カイルは、私の一つ年上だけど、手間のかかる弟って感じ。

 今、私たちは住んでいた孤児院から逃げ出して、スラム街のルーサさんの所に来ている。

「カイル!イチカ!逃げろ。ここにも奴らが来る」

「え?」

「お前たち、ファンたちに何か渡されなかったか?」

「「マジックバッグ!」」

「それだ!」

 カイルがマジックバッグの中身を確認していく、食料や飲料が沢山入っている。2本だけだけど魔法水薬ポーションも入っていた。お父さんとお母さん。心配性だな。それから、羊皮紙が丸まって入っている。カイルが羊皮紙の束を取り出して、ルーサさんに渡す。

「カイル。イチカ。これを持って逃げろ。少しだけ遠いけど、レッチュ領に逃げろ。そして、領都に行け。冒険者ギルドにデイトリッヒという無表情の男が居る。そいつを頼れ。会えたら俺の名前とお前達の父さんと母さんの名前を出して、羊皮紙を渡せ。それまで絶対に羊皮紙は出すな。マジックバッグもなるべく隠して使え。いいな。約束だぞ!」

「え?」「わかりました。カイル。時間がもったいないよ」

「イチカ。カイルを、子どもたちを頼む。道々ではカイルが子どもたちを守れ。イチカは領都についたらカイルと子どもたちを守れ。できるな」

 私はカイルを見る。今までに見たことがないような目で私を見ている。
 二人で頷いてから、ルーサさんに”はい”と答える。

 そして、ルーサさんが落ち着いたら中身を確認しろと言って、小さいマジックバッグを私に投げてきた。

「これは?」

「俺からの選別だ。デイトリッヒに会って落ち着いたら必要になるだろう。お!そうだ。これも渡しておく」

 ルーサさんは部屋の奥に入って、小さな布袋を持ってきた。
 それをカイルにわたす。

「カイル。お前の持っているマジックバッグにしまっておけ、それから、中身はみんなで使えよ」

「うん。でも・・・。ルーサさん・・・」

「俺なら大丈夫だ。奴らもお前たちがここに居るか調べるだけだろう。だから、お前たちがこの場所スラム街に居ると俺たちが困る。わかるよな?」

 カイルはお父さんとお母さんから言われた内容をまだ気にしている。だからなのか、ルーサさんの話を聞いてすぐに頷いた。
 でも、ルーサさんが私たちを見る目は違う。だって、ルーサさんたちは、私たちを差し出せばお金ももらえるし危険な状態にもならない。なのに、私たちを逃がそうとしている。さっきの布袋もお金なのは解っている。銅貨だけだったとしてもスラムでは大金だ。ルーサさんたちもお父さんやお母さんと一緒だ。私たちを逃がすために戦おうとしている。
 ルーサさんが私を見る。私が何を考えているのか解ったのだろう。頭に大きくシワだらけの手を置いた。

「イチカ。生きろ。そして、奴らがやったことをデイトリッヒに伝えてくれ、心配するな。お前達の父さんと母さんが居て、俺が居る。大丈夫だ」

 涙が出そうになる。
 弟や妹が見ている。涙を見せるな!泣くな!
 そうだ、お母さんが言っていた。苦しかったら”笑え”。そう教えられた。

 私はルーサさんに笑顔を見せて、”解った”と伝えた。
 ルーサさんは”そうだ!笑え!”私とカイルを抱きしめる。汗の匂いがしてくる。お父さんと同じ匂いだ。

「カイル!イチカ!子どもたちを頼む。お前たちが、これから頑張る番だ!解っているな!」

「うん!」「はい!」

「よし。リンザー!居るだろう。子どもたちを町の外まで連れて行け、それから・・・」「解っています。レッチュ領までの道でシマにしている奴らに話を通しておきます」

「頼む。その後は自由にしていい」

「・・・。わかりました。好きに復讐します」

 何度か素材採取でお世話になったリンザーさんが私たちを町の外まで誘導してくれた。
 それから道順を私に告げてから、リンザーさんは用事があるからと1人で先に行ってしまった。

 道を歩いて5分くらいしたらカイルが振り向いた。見えないはずの孤児院を見ているのかも知れない。

「カイル?」

「なんでもない。イチカ。レッチュ領に行こう。そして、デイトリッヒさんに会って・・・」

 私は何も言えなかった。カイルを見るだけで精一杯だ。

「俺は・・・。強くなる!強くなって、イチカやみんなを守る!」

 カイルは私から目線を外して後ろを見る。
 街を見ながら宣言する。お父さんとお母さんとルーサさんに聞かせるように静かに・・・。でも、力強く宣言した。

 それから、私たちは街道を外れた場所をまっすぐに歩く。
 リンザーさんに言われた道だ。子供だけで街道を歩けば親切な人が助けてくれる可能性もあるが、それ以上に強盗未満の人たちが私たちを襲う可能性があると言われた。獣人の子供は珍しくはないが、獣人の子供だけで歩いているのは珍しい。奴隷にして貴族に売る奴らが出てきても不思議ではないのだと言われた。
 だから、普段人が通らない場所を通るように忠告された。私たちが通る場所の悪い人たちにはリンザーさんが話を通してくれると言っていた。でも、誰かが近づいてきたら逃げろとも教えられた。

 どのくらい歩いたかわからない。5日?10日?
 弟や妹も解っているのだろう、泣かないで歩いてくれる。途中で、セブが熱を出して慌てたけど、ポーションを使って一日寝たら治ってくれた。

 小さな村に立ち寄った。私とカロンで村に買い物に行った。食料は有るけど、道が正しいか確認したかった。
 それに、布や水も欲しかった。

 道は間違っていなかった。
 レッチュ領に入ってからは、街道を進むように言われていたので、街道を進んだ。途中ですれ違う商人さんから食料を買ったり、情報を聞いたり、しっかり踏みしめるようにして歩いた。攫おうとした人たちも居たけど、領主様が雇っている守備隊の人に助けられた。
 怖かったけど安心した。リップル領とは雰囲気が違う。村も明るい。

 私もカイルも弟も妹も安心し始めた。
 でも、現実は違った。

「お前たちみたいな餓鬼はさっさと立ち去れ、スラムにでもいつくつもりだろう?迷惑だから、帰れ!」

「私たちは、ギルドのデイトリッヒさんに会いに来ました。外で待つので、話をしてきてくれませんか?」

 私が最大の譲歩で頼むが門番は”ダメ”の一点張りだった。

 門番と話をしていると、冒険者らしき人が町から出てきて、門番と何か話をしていた。

「君たち。デイトリッヒさんの知り合いかい?」

「いえ、直接は知りません。知人に伝言を頼まれました」

「そうか・・・」

 優しそうな冒険者さんの顔が険しくなる。
 何か、間違えた?

「君の名前は?」

「私はイチカです。彼はカイルと言います」

「そうか、イチカとカイルがお兄さんとお姉さんだね」

「はい」

 冒険者さんをしっかりと見る。
 お父さんとお母さんが言っていた。目線をあわせない人は何か悪いことを考えているから気をつけなさいと・・・。冒険者さんは、屈んで私と目を合わせてくれる。

「そうか・・・。デイトリッヒは、領都には居ない。神殿に向かった。帰ってきていないから、神殿に拠点を変えるつもりだと思う」

「え?」「兄ちゃん!神殿って!?」

 カイルが横から口を挟む。

「ちょっとまってな」

 冒険者さんは、私とカイルの頭を撫でてから、門番の所に戻って何か話をして戻ってきた。

「これを持っていけ」

 小さな布袋だった。

「これは?」

「銀貨が入っている。領都の中は通せないが、次の商隊に乗せてもらえるように頼んだ。それを渡せば、神殿がある場所の近くまでは行ける。そこから、また歩くけど、そこからは壁に沿って歩けば大丈夫だ」

「え?」

「行けばわかる。石壁が出来ていて、水が湧き出したり、採取できたり、休憩できるようになっている」

 冒険者さんから言われたとおりに、門で待っていると門番に連れられた商人らしき人と冒険者らしき人が近づいてきた。
 言われたとおりに、布袋を渡すと、馬車に乗せてくれると言ってくれた。不安に思って待っていると、10分くらいした二頭立ての大きな馬車がやってきた。狭いけど我慢してくれと言われて、荷物がいっぱいになっている荷台に載せられた。弟と妹たちには綺麗な布が渡されて、床に敷いて横になっているように言われた。私は、御者見習いとして商人の横に座るように言われて、カイルは冒険者見習いとして冒険者さんと一緒に歩いた。

 弟も妹も簡単なお手伝いならできるし、薬草や食べられる草の採取ならできる。
 商隊が野営するときにお手伝いをすると申し出た。お客様だから乗っていてくれと言われたのだが、お手伝いしていないと悪いことばかりを考えてしまう。お願いして強引にお手伝いをさせてもらった。弟や妹たちも同じで、黙って座っていると、お父さんやお母さんやルーサさんを思い出してしまう。何かしている方が思い出さなくて良いのだ。

 商人さんに聞いたら、神殿が攻略されたのは本当で神殿に向かうためにはユーラットに一度立ち寄る必要があると教えられた。他にも、いろいろ教えられた。その中に、神殿に入るには”資格”が必要だと教えられた。資格がないのに無理やり入ろうとすると、神殿から攻撃される・・・。らしい。カイルにしっかりと注意する必要がありそうだ。商隊は、私たちを降ろして休憩してから帝国に向かうのだと言っていた。今、帝国では物資が値上がりしているから、王国で仕入れた物が飛ぶように売れているのだと言っていた。

 神殿と街道を分ける石壁が続いている。石壁に沿って進めばユーラットに到着できると教えられた。
 それだけではなく、ある程度進んだら休憩所が用意されている。休憩所では、湧き出ている水は自由に使っていい。それだけではなく、タイミングがよければ石壁に乗って果物を採取できる。採取した果物は自由にして良いのだと教えてくれた。

 私とカイルは弟と妹の手を引いて石壁に沿って歩くと決めた。

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2020/03/30

【第三章 託された手紙】第一話 報告

「ママ!ただいま!」

 九条唯は、来たときと同じように長嶋校長が運転するバスに乗って家に帰ってきた。

 玄関は空いていたので、そのまま家に上がって、母親を探す。

 いつもは、パソコンが有る部屋に居るか家事をしているのだが、今日はどこにも居ない。

「あれ?ママが居ない?」
「唯。おかえり。早かったな」

 九条くじょうすすむ
 唯の父親だ。今日は、仕事が休みで珍しく家に居たのだ。

 進の仕事は、船大工で主に漁船のメンテナンスをしている。あとは、メカ音痴の為に魚群探知機やオート操舵のセッティングを行っている。
 漁が多いこの時期には、進の仕事は少ないのだ。メンテナンスは、船を休ませる必要があるために、漁がある時は行う事ができない。応急措置なら可能だがそれでもできることは限られている。その他の調整に関しても同じで船を丘にあげて作業する物が多い。海上で行う事もあるが、それは最終調整だけになってくる。

「パパ!お仕事は?」
「今日は、お休みだよ。唯。キャンプは楽しかったか?」
「うん!ユウキちゃんと鳴海ちゃんと沢山お話できた!」
「そうか、ユウキは・・・あぁ桜の子供か?」
「え?うん。そう。あとね。タクミくんも一緒だよ!」
「克己の所の子供か・・・あいつらが一緒だと何もなかった事が不思議でならない」

 進は、同級生の二人の顔を思い出す。
 憎たらしいが信頼はできると思っている。

「パパ。ママは?」
「ママは、少しお出かけしている。夜までには戻ってくるぞ!」
「本当?」
「あぁ本当だ!そうだ、唯。今日は、丸大飯店に行くか?」
「え?!焼きそば!食べていい!」
「あぁいいぞ!」

 丸大飯店・・・の、説明は必要ないと思う。桜も克己も子供の時から好きでよく行っていた、中華飯店だ。
 唯が言っている焼きそばは、かた焼きそばの事で、唯は小学生になる前から丸大飯店のかた焼きそばが好きなのだ。最初は、固くてパリパリしている麺が上にかけてある”あん”を吸って柔らかくなっていくのが好きなのだ。

 鈴は、警察に呼ばれていた。
 当日の様子をもう一度説明してほしいと言われたからだ。家に行くと警察には言われたらしいのだが、すずは警察で説明することを望んだ。夫である進には事情を説明してある。警察も、すずが犯人だとは思っていない。手がかりが何もない状況で少しでも捜査を進めるために、話を聞きたいと思っているのだ。

 警察の捜査は難航している。頓挫して居ると言ってもいい。
 14人の死体がありながら現場には血の一滴も残されていない。それだけではなく、凶器も見つかっていない。
 証言や残されている監視カメラ映像や、当日の参加者のスマホやデジカメに残されている映像や動画から被害者たちが数分前まで生きていたことは間違いない。そのために、警察は何が起こって、14人が首を切られた状態で見つかったのか公式に発表できないでいた。

 警察は、集団催眠や全員で口裏合わせの可能性を考慮したが、矛盾した証言は出てこなかった。
 マスコミの注目度が高い事件だが、流せる情報が非常にすくないのも特徴なのだ。
 その上、上層部から、須賀谷真帆に関する情報の秘匿命令が出ている。マスコミにも須賀谷真帆に関する情報の自粛を求める嘆願命令とある筋政治層から出されている。

 数ヶ月が経過した現在は、報道も行われなくなり、元々静かな港町に静かな日常が戻りつつ有った。

 進は、唯を乗せて丸大飯店にやってきた。
 元々はバイバス沿いに有ったのだが区画整理で店舗を隣町にできたショッピングセンター内に移動している。

「パパ!早く!」
「解っている。ちょっとまて・・・。おっママから電話だ。唯。先に入って注文を頼む」
「わかった。パパは、いつもの?」
「あぁ」

『進さん』
「今、唯と丸大に来ているけど、お前はどうする?何か買って帰るか?」

 警察署から丸大飯店までの移動手段を唯が持っていない事を進は理解している。

『あっそれなら、炒飯をお願い』
「了解」
『それで、進さん。須賀谷那由太さん。真帆のお兄さんとは同級生だったわよね?』
「那由太が見つかったのか!」
『ううん。違うの。警察で、”須賀谷那由太を知っているか”と聞かれて、”夫の同級生です”と答えただけ』
「そうか・・・。那由太の奴が疑われているのか?」
『ううん。違うみたい。那由太さんはもう見つかっていて、アリバイもあるみたい』
「それならよかった。それで、鈴はなんで呼ばれたのだ?」
『なんか思い出した事があるか?とか、殺された人たちに付いて何か知っているか?とか、小学校のときのいじめに関してとかを聞かれただけ』
「そうか・・・。一度、桜の所に相談に行くか?美和も居るから何かできると思うぞ」
『うーん。そうね』
「わかった」「パパ!まだ!」「唯。もう少しだから、先に座っていなさい」「はぁーい」

「悪いな。唯がしびれ切らしている」
『いいわよ。私も、菜摘と軽くお茶を飲んでから帰るね』
「わかった」

 進は電話を切って、胸ポケットに手をやる。

(そうか、禁煙しているのだったな)

 タバコを一本吸って落ち着こうと考えたのだが、自分がいい出して禁煙を始めている。
 すでに3ヶ月だが時折胸ポケットを探ってしまうのだ。

 妻からの電話でわかった事は、警察の捜査が進んでいない事、那由太が犯人ではない事、未だに妻たちが疑われている事だ。

 話を聞いた時に、最初に思い浮かんだ考えは、突拍子もない事だった。
 進は、真帆が復讐をしているのだと思ったが、真帆は小学4年の時に行われたキャンプの日から行方不明だ。それが今になって復讐してきているとは考えにくい。

(俺が考える事じゃないな)

 進は、娘が待っている丸大飯店のドアを空けて店に入る。
 飯時ではないので、客はまばらだ。テーブル席を見ても、娘の姿が見えない事を確認した。

(二人だけだからテーブルでも良かったのだけどな)

 いつも家族で座る座敷に向かう。
 店員も顔なじみになっている。進の顔を見ると、指で座敷の方を指し示す。個室になっている座敷席が6部屋ある。法事や小規模な宴会に使えるようになっている。

 進は、店員に会釈をして、座敷に向かう。小上がりになっている所で靴を脱いだ。

「唯。九条は?」
「パパ?もうすぐ来るよ」

(ん?誰か居るのか?)

 個室になっている襖を開けて中を見る

「桜!?」
「おぉ進。遅かったな。お前の分の注文は唯がしたぞ。な」
「パパ。遅いよ!」
「悪い。悪い。なんで、桜が?美和とユウキはわかるけど、なんで沙菜さんが一緒に居る?克己とタクミは?」

 進が不思議に思うのも当然だ。
 沙菜は、タクミの母親で克己の妻だ。桜と美和が一緒なのはわかる。

「あぁ克己とタクミは、おふくろに呼ばれた」
「はぁ?どういう事だよ?」

 進の疑問は当然だ。
 克己の両親はすでに他界している。桜が行っている”おふくろ”とは、桜の母親の事だ。

「しょうがないわよ。美穂さん。克己くんの方が好きだから・・・ね。あっ今は、タクミの事が好きだったわね」
「まぁその方が俺に連絡が来なくて助かる」
「桜。お前・・・」

 進も美和も沙菜も、桜と母親の美穂の関係があまり良くないのを知っている。結婚には賛成していた。ただ一つ、桜が警察学校に黙って入ったのが許せないでいるのだ。

「進さん。鈴さんは?」
「鈴は・・・」

 進は、桜をチラッと見た。聞いた、沙菜もそれで事情がわかってしまった。

「そうか、進。お前、車か?」
「そうだ」
「そりゃぁ残念だな」
「え?」

「おまたせしました!タンメンと餃子を3人前とソース焼きそば紅生姜抜きとライスと麻婆丼とかた焼きそばとチャーシューメンと半炒飯セット。あと、ビールを2本」

 ユウキが、半炒飯セット。ラーメンと半炒飯のセットだ。
 唯はかた焼きそば
 桜はソース焼きそば紅生姜抜きとライス
 美和がタンメン
 沙菜が麻婆丼
 進がチャーシューメン

 見事に好みが分かれている。
 ビールは、桜と美和が飲むようだ。帰りは、沙菜が運転していく事になっている。

 丸大飯店の特徴だが、6-7人位までなら、一度に注文した品物は同時に持ってきてくれるので、家族や子連れで行くときには都合がいいのだ。

「親父さん!」
「お!なんだ!」
「炒飯持ち帰りで1人前頼む。あと、餃子を1人前」

 進は、鈴に頼まれた炒飯を頼んだ。眼の前でビールを飲まれたので、家に帰って鈴の話を聞きながら餃子をツマミに何は飲むつもりになった。

「あいよ!」

 そして、全品持ち帰りができるのだ。

 皆で食事を食べながら、ユウキと唯からのキャンプでの出来事を聞いている。
 大人たちは、事件が有った後だし、同じキャンプ場を使っている事から、心配をしていたのだが、子どもたちの話を聞いて何も問題がなかった事を喜んでいた。

「でね。パパ!」
「あっうん。聞いているよ」

 進は、唯から”タクミのご飯が美味しかった”や”肝試しが怖かった”や”歩くのが大変だった”という話を聞いている。
 ユウキの補足が入るが、補足で余計にわからなくなっている。ユウキの話の半分以上が擬音なので臨場感はあるが、内容は一切伝わらないし補足にもなっていない。

「パパ・・・」

 ユウキが、セットの炒飯を桜の所に持ってきた。

”ゴン!”

 個室にそんな音が鳴り響いた。
 桜がユウキの頭にげんこつを落としたのだ。

「いたぁぁい」

 ユウキが持ってきた炒飯は手を付けられていない。

「タクミ・・・は、いないのか?しょうがない。美和」
 美和は首を横に振る。

「しょうがないな。ユウキ!解っているな」
「うん。ごめんなさい」

「美和。あぁ克己とタクミに、餃子二枚を土産に持っていく、あと、これも頼む」
「はい。はい」

 美和は解っていたのは、襖を開けて、店員に頼んでいる。
 餃子二人前を土産に頼んで、ユウキが食べられなかった炒飯を包んでもらう事にしたのだ。

「美和さん。それなら、あと唐揚げもお願いします」
「そうだな。美和頼んできてくれ」
「わかりました」

 沙菜は、ユウキの表情から今は話しながら食べているから、お腹がいっぱいになったと思っているけど、1-2時間もしたら何か食べたいと言い出すのが解っている。桜も美和もそれが解っている。克己とタクミは、桜の母親の店カラオケ・スナックで何か軽く食べて来るだろうから、餃子だけで大丈夫だろうと判断した。
 ユウキが、タクミの家に泊まると言い出して、克己とタクミが餃子と炒飯を食べているのを見て、自分も何か食べると言い出す時に出されたのがこの唐揚げになる。

 そのやり取りを見ていた、進は少しだけ複雑な表情をしている。

「どうした?進?」
「いや、なに、お前たちいつもこんな感じなのか?」
「そうだな。まぁタクミが居れば、全部タクミに任せるのだけどな」
「はぁ?10歳の男の子に何をやらせている?」
「それこそ、”なん”でだよ?なぁユウキも唯もそう思うよな?タクミなら大丈夫だろう?」
「うん!」「うん!」

「ほらな」
「”ほらな”じゃねぇよ。まぁいい。唯。それで?肝試しはどうだった?」

 進は、自分に不利だと思って話を少し強引に戻した。

2020/03/30

【第二章 キャンプ】幕間 手紙

 唯はもらった2通の手紙を眺めている。

(ママに渡してって言われたけど、ママの知っている子なのかな?)

 そして、唯は知らなかった。
 この手紙を、母親である九条くじょうすずが読む時に新しい犠牲者が産まれる事を・・・。

(マホちゃん?私以外には声をかけなかったけど良かったのかな?もうどっかに居なくなっちゃったけど?)

「唯!」
「うん!」

 自分を呼ぶ声に気がついた唯は周りを見回すが、手紙と順番を教えてくれた女の子が居なかった事を不思議に思ったが、気にしないで名前を読んでくれた、タクミの方に急いだ。

 ふふふ

 すずに手紙がしっかり渡るといいな。

 本当は、すずを巻き込みたくなかったのだけど、仕方がないよね。

 ふふふ。
 もうすぐだね。もうすぐ会えるよ。

 楽しみだよ。楽しみだね。

 すずへ

 この手紙を読んでくれているという事は、唯ちゃんは手紙を渡してくれたって事だね。

 あのね。
 すずにお願いが有って手紙を書きました。

 私を見つけてください。

 学校では、すずとなつみだけが友達だった。
 委員長や副委員長は、先生に言えば大丈夫と言った。先生に言ったら、委員長と副委員長は、”あdfがr”と”ぱgたvばヴぇ”に私が先生に言ったと教えていた。
 あと、”うvたvら”に言われたって他の子が雨の日におばあちゃんに買ってもらった大切な傘を隠した。男子が、傘を破った。許せなかった。
 あの傘を探してくれたのも、すずとなつみだったよね。本当に嬉しかった。見ていただけの子も多かった。

 でも、こっそり教えてくれる子も居たよ。あの夜。私を探してくれた子は許そうと思う。ダメかな?

 あの夜。すずは私を守ってくれよね。行かなくていいと言ってくれた。すごく嬉しかった。すずとなつみが守ってくれた。
 あとで知ったけど、”ぱgたvばヴぇ”や”うvたvら”が、すずとなつみを殴ったのだよね。ごめんね。私の為に・・・。

 私は、”あdfがr”に呼び出された。そこに、”ぱgたvばヴぇ”や”うvたvら”も居て私のパパやママやお兄やお姉の事を馬鹿にした。許せなくて、許せなく、悲しくて、辛くて、なんで、なんで、なんで・・・。と、思ったけど、我慢したの・・・。

 ”あdfがr”が、肝試しを怖がって、私に変わりに行けと命令してきた。服を脱がされて、”あdfがr”の服に無理やり着替えさせられて、肝試しに行かされた。私、怖いからイヤって言ったら、”あdfがr”に殴られた。泣いていたら、”ぱgたvばヴぇ”や”うvたvら”が私を先に歩かせようと言い出した。
 ”ぱgたvばヴぇ”や”うvたvら”や”ヴぁいばちゅd”の荷物も持っていたの。手紙も持っていけって言われて持っていったの。

 道が暗いって言われて、”ぱgたvばヴぇ”に殴られて、歩くのが遅いって言われて、”うvたvら”に殴られたの・・・。
 懐中電灯は一つしか無いから、後ろを照らしていないと”ヴぁいばちゅd”に怒られたの。

 でもね。怖いのも痛いのも、我慢していれば、大丈夫って”ヴぁいばちゅd”が言うから頑張ったの・・・。

 でも、ダメだった。
 我慢することができなかったの・・・。

 私の事だけなら我慢したよ。でも、パパやママやお兄やお姉だけじゃなくて、すずやなつみの事も悪く言うのだよ。それも”ヴぁいばちゅd”がだよ。すずやなつみまで殴るっていい出したの。
 なんで?って、口答えしたら殴られた。”ヴぁいばちゅd”に殴られた。その時に、”ヴぁいばちゅd”が大事にしていた時計が壊れたの・・・。私のせいだって言い出して、また殴られた。弁償しろと”ヴぁいばちゅd”の時計を投げつけられたの・・・。

 それで、それで・・・私・・・沢山殴られたの・・・。

 気がついたら暗い所にいたの。
 暗くて、冷たくて、寂しくて・・・。誰も来てくれなくて・・・。遠くで、すずとなつみと他の子や先生の声が聞こえたの・・・でも、返事ができなくて、寂しかったの・・・。

 すず。あのね。わたし、”ヴぁいばちゅd”に殺されたのだと思う。
 どこかに埋められたのだと思う。

 肝試しの最中だったから、仏舎利塔の近くだと思うの?
 やっと暗い所から出てこられたの。

 すず。私を見つけてほしい。お願い。
 帰りたい。私、帰りたい・・・。

 すがやまほ

 この手紙が、九条鈴の所に届けられるのは数日後となる。

2020/03/30

【第二章 キャンプ】第五話 手紙

 唯が1人で寂しい思いをしている時に、手紙のリレーは鳴海から晴海に、晴海からユウキに繋がろうとしていた。

「あ~る~は~れ~た~きょ~う~の~ひ~を~」

 晴海に歌声が聞こえてくる。
 正直タクミ以外には、なんの歌かわからない。晴海は、一度タクミに聞いたのだが、言葉を濁して逃げられてしまった。
 そして、問題ないのは歌詞だけではない音程がめちゃくちゃなのだ。

 しかし、晴海は音程が外れた調子の歌声を聞いてユウキが近い事を確信した。

「ユウキ!」
「ハルちゃん!待っていたよ!」
「だから、僕は男だ!」
「解っている。ハルちゃん」

 改めるつもりが皆無のユウキに何を言ってもダメなのは、晴海には解っている。
 わかっていても決まったツッコミをしてしまう。言わないと気持ち悪いのだ。

 特に、今のような状況では・・・。
 周りが暗闇で、自分が持つ懐中電灯の光だけが頼りの状況では軽口を叩いていないと、怖さが増してきてしまう。
 それでなくても、これから数分間は暗闇で1人になってしまうのだ。

「ハルちゃん。それじゃ行くね!」

 手紙を受け取ると、挨拶もそこそこにユウキは走り出した。
 タクミの所に急いだのだ。怖いという気持ちも、タクミの所に行けば怖くない。そういう思いが有るためだ。その後で、また1人になってしまう事は考えていない。タクミに会いたいという気持ちが先走っているだけなのだ。

 走り去るユウキを懐中電灯で照らしながら晴海は思った。

「ユウキが僕の気持ちに気がつく事は無いだろうな・・・。タクミが相手じゃ勝ち目ないしな」

 晴海の独り言がユウキに届くことはない。
 ユウキの気持ちがタクミに届くのはこれから6年近くかかってしまう。晴海がそれを知っていたら、違う未来が有ったかもしれないがそれは別の物語だ。

 晴海が、ユウキに思いを寄せている時に、当のユウキはタクミの所に到着していた。
 ほぼ全力で駆け抜けたのだ。暗い夜道を全力で駆け抜けられる運動神経を持っている。それがどんなに優れているのかは、暗い足場が安定していない草原をダッシュしてみればわかる。すぐに足を取られてしまう。それだけではなく、一歩踏み外せば何があるかわからない。通常の思考回路では怖くてできない事だ。

 それでも、ユウキは全力でタクミの所に向った。

「タクミ!」

 タクミは、前後に揺れている光を見て、ユウキが近づいてきている事を認識していた。
 走ってくるだろう事を予測していたので、なるべく安全に来られるように、ユウキが来ると思われる方向を、懐中電灯で照らしている。ユウキが全力で走ってくると確信している。そして、懐中電灯で足元を照らしていないのもわかっているので、自分が持つ懐中電灯でユウキが転ばないように照らしているのだ。

「ユウキ!」

 お互いの姿が視認できた所で、タクミは声をかける。

「はぁはぁはぁおまたせ」
「いいけど、ユウキ。走ってきたのか?」

 解っている事だが問いただした。
 ユウキは少し汗を拭いながら

「うん。だって、タクミが待っていると思ったから」
「あぁありがとう。待っているのは間違いないけど、急いでも変わらないぞ?」
「うん。解っている。解っているけど・・・。うぅぅぅ。いいの!はい!手紙!」
「お。それじゃ行ってくる」
「うん!」

 タクミは、ユウキから手紙を受け取って、自分の手紙を持って、担任が待っていると思われる場所に向った。
 本来なら、マユにわたす手紙だが、担任に渡して、後日マユにわたす事になっている。

 マユから唯にわたす手紙は、担任が持っているので、それを唯にわたす事になる。

「先生」
「タクミくぅん」

 タクミは、先生の情けない声でげんなりした気分になる。
 担任は、1人で待っているのが心細くなってしまったのだ。本来なら、待っている間に他の先生が合流してくるのだが、タクミたちが最後という事もあって、片付けをしてからキャンプ場所に戻る事になっているので、誰も合流してこない。
 もう一つ理由が有るのだが、それは別の問題だ。

「はい。これでいいですか?」

 手紙を担任に渡しながら、タクミはこれで肝試しも帰るだけだと考えていた。

「はい。大丈夫です。それじゃ次に・・・ん?」

 担任は、何か囁く声が聞こえたような気がした。

「え?どうかしました?」
「ううん。なんでもない。タクミくんはここで待っていてくださいね」
「はい。わかっています」

 担任は、暗闇をもう一つの星の頂点に向けて歩いていく。

 スタート地点に戻ってきた。誰も居ない?
(次は私ね!)

「え?」

 確かに女の子の声を聞いた。
 周りを見るが誰も居ない。

 気持ち悪さとなんだかわからない感情で、担任はスタート地点で10分ほど逗まってしまった。

「あっ!そうだ。マユちゃんが休みだから、私が唯ちゃんの所に行かないと・・・!」
(大丈夫。もう行ってきたよ)

「え?誰?」

 懐中電灯で周りを照らすが仏舎利塔と草木があるだけで、他にはなにもない。

 後ろから子どもたちの声が聞こえる。

「え?なんで?」

 担任が不思議に思うのは当然だ。

「唯ちゃんが怖くて我慢できなかったのかな?」

 担任は自分の考えを声に出して見た。今度は誰も答えない。

 3分位してから、皆が揃って戻ってきた。

 ユウキが1人駆け出した。

「先生!」
「ユウキちゃん。待っていたわよ」
「先生、怖くなかった?泣いてない!」
「泣いてなんか居ないわよ!」

 軽くユウキの頭を叩いてから、手に持っていた懐中電灯で皆を照らす。

(一人、二人、三人、四人、五人、六人)

(え?)

 担任は、もう一度、左端に居るタクミから懐中電灯を当てて確認している。
(タクミくん。ユウキちゃん。晴海くん。鳴海ちゃん。唯ちゃん)

(5人。よかった、数え間違いね)

「みんな揃っているみたいだね。それじゃ帰ろうか?」
「「「「『「はい!」』」」」」

(あっそうだ。唯ちゃんに手紙を渡さないとダメだね)

 唯は、一人だけ少し離れたところを歩いていた。
 いじめとかではない。唯は皆と一緒に居る事が好きだ。皆も唯を友達だと思っている。

 唯は、なぜか暗闇の方を向いて何か喋っている。

 担任は、徐々に遅れている唯に近づいて手紙を渡そうとした。

(え?)

 唯の手には手紙が握られていた。
 唯に渡す手紙は、自分の手にある事は確認している。

 担任は、そのまま皆が手紙を持っている事も確認した。
 手紙が多いのだ。

 自分の手元に二通ある。一通は唯にもう一通は休んでしまったマユにわたす物だ。

「唯ちゃん」
「はい?」
「手紙?」
「あっもらいました!」
「え?誰に?」
「マホちゃんです!」

 担任には、マホがマユに聞こえて、少し安心した。
 風の音なのか、偶然なのか、それはわからない。

「そう?」
「あっでも、これはママに渡してほしいって言われているから、マユちゃんの手紙ください!」
「そうなの?(そう言えば、マユちゃんのママも、スズ先輩と同級生だったはず。それで手紙を子供に預けたのかな?)」
「うん!」
「そう、それなら、手紙を渡しておくね」
「ありがとう!マホちゃんが言ったとおりに、先生がしっかり手紙を渡してくれた!」

「え?」

 担任は聞き間違いかと思って、唯に聞き直さなかった。聞き直せなかったが正しいのかもしれない。
 ”マホ”と聞こえた名前が気になってしまった。

「あっそうね。唯ちゃん。ほら、皆と離れちゃったと、少し急ごう」

 須賀谷スガヤ真帆マホの事は知っている。
 少し前にあった事件の事も認識している。

 担任は、自分がおかしな事を考えたと思って、首を振って考えを頭の中から追い払った。

(唯ちゃん!バイバイ!)

 唯はなにかに呼ばれた気がして、後ろを振り向いた。
 勿論、後ろには誰も居ない。

「どうしたの?」
「ううん。なんでもない!先生、急ごう!」

 唯に引っ張られるように担任は早歩きになる。
 何気なく後ろを振り向くと、そこには、先程まで見えなかった。

 青い。青い。紫陽花が大きな花を付けていた。

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2020/03/30

【第二章 キャンプ】第四話 肝試し

 夕飯が終わって、キャンプ場に集められた生徒たちは座って、先生が離す怪談を聞いていた。

”キャァァ!!”
”ヤメロ!”

 誰が言ったのは名誉のために伏せておこう。
 しかし、タクミたちではない事だけは確かだ。

 タクミたちの班は一箇所に集まって話を聞いているのだが・・・。

”フッフーン。怖くなんて無い”

 ユウキが口ずさんでいるが、タクミの服の裾を離す気配はない。同じく、鳴海は晴海を後ろに座らせて、自分の背後を守らせている。

 怪談は、よくある話だ。
 よくある話だけに怖いのだ。そして、積み重ねられた歴史が怖さを増す働きをしている。

 アレンジして今日これから行われる肝試しに特化したものにしているのだ。地域的に幼少の頃から聞かされている話が加えられている。毎年バージョンアップして徐々に怖くなっていくのだ。

 肝試しも、怪談話に沿った状態で脅かす準備がされている。

 タクミたちの順番は最後だ。
 それまで、この場で待機する事になるのだが、別にこの時間で遊んでいるわけではない。

 先生たちは、各班に引率する形になるし、脅す側に回っている先生も人数が多いわけではない。安全に肝試しを行う必要が有る。細心の注意を払ってはいるが、子供は急に予想を超える動きをする。

 特に今年は、伝説になっている森下桜と篠崎克己の子供が居るのだ。

 タクミたちの引率は、担任が行う事になっている。
 順番まで待機しているのだが、なぜか肝試しを行うタクミたちよりも、担任が緊張している。

 担任が緊張しているのも当然なのだ。
 まず、最初に担任はタクミたちの事を誤解している。”問題児”だと認識しているが、それは大人からみた認識でしか無い。タクミたちは問題を起こしたわけではない。ただ目立つのだ。勉強が飛び抜けてできるわけではない。運動が飛び抜けてできるわけではない。でも、全ての事で名前が上がるのだ。多才というのがいいのだろうが、天才というわけではない。それなりの努力をしているし、頑張っても居るただ凄まじく効率がよく、頭の回転が早いのだ。
 担任からみたらそれが問題行動に見えてしまう事も多い。

 そして、担任が緊張している一番の理由は、担任が森下桜と篠崎克己の後輩だという事だ。
 サクラたちの4つ下。サクラたちの影響を受けた者たちなのだ。特に、狭い町であるために、伝説を話しとして聞いて育ったのだ。
 在学中に接するチャンスが有れば違ったのだろうが、4つ下だとサクラたちの卒業と同時に入学する事になる。中学での出来事を噂話や先輩からの伝説として聞かされる事になる。

 その伝説の先輩たちの子供を引率する事になるのだ。緊張するなという方が無理なのかもしれない。そして、少し前に発生した事件の事も頭の隅に残っている。ここまで問題なく物事が進んでいる。最後の最後で問題が出てしまっては困るのだ。

 担任は班の1人が休んでいる事をすっかり忘れてしまって居たのだ。

 タクミたちの順番が来た。手紙は、すでに仏舎利塔で待っている先生に渡してある。

 担任は、スマホでタクミたちが今から出発すると連絡するだけでよいのだ。
 昔は無線機を使っていたのだが、スマホのSNSを使えばそれらも簡単に行う事ができる。

 そして誰が開発したのかわからないが、精度の高いGPSを使って班の位置を認識して、おばけ係の先生に伝える事ができるようになっている。

「タタタタッタクミ」
「ユウキ。唯も落ち着けよ。大丈夫。大丈夫」
「だって・・・。ひっ!」

 鳴海は、晴海に後ろを絶対に守れと命令して、晴海の前を歩いている。
 ユウキと唯は、タクミの服の裾を握って後ろから続いている。

 簡単に説明すると、タクミ→ユウキ・唯→鳴海→晴海の順番で歩いている。少し距離を取って担任が続いている。

 脅す方も素人なので、子供だまし以上の脅しは無いのだが、雰囲気はバッチリなのだ。

 幸いな?事に月も出ていない。空は曇天と表現していいだろう。そして、海からの生暖かい風は山頂付近まで届いている。温められた海風だ。海岸沿いに住んでいる者しかわからない、独特の生臭さを含んでいる。
 暗い夜道に、生暖かい風、遠くの町明かり。そして、終わりに近づいている夏漁の船の明かりが漆黒の海に漂っているのが見える。

 風が吹けば、木々が葉や枝を擦れ合わせて、不自然な音を鳴らす。
 木々の鳴く音とは別に首切り螽斯の鳴く声が恐怖を掻き立てる。

 草むらや周りから聞こえてくる、”ジー・ジー”という鳴き声が、自分たちが近づくと鳴り止むのだ。
 視線を感じるわけではないが、監視されているのではないかという恐怖心が芽生えるのだ。
 直前で聞いた先生の怪談話も、監視されている恐怖を伝える物だ。

「タクミ・・・」
「ユウキ。情けない声をだすなよ。唯。引っ張るな!」

 タクミが指摘した事とは別にユウキは唯と手を繋いで、タクミの服の裾を引っ張っている。

 タクミは裾を引っ張られながら少し歩きにくいと考えていた。

 何度か数えていないが、お化けの登場でタクミは慣れてしまっている。
 怖くないかと言われれば、怖い事は怖い。しかし、人は自分以上に怖がっている人が居ると怖さが緩和される生き物のようだ。タクミは、その傾向が強い。それでも、後ろで怖がって驚かれると反射的に行動を起こしてしまうのはしょうがないことだろう。驚いた人の声で驚くのだ。

 音がするとそちらの方向を見てビクッと身体を震わせる。
 その都度、裾を引っ張られてタクミは体勢を維持するだけで精一杯な状況だ。この位の年齢では、女の子の方が、力が強い事が多い。そして、タクミの裾を二人が握っているのだ。体勢を維持出来ているだけでもすごい事だと思える。

「あ!」

 鳴海が大きな声を上げる。

「仏舎利塔!」

 鳴海の声をきっかけに、闇夜に塔が見えてきた。
 ライトアップなどはされていないが、手に持っている懐中電灯で照らせば、石造りの塔は闇夜でもよく見える。

「さぁ皆」

 引率していた担任が皆の前に出てきて声をかける。

「解っているよ!先生!」

 晴海が軽い口調で言うのだが、少しだけ声が震えているのはやはり怖いからなのだろう。
 前に鳴海が居たために、大丈夫と自分に言い聞かせていたのだ。

 順番は決められている。
 手紙はすでに角?に、置かれている。

 順番は、ユウキの意見と言うよりも女性陣の意見が採用されている。

 唯から開始される。
 唯は、鳴海に手紙を渡して、鳴海は晴海に、晴海はユウキに、ユウキはタクミに、タクミは本来なら今日来ているはずのマユにわたすのだが、休みのために先生に渡して、当初の予定どおりに、後で先生が唯に手紙を渡す事になっている。

 星型になっている仏舎利塔の星の先に1人ずつ立つ。そして、仏舎利塔の周りをぐるっと廻る事になる。

 唯が少し大きめの声で
「い、今から行きます」

 そう言うと、唯は歩き出した。鳴海の所まで、2分程度だろうか?暗いなかで、懐中電灯一つだけ持って、歩いている。

 唯は、怖いけど一歩、一歩、踏みしめるように、確実に歩いている。
 ユウキが言っていた、皆が歩いた後だからという言葉を信じて、懐中電灯で道を照らすと、確かに沢山の足跡と思える物が見える。

 足跡を数えながら歩いていると、怖さが少しだけ抑えられるような気がしている。
 そうして、数歩行った所で、ふと何か温かい物を感じた。

 お母さんのような温かさを感じた。気のせいなのかもしれないが、唯は耳元で”大丈夫。怖くない”と何度も、何度も話してくれる女の子が居るように感じていた。
 唯は、その声と温かな感触で怖さを忘れる事ができた。

「鳴海ちゃん!」
「唯!」

 二人は、お互いの懐中電灯の光を認識した。

「はい」
「うん!ありがとう」

 手紙を渡して、唯はこれから1人で待っていなければならない

「鳴海ちゃん。早く帰ってきてね」
「うん。私も怖いから急ぐよ」

 鳴海は、それだけ話して、唯の手をぎゅっと握ってから、一言二言交わしてから、双子の片割れの所に向った。

「うぅぅぅ怖いな」

 さっきまで鳴海と二人で居たからだろう。
 怖さがぶり返してきている。唯は、遠くに揺らめく街の灯りを見ている。

「ママとパパ。私の家の灯りはどれかな?」
(あれだよ)
「え?」

 唯は、誰かが耳元で囁いた声を聞いた。
 そして確かに、白い腕がある方向を指さしたと感じていた。

「だれ?」

 誰も答えない。
 でも、確かに誰かが居る。

 でも、怖くない。

「ママ?」

 その問にも答えてくれない。

 唯は、不思議と母親である。スズを感じていた。

2020/03/30

【第二章 キャンプ】第三話 タクミの能力?

「ちょっと待て!ユウキ!」

 タクミの静止も虚しく、肝試しの順番が最後に決定してしまった。
 それには理由もあった。班のリーダーはユウキなので、ユウキが言ったのなら決定事項になる。

 先生方もわざと意地悪をしたわけではない。
 これが、最初を望んだりしているようなら、タクミの静止を聞いて、”班で話し合ってからもう一度申告しなさい”と言ってくれだろう。しかし、ユウキが言ったのが”最後”だったので、先生はこれ幸いと受諾してしまったのだ。

 先生方の考えもわかる。理由も簡単だ。肝試しの順番では、最後を選ぶ班はほとんど居ない。皆無と言ってもいい。

 当然だ。最後は、怖い話が終わってから、自分たちの順番まで待機しなければならない。
 そして、待機している最中は悲鳴が聞こえたりして恐怖心を掻き立てられる。

 順番は、毎年最初の方が人気なのだ。最初から順番に埋まっていくと言ってもいい。

 しかし、ユウキと同じように最後を選んだ者が他に居なかった・・・。ことはない、ユウキの父親である。森下桜も最後を選んだ1人だ。

「ユウキ!」
「ユウキ!お前、勝手に!それに、なんで最後を選んだ?」

 タクミが代表してユウキを問いただす。
 最初に声を上げたのは、晴海だが晴海ではユウキに勝てない事はわかっている。

「え?だって、最後の方がいいでしょ?」
「だから!なんで、だよ」
「だって、最後の方が、皆が歩いた後だし、おばけの位置もわかるよ?それに、仏舎利塔の手紙も自分たちの分だけだから探すのが簡単だよ?」
「え?」「は?」

「なんで皆最初に行きたがるかわからないよね。だって、先生たちも・・・あっおばけもまだ疲れていないから頑張っちゃうし、足跡も少ないから罠とか見分けられないし、大変なのにね。それに、手紙を探している間は1人だよ?その方が怖いのにね」

 ユウキが言った事は間違っていない。一点を除いては・・・。
 手紙を探すのは間違っていないが、最初から全員分の手紙が入っているわけではない。手紙が置いてある箱があってその中に毎回先生が入れているのだ。そのために、箱を見つける手間だけが”探す”という行為に該当している。

「ユウキ・・・。お前、サクラさんか、美和さんに聞いたな?」
「え?あっ・・。なんのこと?」

 タクミはすぐに理解した。
 ユウキが考えつく事じゃない。多分、ユウキの父親である森下桜が教えたのだろう。もしかしたら、美和かもしれないとも考えていた。

「ユウキ?」
「ママじゃないよ!」

 周りからため息が聞こえてくる。
 ユウキが自分から暴露したからだ。別に悪い事では無いのだが、皆の思いは同じで”だったら最初に相談しろ”だ。

 タクミたちは、時間が来るまで部屋で待機する事になっている。次は夕飯作りだが、もう少し時間が必要なのだ。
 肝試しの時に、手紙を受け渡す順番は事前に決めているので、もうする事が無いからなのだが、タクミたちはユウキに説教をするという新しくできたミッションをこなしている。夕飯作りが開始されるまでの時間を有意義に使う事ができた。

 涙目になりながら、タクミに助けを求めるユウキ。
「タクミ・・・」
「わかった。わかった。唯も鳴海も晴海も、もういいだろう?」

 ユウキが、タクミのシャツの裾を握って離さない状況を見てやりすぎたと思った3人はユウキに謝罪して、ユウキも3人に謝罪して順番に関しての話は終わった。

 外が騒がしい。
 いくつかの班が宝箱を見つけてきたようだ。一番だと思っていたら、すでに一番が居た事が解って騒いでいるのだ。その声を聞いて、なんとなく解ってしまったタクミたちは部屋から出ない事を決めた。
 ”ずる”した、”先生が教えた”と騒いでいるが、順番を聞いて、最初が空いている事が解って納得したようだ。

 夕飯は、班ごとで作って食べる事になっている。
 それもあって、皆なるべく早く宝箱を見つけたかったのだ。

「うちの班には、タクミと晴海が居るから大丈夫!」
「ユウキ・・・。それ言っていて恥ずかしくないか?」
「え?なんで、できる奴に任せるのが一番って、パパも克己パパも言っていたよ?」
「あのダメ大人は・・・。しょうがない。晴海。手伝ってもらうぞ」
「うん。それはいいけど何を作るの?」

「そうだな、カレーは昨日食べたからな。材料を見てからだな」

 これが、皆が先を急いだ理由の一つだ。
 確かに、肝試しの順番は重要だけど、米と決められた野菜や肉以外は、早いもの勝ちになっている。
 先生が調整はするが、それほど多くの食材が有るわけではないし、小学生が使えるような物は多くは残されない。

「先生。食材はこれだけですか?」
「あっそうだよ。タクミくんたちの班は何を作るの?」

 こうして、先生方は来た生徒と話をしながら、食材を渡していくのだ。
 分配される食材を晴海が受け取ってきて中身をタクミが確認した。

(うーん。2日連続でカレーを作らせるつもりなのだろう。間違いは無いし、失敗も少ないだろう)

 タクミは渡された野菜や肉から判断した。
 先生たちの狙いは間違いなくカレーだったのだが、味の変化はできるように工夫はしてある。
 市販のカレーの素も用意されている。

「先生。肉ですが、豚の細切れはありませんか?」
「ありますよ」
「それをください。そのかわり、この牛肉はいりません」
「え?」
「ですので、豚肉とあとできれば鶏肉と卵をください」
「あっわかったわ」
「そうですね。あと、鰹節はありますか?」
「えぇぇ・・・ちょっとまってね(何を作るつもりなの?先輩が言っていたとおりに、タクミくんは要注意人物?)」

 食材の所にいた先生は、別の先生にヘルプを求める為に一度その場を離れる。
 本来なら、感のいい子は材料を見て、カレーに行き着く。そこで、カレールーを選ぶ事になる。ちょっといい物高級品から一般的な物まで用意されている。
 普通の生徒は、材料を渡されてもピンとこなくて、先生からヒントをもらってカレーに誘導される。

 タクミは、その斜め上の事をいいだした。
 用意した問答集には無い事を言われたので、先生が慌ててヘルプを呼びに行ったのだ。

「タクミ。何を作るつもりだ」
「うーん。2日連続でカレーはイヤだろう?」
「あぁ」
「多分、先生方は違う物を作る為の食材や調味料を持ってきているはずだ。他にも、酒のツマミとか有ると思うぞ?それを奪う!」
「お前な・・・。でも、楽しそうだな」
「あぁ見ていろよ」

 先生が戻ってきた。
 タクミたちの担任を連れて戻ってきた。

「あっ先生!」
「先生じゃ無いわよ。タクミくん。無茶は言わないでよ」
「無茶ですか?」
「無茶です」
「ふぅー。わかりました。それでは、要求を一度に言います」
「え?まだあるの?」
「えぇ先生方が隠している物を全部と思いましたが止めておきます」
「・・・」
「ケチャップと酢と砂糖と塩と胡椒。あと、牛乳をください」
「・・・。はぁ・・・。どのくらい?」

 タクミは分量を先生に頼んだ。
 先生が用意してくれた物を受け取って戻ろうとした。

「何を作るの?」
「秘密です。さすがに2日連続でカレーでは飽きます」

 タクミと晴海はもらった食材を持って、ユウキたちが待っている場所に向った。
 調理場所も早い者勝ちになっているので、ユウキがタクミから頼まれた場所をしっかりとキープしていた。狭いけど冷蔵庫が有る場所を確保している。

 タクミは、晴海に料理の指示を出しながら単純な作業を女子たちに頼むことにした。

「タクミ。まだ?」
「まだ。もう少し攪拌していてくれ」

「タクミくん。こんな感じでいい?」
「十分だ」

「タクミくん。味噌の味付けはこんな感じ?」
「ユウキに見てもらってくれ」
「わかった」

「タクミ。米が炊けたぞ」
「ありがとう。ボウルに入れて冷ましておいてくれ」
「わかった」
「あっ。あら熱が取れたら、冷蔵庫で冷やしておいてくれ」
「了解」

 タクミたちが作っていたのは簡単な料理だが、他の者たちから見たら未知の物に見えたかもしれない。
 途中までは、カレーを作るのと変わらないが、なぜか最初に肉と野菜を炒める時に使ったのはシーチキンの油だったりする。

 味噌で味付けされた豚汁が一品目。
 処理された鶏肉を甘辛く仕立てた物が二品目。
 ソテーに使った鶏肉の油部分や細かい肉をと冷えたご飯を手際よく炒めてケチャップで味付けしたケチャップライスを作った。それを薄焼き卵で包んだ物を作ったのが3品目。
 卵と牛乳で作ったプリンが四品目。カラメルまでは作れなかったが十分デザートになりえる。

 シーチキンと鰹節で簡単なふりかけもどきも作ってある。

 他に、りんごとみかんを潰した物を牛乳に加えて、凍らせたデザートも作った。

 タクミの異常さだけが目立った食事となってしまった。

 ユウキたちは周りからの羨望と嫉妬の視線を感じながら一風変わった夕飯を楽しんだ。
 デザートを食べる頃には、周りからブーイングまで上がっていた。

2020/03/30

【第二章 キャンプ】第二話 二日目

「ねぇユウキ?」
「なに?」

 班ごとに部屋に入っている。
 もう、夕ご飯も食べて、夜のリクリエーションも終わって、各班に割り当てられている部屋の一室だ。

 9時を少し回った位の時間だが、朝早い時間に集合して、慣れない山歩き。疲れて寝てしまう子が出ても不思議ではない。

 この部屋に居るタクミ。ユウキ。唯。鳴海。晴海の5名も疲れて寝てしまっている者も居る。起きているのは、元気いっぱいなユウキと慣れない場所で寝られない唯だ。

「ユウキのパパとママは、私のパパと同級生だよね?」
「うん。タクミの克己パパも同級生だよ?なんで?」

 唯は3月生まれで、同級生の中でも幼く見られている。
 ユウキから見たら、唯は同級生というよりも近所の妹という感じがしている。

「あのね。ママからね。タクミくんとユウキと一緒に居るように言われたの?」
「そうなの?」
「うん。パパもユウキと必ず一緒に居ろって言っていたよ」
「へぇそうなの?なんでかな?」
「うーん。パパがね。マホやナユタが絡んでいるのなら、カツミとサクラの子供なら安心できるって言っていたよ」
「へぇ今度、パパか克己パパに聞いてみるよ」
「うん!」

”うぅーん”

 晴海が寝返りをした時。声が少しだけ漏れ聞こえた。
 二人は、それを合図にして、話を止めて目をつぶる事にした。

「(パパとママも、タクミから離れるなと言っていたけど・・・なんでかな?)」

 明日は、肝試しがある。
 ユウキは、タクミが一緒なので、それほど怖くはならないと思っている。唯は、ユウキとタクミが一緒なので言うほど怖いとは思っていない。

 翌朝は、7時に起床して、全員で食事を摂ってから、オリエンテーションを行う事になっている。
 先生方が隠した宝物を班で見つけるという物だ。

 8班あり、宝物も8個用意している。
 班別にヒントも違うので、必ず一個ずつは宝物を見つける事ができるのだ。

 そして、宝物を見つけた順番に、肝試しの順番を選べる事になっている。

 この仕組を先生に提案したのは、当時4年生だった安城あんじょう幸宏ゆきひろ井原いはら聡子さとこなのだ。それから、先生方も楽なので、伝統という名前で引き継ぎが行われている。
 サクラたちがキャンプを行った時代は、地域は3つに割れていた。海の近くに住む者たち、新興住宅地に住む者たち、山に住む者たちだ。海の者たちは、どうでもいいと思っていた事だったが、山の者と新興住宅の者が親を巻き込んだ騒動に発展していた。
 そのために、子供同士も喧嘩まではしていないが、それとなく距離ができる状態になっていた。そのために、肝試しの順番を決めるのも喧々諤々の状態でなかなか決まらなかった。
 そこで、サクラとシンイチとカツミ悪知恵が働く悪ガキが考えて、当時委員長だった安城あんじょう幸宏ゆきひろ井原いはら聡子さとこに先生に進言させたのだ。この方法なら、先生方が調整する事なく自主的に順番が決められる。そして、宝物を探すというオリエンテーションが一つ行える事になる。

 朝食は、先生方が用意した朝食ですます事になっている。
 班ごとに決められた数のパンやおにぎりが配られるので、あとは班ごとで調整しなさいという事だ。これもいつの間にか始まった伝統だ。学校行事なら、給食センターや地域の協力を得られるのだが、自主参加のイベントなので、先生方が準備をしなければならない。そのために、面倒になった先生がスーパーでまとめて買ってきて、適当に配ったのが最初だと言われている。
 できるだけ同じ種類のパンを用意するのだが、好き嫌いが有る。他にも、食べられない物が有ったりするので、パンだけではなくおにぎりが含まれるようになった。あとは、個々人が持ってきた物も朝食では食べていいことになっている。

 10時から宝探しが行われる。
 宝探しのルールは至ってシンプルだ。先生が隠した宝箱を見つけるだけ、最初に配られたヒントを手がかりに、2時間かけて宝箱を探すのだ。
 見つからない事も考慮されて、最後の30分になっても見つからない場合には、先生が一緒に探しながらヒントをだす事になっている。

「ユウキ!タクミ!ヒントもらってきた」

 晴海が先生の所からヒントを選んでもらってきた。
 宝物はランダムになっている。ヒントは全部で4つあって、最初のヒントをもらってから、20分以降に先生から次のヒントが渡される。更に20分後に3つ目のヒントがもらえて、1時間が経過したら4つ目のヒントがもらえる。

 ほとんどの班が3つ目のヒントを貰った辺りで宝物に近づく事ができる。
 1時間前後で宝物が発見できる。

 晴海が選んで持ってきた紙には次のようなヒントが書かれていた。

”多くの花が集まっている場所に有る”

 鳴海が、晴海からヒントをひったくって中身を確認した。
 それを、タクミに渡してきた。

「タクミ。何かわかる?」

 タクミは、少し考えたが、少し範囲が広すぎると考えて首を横にふる。

「わかった!」

 横から覗いたユウキが大きな声を上げる。

「ユウキ。判ったの?!」
「うん。だって、花が沢山ある場所は、花壇だよ!間違いない!」

 ユウキに問いかけた唯を筆頭に皆が微妙な顔をする。

「ユウキ・・・。あのね。キャンプ場に花壇は無いよ?小学校まで戻るの?」
「え?嘘?タクミ。花壇あるよね?」
「ユウキ・・・探してみればわかるけど、花壇は無いよ。そもそも、誰も管理していないと思うから、”多くの花が集まっている”には当てはまらないよ」
「うぅぅぅ。おかしいな。それじゃどこ?早くしないと・・・。順番がぁ・・・」

 タクミは大きく息を吐き出した。

「ユウキ。慌てなくてもいいよ。それに、順番は、早く見つけた班から決める事ができるだけで、最後だから、最初ってわけじゃないから大丈夫だよ」
「わかっているよ。わかっているけど、嫌なの!負けるのが”い・や・な・の!”」

 なんとも理不尽な事をいい出したユウキを唯に任せて、タクミは晴海とヒントを見つめている。

 なんとも言えないヒントだが、花が沢山あるという表現から、花壇や花畑をイメージするが、桜の木の下とか、梅の木の下とかも条件としては一致する。
 表現を変えれば、”沢山の花を付けた木の下”という事が言えるのではないか?

 タクミと晴海はそう考えたが、今度は別の問題が立ちはだかる。

「なぁ僕もそれで間違っていないと思うけど、それだけ探す範囲が広くないか?」
「そうだよな。山頂に続く道には桜の木が植えられているし、キャンプ場には梅と牡丹だろう」
「入り口には躑躅もあったぞ」

 タクミと晴海は考え込んでしまった。

 別にこれはタクミたちが劣っているわけではない。
 他の班が引いたヒントも同じような物なのだ。先生方も知恵を絞っている。最初のヒントでは絞るのは難しいようになっている。2つ目のヒントは授業で教えた事が思い出せれば、答えにたどり着けるようになっている。
 3つ目のヒントは具体的な場所が書かれていて、4つ目は地図が入っているようになっている。

「ハルちゃん」「僕は、男だ!”ちゃん”はやめろ!」

 晴海はユウキの問いかけに食い気味に反論した。

「はい。はい。それで、ハルちゃん」

 ユウキは、改める気が無いことがわかる返事をする。

「はぁ・・・それで?なに?」

 晴海も、ユウキと付き合いが長い。ユウキの性格も把握出来ている。

「うん。ツツジでもいいのなら、紫陽花でも同じだよね?」
「!!」

 ユウキに指摘されて、タクミと晴海は何かを感じたようだ。

 確かに、ツツジは沢山の花を付けるが、”多くの花が集まって”と言われると違うような気がする。

「紫陽花か!」
「紫陽花だな!」
「え?え?」

「ユウキ!紫陽花なんてどこで見た?俺は見てないぞ?」
「うん。なんだっけ?あの・・・あ!!仏舎利塔の掃除をしている時に見かけたよ?」
「花が咲いていなくてよくわかったな」
「うん。沙菜ママが教えてくれたから覚えていた」
「母さんが?」
「うん。パパと克己パパとママと友達の思い出の花だって教えてくれたよ」
「・・・。そうか・・・」

 タクミは、その話を聞いた事がなかった。
 ユウキが知っていたのに少しだけ複雑な気持ちになっていた。嫉妬と呼ぶには小さな気持ちだ。

「ねぇでも、紫陽花は、大きな花だよね?確かにいっぱい咲くけど、ツツジの方が花は多くない?」
「唯。違う。紫陽花は、小さい花が沢山集まって、大きな花に見えているだけだ・・・。だよな?」

 晴海は少し自信がなくなって、タクミや鳴海の方を向いた。
 うなずいてくれたので間違いではないと思う事にしたようだ。

”20分経過”

 キャンプ場から放送が聞こえてくる。
 話し合っている間に、20分が経過してしまったようだ。

「どうする?」
「え?なに?」

 タクミの問いかけに、ユウキが答えるが、唯も晴海も鳴海も同じで、タクミが何を言っているのかわからないようだ。

「20分経ったから、次のヒントがもらえるけどどうする?」
「紫陽花の所を見てから、違ったら次のヒントを貰おうよ!」

 ユウキの提案が採用された。
 そして、ユウキが見たという紫陽花の所に急いだ。
 紫陽花の根本に、宝箱を発見した。タクミたちは、先生の所に戻って宝箱を渡すのであった。

 ユウキが望んだ通りに、一番になれた事で、タクミは少しだけ喜んだのだった。

 ユウキは、先生に宝箱を渡しながら、叫んだ。
「先生!先生!ユウキね!肝試しは、最後がいい!」

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2020/03/30

【第二章 キャンプ】第一話 お泊まり会

「桜!」
「なんだよ」

 そこは、篠崎家のリビングだ。
 森下桜は、悪友で隣に住む篠崎克己の家をたずねている。

 お互いは幼馴染だと言っていい関係だ。
 二人は、生まれ育った町に家を新築した。隣り合った土地が空いていた事や、とある事情で安く購入する事ができるなどのいくつかの偶然が重なった結果だ。二人とも、実家は別にある。実際には、篠崎克己には実家と呼べる物は無い。両親や親戚は、全て他界してしまっている。篠崎克己には、妻の沙菜と息子の巧が居るだけだ。
 森下桜には、母親は存命だが隣町に引っ越してしまっている。

 篠崎克己は、IT企業を経営している。開発だけではなく、運用や導入支援を行っている。元々、大手ベンダーに努めていたのだが、こちらも事情が合って辞めて地元に戻ってきた。名前で仕事が取れる人物だったので、ベンダー絡みの案件だけではなく、いろいろな仕事が舞い込んできている。

 風変わりな二人だが、気があったのは間違いない。
 結婚した時期も同じで子供も同い年になっている。

 今年、子供たちは小学四年生になる10歳だ。

「お泊まり会は行かせるよな?」
「ん?あぁそうだな。タクミは?」

「”行く”と言っている」
「そうか、ユウキと同じ班だよな?」
「そう聞いている」
「そうか、それじゃ問題はないな」

 二人の両親は、お互いの子供が同じ班に入っている事は知っている。以前・・・。桜と克己が子供の時に参加したお泊まり会では、男女6人が班となってテントで寝泊まりしたのだが、いろいろ問題が発生したり、新しく住民になった者たちから反対が有ったり、世間的な事情もあり、今ではキャンプ場に建つロッジを使った2泊3日のお泊まり会に変更されている。

 あんな事件があった後で中止の声も多数上がったが、学校や地元衆が自由参加だから、気に入らなければ参加しなければいいと言って、反対派の意見を封殺した。二人は、どちらでもいいと考えていた。二人の子供が心配ではないのかといわれると微妙なところだろうが、何があっても大丈夫と言えるくらいには信頼をしている。それに、二人は”須賀谷真帆”や”那由多”が本当に絡んでいたとしたら、自分たちの子供に”なにか”するはずがないと思っている。そのくらいの信頼関係はできていると思っている。問題は、自分たちの子供が特に、好奇心が旺盛だということだが、それはどうにもならない事だと諦めるしか無い。

「それで、桜。進展は?」
「さぁな。俺は外されていると言っただろう?」
「それでも、俺たちよりは情報を持っているだろう?沙菜も美和も聞きたいだろう?」

 聞き耳を立てているお互いの妻の名前をあえて出す事で、桜の逃げ道を塞ぐのだった。

 桜は大きなため息を付いてから
「何も解っていない」
「え?」

 一番に反応したのは、桜の妻の美和だ。

「なんだよ。多分、マスコミに近い。美和の方が情報を知っていると思うぞ?」
「そうなの?」
「あぁ結局、解っているのはあの場所で人が死んだことだけだ」

 克己が気になっている事を桜に聞いた。
「なぁ桜。それで那由太は?」
「あぁ・・・。捜査本部は、居場所を掴んでいるようだけど、俺には知らされていない。解っているのは、那由太は今回の件には全く無関係だという事だ」
「そうか、会えないのは残念だけど、関係ない事がわかっただけでも十分だな」
「あぁそうだな。元気らしいぞ」
「そうか・・・」

 二人の間に微妙な空気が流れる。
 心配しているのは間違いないが、事情が解っているだけに、克己も桜に無理を言う事はできない。桜も、克己が何を望んでいるのか解っているのだが、自分から言い出す事はできない。

「ねぇ克己さんも、桜さんも、美和さんも・・・。今は、タクミとユウキちゃんの事よね?」

 沙菜は、4人の中で1人だけ、年齢が離れている。
 そして、1人だけ生まれが違うのだ。地元で生まれ育ったわけではなく、克己が都会に出ていた時に知り合ったのだ。美和からある程度の事情を聞いているので、疎外を感じる事は少ないのだが、それでもやはり3人の中に流れる空気が羨ましく思う事は多い。

「う・・ん。大丈夫だろう?」
「克己さんがそういうのなら信じるけど・・・」
「沙菜さん。大丈夫だと思いますよ。今年から、校長がシマちゃんだから、いじめのような事は絶対に許さないと思うからね」
「うん。わかった。それじゃ準備をしないとね」
「沙菜さん。タクミの荷物の中に、ユウキの着替えを数着入れてほしいけどいいかな?」
「いいですよ?あっそうね。その方がいいね。タクミには言っておくよ」
「ありがとう。でも、大丈夫だとは思うけど、ユウキだからね」
「わかった」

 ユウキには少し困った癖がある。
 困っている人を見ると助けたくなってしまう。その結果自分が困る結果になっても、構わず手を差し伸べてしまうのだ。
 以前、友達の家にお泊まり会をしたときに、”おねしょ”をした友達に自分の着替えを渡して、自分は下着を履かないで帰ってきた事がある。

 それから、タクミにユウキの着替えを持たせる事にしているのだ。

 二人の妻は、お互いの子供が持っていく荷物の準備を始めるのだった。
 桜と克己は、今解っている情報から何が読み取れるのかを検討するのだが、何もわからないという結論に達するまで時間はかからなかった。

「え?シマちゃん?校長先生?」
「桜・・・。その呼び方はやめろと何度言えばいい?」
「あっそうですね。すみません。
「はぁ・・・まぁいい。それよりも、タクミくんとユウキちゃんの準備は?」
「終わっていますよ。おい。美和。沙菜さん。シマちゃんが、迎えに来たぞ!」

 奥から、少し待ってと返事が来た。

「ふぅ・・。お前のところは相変わらずだな」
「シマちゃん・・・。俺たちは、あの時から何もわかりませんよ」
「そうだな」
「あのバカが出てくるまで、ここで待っていますよ」
「そうか・・・」

 タクミとユウキの小学校の校長は、桜と克己と美和の中学校時代の担任教諭なのだ。
 それが回り回って校長をやっている。いろいろ問題がある学校なので、問題解決に尽力した長嶋教諭に白羽の矢が立ったのだ。

 長嶋教諭も、自分が何もできなかった事を悔やんでいて、自分でも何かができるかもしれないと思って、校長を引き受けたのだ。

「あ!校長先生!」

 準備が整った、ユウキが家から出てきた。
 後ろから、タクミも出てきた。タクミの荷物が大きいのは、ユウキの着替えやらが入っているためだろう。

「パパ!克己パパ!行ってきます!」
「おぉ気をつけろよ」「あぁタクミ。ユウキを頼むな」

「うん。行ってきます」

 小学4年とは思えないタクミの返事は別にして、二人は校長に連れられて、他の生徒と合流するのだった。

 お泊まり会は任意での参加が建前で、学校の行事ではない。
 そのために、ボランティアで先生が参加する事になっている。
 校長は、事情があってお泊まり会には参加できない。そのかわり、全員を学校に送り届けるようにしているのだ。

「行ったな」
「あぁ」

 桜と克己は、二人の息子と娘が乗ったバスが角を曲がっていくのを見送るのだった。

「あぁ!ゆい
「おはよう!ユウキ!」

 ユウキは、バスの中に同じ班の女の子を見つけて声をかけた。

 班は6人ですでに決まっている。
 お泊まり会の案内に書かれている。タクミとユウキと唯は同じ班になっている。

「あのね。ユウキ。マユちゃんが来られないって聞いた?」
「ううん。初めて聞いた。タクミは知っていた?」

 タクミは急にふられて困惑しながらも知らなかったと答えた。

 学校に到着して、バスを降りる3人に駆け寄ってきたのは、一緒の班になっている二人だ。

「おはよう。ユウキ。唯。タクミくん」

 双子の女の子である。鳴海が挨拶してきた。

「おはよう。ハルちゃんは?」
「ユウキ。何度言えば間違いを訂正する!ボクは、男だから、”ちゃん”はやめろ」

「おはよう。晴海はるみ鳴海なるみ。早いな」
「うん。父さんに送ってもらった」

 タクミと晴海は、挨拶をする。
 二卵性双生児である、晴海と鳴海は双子だが性格はかなり違っている。元々は、違う班だった晴海と鳴海だが、ユウキと鳴海が先生に掛け合う事で、同じ班にしてもらったのだ。1人入っていた子は、それほど中がいい子ではなく、その子も別の班が良かったと言っていた。学校行事ではないので、この辺りはゆるくなっている。
 お泊まり会の部屋割りや作業の都合上、6人で班を作る事になっている。

 学校から、キャンプ場までは歩いての移動となる。
 10歳の男女と先生での移動となる。キャンプ場は、山の頂上付近にあるが、700mちょっとの山なので、登るのにもそれほど苦労しない。
 登山道も整備されていて、キャンプ場は比較的安全に移動する事ができる。

 朝方に学校を出発して、山道を歩く事3時間。
 目的地に到着した一行は、予定通り持ってきた弁当を食べてから、班ごとに活動を開始する事になる。

 タクミとユウキは、晴海と鳴海と唯と一緒に明日の晩に行われる肝試しの準備をする事になっている。
 準備と言っても、大抵の準備は先生が行っているので、タクミたちの作業は肝試しのときに歩く道の掃除をするくらいだ。

 肝試しは、キャンプ場で先生の話を聞いてから、班ごとに近くにある仏舎利塔とまで歩いていって、そこで先生を交えた手紙の交換をして、帰ってくるという至ってシンプルな物だ。これは、親の世代から変わらない。

 この地方にだけ見られる現象なのかわからないが仏舎利塔が星型になっている。その頂点になっている場所に手紙が置けるようになっている。先生が一度手紙を預かって、仏舎利塔の所定の位置に手紙を置く。
 皆が所定の位置についた事を確認した先生が、声をかけて、手紙を持って次の人に手渡す事になる。一周ぐるっと回って、皆が手紙を受け取ったら、成功となる。手紙は、誰宛でもいいのだが、順番は班で先に決めて先生にお願いしておく事になっている。

 どこが肝試しになるのかと言うと微妙だが、先生の怖い話を聞いた後で懐中電灯一つだけ持って街灯が無い場所を歩く事は十分な恐怖心を掻き立てられる。それだけではなく、聞いた事が無い虫や動物の声が聞こえてきて案外怖い。
 それだけではなく、仏舎利塔では1人になって皆が一周するのを待たなければならない。懐中電灯があるとは言え心細いのは間違いない。
 歩き慣れた道ではない場所で、声は聞こえるかもしれないけど、普段と違った感じで聞こえる友達の声。
 早い子たちでも、一周するのに、10分くらいはかかってしまう。

 タクミたちは、仏舎利塔までの道に落ちているゴミを拾っている。

「先生!草は切らなくていいの?」

 ユウキが、先生に質問をしている。
 道幅は、それほど広くはないが、通れないほどではない。邪魔になりそうな草はすでに先生たちが刈ってある。

「大丈夫。大きな石やゴミを拾って」
「はぁーい」

 他のゴミ拾いをしている子たちも一斉に答えるのだった。

 一日目の夜は、キャンプ場でみんなで作ったカレーを食べて終わるのだった。

2020/03/30

【第一章 過去】第三話 忍び寄る影

『きゃぁぁぁぁ!!!!』

 どこからか悲鳴が聞こえる。

 鈴と菜摘も悲鳴の方を見ると、前面に備え付けられていたスクリーンが降りてくる。

 スクリーンに何かが投影され始めたのだ。
 最初は、最近死去した者たちの写真が流れた。

 その後、鈴と菜摘も会場で見かけた者たちの名前が流れるように表示される。

「(山中と古谷?)」

 鈴は後ろの席に座っていた二人の名前を見つけて、気になって後ろを振り向いた。

 鈴と菜摘のテーブルは中央の最前列になっている。
 横には、今は静かになっているが、騒がしかった立花たちが座っている。

 確か、山中と古谷は後ろのテーブルに居たと記憶していた。

「(菜摘・・・。後ろ・・・)」
「(どうし・・・た・・・。え?なんで?)」

 鈴に言われて、後ろを振り向いた菜摘も、後ろに山中と古谷が座っていたのを記憶していた。
 しかし、二人が見たのは誰も居ないテーブルだけだ。

 そして、テーブルの蝋燭も消えている状態だ。

 いくつかのテーブルで同じ状況になっているようだ。

「(菜摘・・・。前・・・。見て・・・)」

 菜摘は、鈴に言われて前にあるスクリーンに映し出された情報を見た。
 文字としては認識できる。そこまでは耄碌していない。日本語で難しい言葉ではない。

 しかし、文字として認識できることと、内容を理解することがイコールで結びつかない。

 他の同級生や先生方も同じだ。

 誰も声を出さない。”出ない”のではない、”出ない”状況なのかもしれない。鈴と菜摘は、流れる文章を目で追っている。
 26年前から25年前に渡って行われたことが、”須賀谷真帆”の日記のように書かれている。

”4月25日 古谷さんから呼び出された。呼び出し場所で、後ろから殴られた”

 事情が細かく書かれている。
 そして、皆の目を奪っていたのは、その日の日記の終わりの部分だ。

”罪状:監禁と傷害”
”判決:死刑”

 この同窓会の主催となっている川島も”死刑”とされていたことだ。名前が挙げられた者や、罪状有りと書かれた同級生の家族や関係者も存在している。
 そして、数ヶ月の間に死亡した全員が”死刑判決”を言い渡されている。

「(真帆が?なんで?)」

 鈴が不思議に思うのも当然だ。同級生や家族・関係者の葬儀に参列しても”殺された”や”殺人”ということは聞かされていない。本当の事件だったりしたら、警察が来ているだろうし、そんな気配はなかった。皆が、最近事故死や病死が多いな・・・。と、思う位で終わっている。

 そして、真帆が復讐をするにしても、姿を見せて行うのでは無いかと考えたのだ。

 今日、この場に居た者も”死刑判決”を受けている。

 鈴が覚えている、真帆が行方不明になる前日の日記が表示された。

”8月22日 立花くん。西沢さん。日野さんから一緒に来いと言われた。私は、ここで行方不明になる”
”罪状:不明”
”判決:保留”
”事由:証拠が不十分”

 皆が凍りついたかのように前を見つめている。
 言葉を発するどころか、座った椅子から立ち上がろうともしない。動きが阻害されているわけではないのに、なぜか全員が動かないのだ。

 突然、全ての電灯が光りを灯した。
 暗い状態から、いきなり明るくなった。正面からは強い光が皆に照射されているようで、全員が眩しくて目を開けていられない。

 光りが徐々に弱まってきて、皆が目を開ける。

「(え?)」
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 鈴と菜摘は、正面で見てしまった。

 先程までスライドが流れていた場所に、明日から首の重さに耐える必要がなくなった、14体の胴体が椅子に座っていた。

 そして、座った状態で、膝の上で首を持っている。

 ただし、自分の首では無いようだ。
 どういう理屈になっているのかわからないが、他の人の首を大事そうに抱えている。

 不思議なのが誰も血を流していない事と、顔が皆笑っている状態になっている事だ。
 その笑顔と状態のギャップが皆に恐怖心を受け付けていた。

 悲鳴がだんだんと小さくなる。恐怖が突きつけると、人は冷静を取り戻すのかもしれない。それが勘違いだとしても、会場に静寂が訪れた。
 徐々に、誰も喋らなくなってしまった。ただ、前面に並んでいる14のさっきまで動いていたであろう死体を見つめている。

 菜摘が数えた出席者は、210名と6名。
 アナウンスされた出席者は、197名と教師5名。

 今、首を抱えている者は、先程のスライドで”死刑判決”が出ている者たちだ。

「警察を呼べ!!犯人は、この中に居る!」

 誰が叫んだのかわからないが、警察が到着するまでの時間の事は、出席者全員が同じ供述をしている。しかし、”警察を呼べ”と言われる前の記憶が曖昧になってしまっているのだ。酷い者は、朝からの記憶が混濁してしまって、矛盾だらけの供述をした者も居る。

 鈴は比較的記憶がはっきりしていた。
 自分がボイスレコーダーで録音していたのを思い出した。警察に求められて最初から録音状態になっていたボイスレコーダーを提出した。
 警察立会いで、ボイスレコーダーの内容を確認した。不思議な事に、鈴と菜摘の会話や周りの話し声は録音されていたが、主催や”須賀谷真帆”の日記を読み上げる声は録音されていなかった。

— 県警の資料課

「森下さん」
「なんだよ・・・。あぁその事件は、俺は担当から外されたぞ?」
「え?」
「当然だろう。俺の同級生の那由太が絡んでいると思われて、、知っている奴も多いし娘の同級生の母親や父親も被害者や参加者に居るからな」
「そうなのですか?」
「あぁあの問題が多い。同級生だからな」

 森下もりしたと呼ばれた刑事は、準キャリアなのだが性格や普段の言動が問題視され閑職に回されている。
 今は、地元の地方都市で資料課の課長やっている。地元では顔が利くために、他所から来た署長や他の課長から案内を依頼される事が多い。森下の欠点なのか美点なのか功績を欲しがらない所がある。自分がやりたかった事はもう終わったと言って出世を望むような事もない。署長や他の課長は、その事を知っている為に、森下をいいように使う事が多い。

 資料課は、過去の事件の資料を整理して分析するのだが、奇怪な事件を担当して、解決に導いている。森下班と呼ばれるまでに実績を残している。
 そのため、今回の事件も当初は森下班に回される事に上層部は決めたのだが、初動捜査に当たった所轄から被害者や状況が伝えられて、森下班は捜査から外される事になった。

「須賀谷那由太さんでしたか?」
「そうだ・・・。なんだ、捜査本部にでも聞いたのか?」
「森下さん。本当に、マスコミが嫌いなのですね?」
「ん?別に嫌いじゃないぞ?ただ、報道の自由とかいうわけのわからない権力を振りかざして、自分が安全な位置に居ることを確認してから、対岸の火事を煽っているゴミが嫌いなだけだ」
「それだけ言えれば、十分マスコミが嫌いだと思いますけどね。まぁいいです。もう連日報道の嵐ですよ。全国的なニュースになっていますよ」
「そりゃぁそうか・・・」
「えぇ関係者だけ考えても・・・。直接の被害者が14人。会場に居た人たちの話では、それだけではなさそうな雰囲気ですからね」
「あぁそれも、いじめていた奴やその家族が被害者なのだろう?」
「そうですよ。それで、いじめの被害者からの復讐だって騒がれていますからね」
「でも、真帆は行方不明なのだろう?」
「はい。それで、生存している事になっている兄の那由太が犯人ではないかと言われていますが、保護プログラムを利用して名前を変えて、都内で生活しているので、今回の件は一切関係ない事が解っていますし、マスコミも兄が居た事は報道していますが、そこまでですね」
「そうか・・・ネット上は?」
「特定班が動いているようですが、那由太さんの現在の名前や素性は特定できていないようですね」
「そうか、それなら良かった」
「森下さんは、知っているのですか?」
「ん?那由太の事か?知らない。もし、知っていたとしても言うと思うか?」
「思いません。上も、那由太さんは今回の件は関係ないと見ているようですよ」
「そうだろうな・・・。それで?」
「え?それだけですよ?」
「そうか・・・」

 森下は、それ以降黙ってしまった。
 部下が自分から離れていった事実に気が付かないほどに”何か”を考えていた。

「(なぁ安城。井原。俺は、どうしたらいい?)」

 森下は、服役している親友と言うべき男性と女性の事を考えた。
 そして、”いじめ”と嫉妬で行方不明になって殺されてしまった初恋の相手に問いかけている。勿論、返事などはない。

「(あの街は・・・違うな。いびつな状態になってしまっているのだろう。俺たちの責任かもしれない・・・)」

 警察は、必死に捜査を行っているのだが、証拠らしい証拠が見つからない。
 容疑者と思われていた、須賀谷那由太は一切関係ない事や当日のアリバイも確認されている。

 殺害結果は解っているのだが、殺害方法が一切不明。
 殺害時間は、参加者の説明でおおよそつかめているが、正確な事は不明。

 それだけでも不思議なのに、あの会場の設備や設営を行った者がはっきりしないのだ。運営会社に問い合わせても、明確な答えが返ってこない。
 かなりの捜査員を動かして現場検証から聞き込みを行った。参加者で生き残った202名から聞き取りを行い、聞き取った内容の裏取りを行っただが、不思議な事に多くの者がなぜ参加したのかわからない状況なのだ。驚いた事に、ほとんどの同級生が最初は出席しないと考えていた、しかし急に予定がなくなったり、誰かに誘われて出席を決めたり、事情は異なるのだが最終的には参加を決めた。そして全員が最初から参加する予定だったかのように準備が行われていた。

 ”須賀谷真帆”からの招待状を受け取ったのは、死んだ14名と立花・山崎・三好・西沢・日野・金子と杉本だ。
 全員が、警察の求めに応じて招待状を提出した。驚いた事に、筆跡は”須賀谷真帆”の物で間違いない。

 まさに、行方不明者からの手紙だという事だ。
 ”須賀谷真帆”が生きていて、いじめた者たちに復讐したのではないかというストーリーも成り立つのだが、同窓会が開かれたビルの監視カメラを数日前から調べたが、不審な人物の出入りはなかった。
 捜査範囲を広げたのだが、”須賀谷真帆”を発見する事はできなかった。

 25年前に行方不明になっている少女を見つける事ができないまま捜査は暗礁に乗り上げる形となった。
 マスコミは連日にわたって好き勝手な事を並べ立てるが、結局何も新しい発見がないまま時間だけが経過する結果となった。

 そして、夏休み終盤。
 今年も真帆が行方不明になった、小学生4-6年生によるお泊りキャンプが開催される事になった。

2020/03/30

【第一章 過去】第二話 同窓会

 そこは、ビルの3階にある結婚式の二次会で使われることが多い広いスペースを持つ飲食店だ。
 同い年の男女が200名ほど集まっている。俗に言う”同窓会”が執り行われている。

 通常の同窓会では、会費を入り口で徴収するなどのことが行われるが、この同窓会では、受付に名簿があるだけで誰かが立っているわけではない。
 心配した数名が、会場の設営をしてくれた者たちに確認をしたら、すでに代金の支払いが終わっていることや、進行や設営の指示は貰っているということだ。

『同窓会にお越しの皆様』

 アナウンスが始まった。
 席が決められている様子だ。皆が、受付に置いてあった紙を手にとって、自分の名前が書かれている席に座る。

 異常な状態に気がついたのは数名だけのようだ。

「スズ」
「なに?菜摘?だよね?」

 名前を呼ばれたのは、九条くじょうすず。旧姓では、宮前みやまえ鈴という女性だ。
 名前を読んだのは、太田おおた菜摘なつみ。旧姓、吉村よしむら菜摘だ。

「うん。久しぶりだね。スズは変わらないわね」
「そうだね。葬儀には行っていたけど、子供がまだ小さいから・・・。私、変わったわよ。年をとったし、結婚して、名字も九条に変わったわよ。菜摘こそ変わらないわよ」
「ありがとう。でも、小学校から考えると、体重では10キロも増えているし、子供も産んだし、名字も大田に変わったわよ」

 二人とも。小学校のときのあどけなさはなくなっているが、あまり変わらない容姿を保っている、名前を言えば殆どの人間が解ることだろう。

「ねぇスズ。おかしいと思わない?」
「そうね。確か、幹事に名前が出ている、大島くんが死んだのは、2ヶ月近く前よね?」
「うん。それだけじゃなくてね。この席順・・・何か感じない?」
「え?」

 鈴は、そう言われて、自分たちのテーブルを見たが、自分のテーブルには菜摘の名札以外は存在しない。
 他のテーブルには、4-5人が座っているテーブルがある。テーブルは全部で、28卓ある。

「菜摘。これって・・・小学校のときの?」

 鈴にはそれしか答えが見つからない。
 小学校4年生に行われたキャンプの時にグループ分けに似ていると考えているのだが、事実グループ分けと殆ど同じなのだ。違うのは一点だけだった。

「でも、スズ。それなら・・・」
「そうね。真帆まほの・・ううん。なんでもない」

 二人は解っている。 
 須賀谷真帆が自分たちのグループだったのだが、西沢と日野に連れて行かれたことを・・・。そして、そのまま行方不明になったことを・・・。

 西沢と日野に真帆を連れて行くのを辞めさせなかった事を二人は今でも悔やんでいる。忘れたくても忘れることができない。特に、鈴は真帆の親友だと思っていた。
 大人になってからも、鈴は旦那のすすむを連れて、キャンプ場に訪れている。まだどこかに真帆が居るように思えてならないのだ。

 真帆が行方不明になったときに、他の者たちは立花や西沢や日野が怖くて、先生には言わなかった。
 しかし、二人だけは、担任だった杉本に、真帆を西沢と日野が肝試しのときに連れて行ったと正直に言った。その結果、二人はいじめを受けることになったのだが、3つ年上の後の旦那になる九条くじょう進や九条の友達だった真辺まなべ森下もりした篠崎しのざきらが対処することで”いじめ”は収束した。

 しかし、その為に鈴や菜摘の住んでいる町では、旧住民と新住民との間にできていた溝が深まったのも事実だ。

「誰だ!こんな手の込んだいたずらをしたのは!」

 立花が大声を上げながらテーブルを叩く。

 立花たちが座っているテーブルには座席が7つ用意されていた。
 立花/山崎/三好/西沢/日野/金子が同じグループだったのだが、7人ではない。

 その7人目の椅子の名札が、”須賀谷真帆”と書かれていたのだ。

「そうよ!誰?こんなことをしたのは?宮前さん?それとも、吉村さん!」

 急に名前を上がった二人に皆の視線が集中する。

「え?」
「なんのこと?」

 ”バチィン”

 会場の電気が消えた。

 耳障りな音が鳴っている。
 音がどこから聞こえたのか判断できる者は居ない。

 女性の悲鳴が聞こえてくるなか、物音がしても気がつく者は居ない。
 悲鳴が少しずつおさまっていく、別に火事が発生したり、自身が発生したりしたわけではない。突然電灯が消えて、耳障りな音がしただけだ。よく周りを見回してみれば、非常灯や案内灯は点灯している。

「電話がつながらないぞ!」
「出口も開かない!」

 ”お静かに願います。主催からの依頼が有りました演出です。席にお戻りください。席にお戻りください”

 会場内に、機械音と考えられるメッセージが流れる。
 パニックになりかけた同級生たちが一斉に静まり返る。辺りは、非常灯だけが頼りだ。数名は持っていたスマホを明かり代わりにし始めている。

 テーブルの上にあった、蝋燭に火が灯ったのはそんなときだ。
 電灯の明かりではなく、火のゆらぎは人の精神を安定させる効果があるのだろう。

 喧騒がおさまっていく。
 皆が火のゆらぎを見つめている。集団催眠にでもかかった状態だ。

 ”今、皆様は昔の班分けで座っていらっしゃいます”

「(やっぱり)」

 鈴と菜摘は、お互いの顔を見る。

 ”残念なことに、数名の方はご出席していただけなかったのですが、197名と5名の先生方にはご出席していただけました”

「(ねぇ菜摘。少しおかしくない?)」

 鈴は、今の放送に違和感を覚えた。

「(え?なにが?)」
「(だって、この同窓会は、任意だよね?それに、主催は・・・)」
「(うん?)」
「(ねぇ菜摘。招待状が届いたのはいつ?)」
「(3ヶ月位前だと思うよ?川島くんの事故の前だったから・・・)」

 川島という同級生が、この同窓会を主催したことになっている。

「(そうだよね?参加の返事は?)」
「(え?あ・・・そう言えば、不参加にして返信したけど、なんかわからないけど、予定が空いちゃって、参加することにした・・・けど?あれ?私・・・誰に連絡したのだろう?)」
「(それに、川島くん以外のメンバーも他界しているよね?)」

 主催は、川島の名前だが、連盟で実行委員会が作られていて、数名の同級生の名前が書かれていた。
 しかし、不思議な事に主催の川島だけではなく、実行委員会に名前が書かれていた全員が死亡してしまっているのだ。

「(あっうん)」
「(じゃぁなんで、今日出席しているのが、197名と5名の先生だって解るの?)」
「(・・・。それは、主催に頼まれた人が、数を確認したからじゃないの?)」
「(そうだといいのだけど・・・)」
「(え?なに?気になるよ?)」

 二人は、顔を寄せ合って小声で話している。
 他のテーブルでも同じように現状確認をしているのだろうか、話している内容はわからないが、何かを話している声が聞こえている。

「(ねぇスズ?)」
「(なに?)」
「(今ね。数を数えたのだけど・・・)」
「(うん?)」
「(先生は、6名で、同級生は210人だよ?)」
「(え?間違いない?)」
「(うーん。絶対とは言わないけど、200名は越えているよ?)」

 菜摘の指摘の通りなのだが、鈴としては数が違ったからと言って、現状が何か変わることではない。

 会場内に流れる声は、説明を続けているのだが何も頭に入ってこない。
 飲み物に関する注意事項や食べ物に関する注意事項が話されていることは解るが、なぜそんな話をするのかわからない状況だ。

 鈴は、会場に入る時に、何かのネタに使えるのではないかとボイスレコーダーで会場の雰囲気を録音している。なので、後で聞き返せばいい程度に考えていたのだ。会場に流れる声だけではなく、雰囲気が異様な状況になっているのを軽く無視したのだ。

 ”・・・。長々と説明いたしましたが、注意事項は是非お守りください。それでは、25年後の再会を記念して乾杯したいと思います”

 ”どうぞ、目の前のグラスをお持ちください”

「(え?)」「(なんで?)」

 鈴と菜摘だけではない。
 目を離したわけではない。暗闇に蝋燭の炎だけの明るさだったが、目の前のテーブルにグラスはなかった。
 グラスだけではない。食事も用意されている。いつの間に用意されたのか?

 グラスには、液体が満たされている。
 鈴も菜摘も匂いを嗅いでみるが不快ではない。むしろ美味しそうな匂いさえもしている。

 皆が蝋燭の灯りの中でグラスを手に持っている。

 ”それでは、乾杯プロージット!”

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2020/03/30

【第一章 過去】第一話 葬儀

 黒い服に、黒いネクタイをした男性が2人で話をしている。
 葬式に参列して、顔なじみに会って近況を話し合っているようにも見える。

「なぁ」
「なんだよ」
 
 しかし、二人はここ4ヶ月で、3回の葬式に参列して顔を会わせている。
 
「少し葬式が多くないか?」
「あぁ?そうか?こんな感じじゃないのか?」

 4回を少ないと考えることはできそうに無い。
 しかし、二人は多いと考える事ができなかった。

「おっ西沢!久しぶりだな」

 西沢と呼ばれた女性が立ち止まって二人を見る。

「なに?立花くんも山崎くんも来ていたのね」
「そりゃ来るよ。同級生の葬式だからな」
「二人が来るなんて珍しいわね」

 ここ4ヶ月で3回目の参加となるが、同級生だけで6人が死んでいる。同級生の関係者を含めるともっと多くなる。

「そういう。西沢も滅多に来ないよな?」
「え?全部参列したわよ?私が同級生だと思った人たちの葬儀には参列したのだし十分でしょ?」

 立花と呼ばれた男性と山崎と呼ばれた男性がお互いの顔や、自分たちが参列した葬儀を考えた。
 そして、二人はくぐもった笑い声を発した。

「たしかに、俺たちが参列しなきゃならない葬儀は3回だったな」
「そうでしょ?それよりも、立花くんも山崎くんも同窓会はどうするの?」

 3人の所にも、同窓会の案内は来ていた。
 この同窓会は、少しだけ問題がある。主催として名前が書かれていた人物が、事故で死んでしまっているのだ。

 しかし、代金はすでに支払われているために中止にする必要もない。
 それだけではなく、小学校時代はいろいろと問題が有ったのだが、立花としては同窓会に出て少し疎遠になっている、自分が考える同級生たちと話をしておきたかった。山崎と西沢も細かい理由は違うが、同級生たちと話をしたいのは同じだ。

「そうだな。俺は、出席しようと思っている」
「え?どうして?こういうのは、嫌いだと思っていたわよ」
「嫌いだけどな。親父が次の選挙の前に引退するからな」

 立花議員は、県議会から国政に移動して連続7期務めた。与党の中でも中堅派閥の取りまとめ役をやって、副大臣と大臣を務めた。その立花議員の地盤を受け継ぐのだ、いきなり国政選挙では勝ててもギリギリと推測されている。そのために、まずは県議会に出馬して実績を作ってから、父親が引退する時に、地盤を引き継いで国政に出ると宣言する予定なのだ。
 立花は、数名の同級生を陣営に加えたいと考えていた。山崎には、先程話をして了承の返事を貰っている。

「へぇーそうなの?それじゃ、その前に箔を付ける為に選挙に出るの?」
「あぁ再来月に予定されている県議会選挙に出る。そうだ、西沢。お前の旦那。IT会社の社長だったよな?」
「え?えぇそうよ」

 西沢は、急に旦那の事を聞かれて、驚いたのだが、社長夫人という肩書は虚栄心を満たすのには十分な役割を持っている。

「選挙のことで相談したいことがある」
「いいけど・・・」
「なんだよ?」
「IT関係なら、山崎くんの所でもできるわよね?」

 急に、話を振られた山崎は立花と西沢の顔を交互に見てからため息をついた。

「立花にも言ったけど、俺の所でもできるけど、畑違いだ。俺の所は、親父の会社に関係するソフトウェアを作っているだけだからな。情報収集は得意じゃない」

 山崎が”俺の所”と表現したのだが、彼の会社ではない。西沢が自分の旦那の会社と表現した為に、虚栄心を満たすために”俺の所”と表現したのだ。
 父親が社長を務めている企業の子会社であり、社長は別に居るのだ。山崎は、そのIT会社に専務として働いている。
 もっと正確に言えば、籍を置いてあるだけで実質的には何もやっていない。システムのことも一切わからないのだ。

 そして、山崎が断ったのは、できるかできないか判断できなかったこともあるが、立花という男の性格を理解しているからだ。
 問題が出てこなければいいのだが、少しでも立花の思っているのと違う方向に物事が動き出したら、間違いなく癇癪を起こす。周りにあたるだけならいいが、契約を無条件に破棄した上で賠償金を払えと平気で言ってくる。部下は奴隷で、取引相手は召使いとでも思っているように振る舞うのだ。
 そんな相手と仕事がしたいとは思えないでいたのだ。山崎にとって立花は利用できる知り合い以上ではないのだ。これは、立花も同じだ。だからこそ、自分の本丸には相手を近づかせないのだ。

「へぇそうなの?旦那の所なら、なんでもできるから、大丈夫だと思うわよ?」

 西沢は見栄でそう答えた。山崎ができないと言ったことを、自分の旦那が”できる”のは気分がいい。
 立花に近づく為にも好都合だ。西沢の夫が社長をしているIT会社は、公共事業に近い物を他の企業に回して利ザヤを稼いでいる、中間搾取会社なのだ。自社に技術者は居る。しかし、ほとんどが営業職で、肩書だけ”SE”を名乗っていたりする。実際には、システム構築ができるのか怪しい者も多く在籍している。

「それは助かる。山崎。俺は、ITのことがわからん。西沢のことは信頼できると思うが、誰か目端の利く奴を紹介してくれ」

 立花も馬鹿ではない。粗暴で、気分しだいで、暴力をいとわないが、馬鹿ではない。自分が得意としていることと、苦手としていることの区別はできる。できると自分で思っている。そして、騙されるのが一番キライなことなので、責任を転嫁できる相手を最初から用意しておくことにしたのだ。
 山崎も、西沢も、立花の言っていることは解るが気持ちがいいことではない。

 3人の間に微妙な沈黙の時間が流れる。

「お!お前たち!」
「「「え?杉本(先生)?」」」

 誰が、先生の呼称を付けたのか説明する必要が無いだろう。
 3人に声をかけたのは、間違いなく小学校の担任だった。杉本先生である。キャンプ中に少女が行方不明となるがあり、責任を取って一時的に休職扱いになっていたのだが、数年後に他県で復帰して去年から問題が起きた小学校で副校長を務めている。
 これだけ聞くと、立派な教育者に見えるのだが、コネをフルに使って問題を矮小化して報告して処分を免れていた。実際に、担当していた生徒が1人行方不明になっている。それもいじめられていた生徒だ。いじめていた者たちの親が社会的な地位があり、恩を売る形でいじめの事実を隠蔽したのが、杉本教諭だったのだ。

「君たちに聞きたいことがあって探していました」
「俺たち?」「私?」

「そうです。立花くんと山崎くんと西沢さんと、あと1人は・・・。確か・・・日野さんだったと思うのですが・・・。最近、身の回りでおかしなことが起こっていませんか?」

 杉本教諭の問いかけに、微妙な表情をする3人。

「それと、三好くんに山中くんに、金子さんに古谷さんだったと思うのですが、何かきいいていませんか?彼らも来ていると思ったのですが、来ていないので、まずは見つけた君たちに話を聞くことにしたのです」

「え?」
「はぁ?」
「・・・」

 三者三様の反応だが、彼らが今日の葬儀に参列したのも、杉本教諭が参列したのも建前の理由は別にして、根本的な理由は同じだったのだ。

 4人の手元に届けられた、同窓会の案内と同時に届けられた手紙がある。
 内容はそれぞれ違うものだったのだが、無視できるような内容ではなかったのだ。

 差出人が、”須賀谷真帆”となっていたのだ。
 いじめを苦に行方不明になった少女からの手紙が添えられていた。それを確かめる為に、4人は葬儀に参列したのだ。

 杉本教諭が上げた8人の名前(立花/山崎/三好/山中/西沢/日野/金子/古谷)は、真帆をいじめていた側の人間なのだ。勿論、3人には杉本教諭が何を聞きたいのか解っている。解っているのだが答えられない。なぜなら彼らもまたそれを確認したいと考えていたのだ。

「杉本。それで、お前はなんて招待を受けた?」

 立花が発したこの言葉は、立花が目の前に居る3人以外と接触して、情報を得ている証左である。
 しかし、自分以外にあまり関心がない3人は、立花が言った言葉を深く考える事なく、話を流してしまった。

 立花は、招待状を送りつけられてから、”須賀谷真帆”の名前から自分を貶める一派が有るのだと推測した。そして、父親の権力を使って調べさせた。

 今、4人が参列している葬儀も、”須賀谷真帆”からの招待状を受け取っていた1人だった。

 4人は、その場では同窓会に顔を出すことだけを確認して、”須賀谷真帆”からの招待状に関しては、言及しないまま別れた。
 過去の事象が現実に牙を向き始めたことを認識した。

2020/03/30

【序章】第一話 終わり

 すべて終わったわけじゃないけど、ボクにできる事はもうない。

 パパ。ママ。ユズ姉。ボクは地獄に行くよね。ボクは、天国には行けないよね。これだけのことをしたのだから、当然だよね。
 後悔なんてしていないよ。ヤツラは、奴は、それだけの事をしたのだから、報いを受けないとね。ボクは、喜んで地獄に行くよ。この身体が・・・心が・・・100万回引き裂かれても、悠久の時を苦しもうと後悔はしないよ。ボクは、パパとママとユズ姉とナユ兄のことを思い出して、それだけでボクは大丈夫。だから、ボクのことは安心してね。

 パパとママとユズ姉の為にしたことじゃ無いからね。

 パパ。ママ。ユズ姉。ナユ兄を見守ってあげて欲しいな。
 ボクには、もう何もできそうに無いから・・・。

 バイバイ。
 ボクの大切な人。ボクの大切だった人。ボクを大切だと言ってくれた人。

「父さん!どういうことだ!」
「ナユ・・・。俺にも、わからない。今、母さんとユズが探しに行っている」
「だから、どうして、真帆が帰ってきていないことが問題になっている!まだそんな時間でも無いだろう?」

 那由太の指摘が正しいことは、父親も認識している。
 夏に差し掛かる時期で、18時と言ってもまだ薄暗くなる程度の時間だ。それに、真帆が今日は習い事そろばんに行く日で帰ってくるのは、19時近くになる予定だ。その時間に合わせて、今年中学3年になった那由太が迎えに行くことになっている。

 須賀谷家は、祖父母と父親と母親と長女である柚月。長男である那由太。年の離れた皆から可愛がられている真帆の7人家族だ。いや、だったと言うべきなのかも知れない。

 ここの所、須賀谷家は不幸が連続している。

 船乗りであった、祖父が釣り人の事故に巻き込まれるようにして海に投げ出されて行方不明になっている。
 祖母は、祖父の事故があった翌々日に街で轢逃げされ、病院で息を引き取った。祖母の葬儀の準備をしている最中に、祖父が遺体で発見された。背中に刺し傷があったことから事故ではなく事件扱いになったが、祖父の事故を引き起こした釣り人は結局見つかっていない。

 祖父母を短時間の事件で失った。
 祖父を突き落としたとされる釣り人だけではなく、ひき逃げ犯もまだ捕まっていない。捜査が行われていることになっているのだが、誰かが捕まったという情報すら出てこない。マスコミも最初は報道したのだが、なぜか報道が一斉に自粛され、どこも報道しなくなってしまった。

 そんなタイミングで、末っ子の真帆が塾に来ていないと連絡が来たのだ。

 姉の柚月が連絡を受けてすぐに家を飛び出した。母親も、嫌な予感がして家を飛び出した。

 父親は、二人が飛び出してしまったことで、家に残って連絡係をすることにしたのだ。
 そこに、長男である那由太が帰宅した。那由太は、部活に出ていたが、柚月が学校に探しに来た時に話を聞いて、急いで家に帰ってきた。

 那由太が急いで帰ってきたのにもわけがある。
 真帆は学校でいじめられていたのだ。それも、理由が理不尽すぎるのだ。いじめている連中のことはわかっているし、家族揃って真帆には学校に行かなくてもいいと行っている。小学校の授業くらいなら、柚月も那由太も教えられる。母親も父親も教えることができるので、大丈夫だと言っていた。

 真帆は、恵まれた環境だということでいじめられていた。それだけではなく、父親と母親の仕事が影響しているのは間違い無い。
 父親と母親は、地方紙の記者をしている。地域に根強く残っていた村社会による差別やいじめ、それによる不当な取引の実態を調べ上げて記事にしたのだ。記事は正当な物だが、一部の既得権益に染まっていた連中から見たら裏切り以外の何物でもなかった。
 特に、町議会から県議会に上がって、国会議員になっていた者へのダメージは大きかった。その議員自身が何かをしていたわけではない。昔からの慣習に従っただけだ。だから、国会議員はマスコミで釈明すればそれで終わったのだが、そうならなかった者たちが居た。
 議員の名前を使って、地元で利権を貪っていたヤツラだ。国会議員も、自分の名前を使われたと釈明した。実際の所はわからないが、地元ではそれで筋が通った。禊も終わった。問題は終息したはずだった。

 しかし、自分たちが法律違反をしたと思っていなかったヤツラは、国会議員に見捨てられたことよりも、そんな記事を書いて、地元の慣習を壊した記者を裏切り者だと糾弾した。幸いなことに、既得権益を得ていた一部の者たちは、昔からの住民ではなく、既得権益を得る為にやってきた者たちだ。
 一部の者は街を追われるように出ていった。街には、高層マンションが立っていて、そこの住民で既得権益を得ていた者は多くが残った。後から来た住人が、田舎町を馬鹿にする。

 そんな図式の中で、真帆は馬鹿にしてきた自称セレブな住民の子供を馬鹿にした。相手にしなかったというのが正しいのかもしれない。選民意識を持った親から教育を受けていた子どもたちは、自分たちも選ばれた人間だと思っている。そんな自分たちのことを無視する地元の子供を許せるわけがなかった。
 すぐにいじめに発展した。最初は、無視するレベルだったことがエキサイトした。暴力になるまで時間は必要なかった。

 そんな真帆が学校から帰って来て、習い事に来ていない。

「ユズ!」

 父親と那由太が言い争いをしている所に、柚月がボロボロになってスカートを履いて、膝を擦りむいた真帆を連れて帰ってきた。母親もすぐに戻ってきた。
 港に呼び出されて、言われた場所に居たら後ろから殴られたと言っている。父親も、母親も、柚月も、那由太も、真帆が言っていることが嘘だとわかっていても、真帆が言いたくないのだろうと考えて、あえて詳細に関しては聞かないことにした。

 それが間違いの始まりだったとしても、須賀谷家の”今”は、通常な状態ではなかった。

 そんな事件が発生してから、1ヶ月後。
 真帆が通っている小学校では、キャンプが行われることになった。キャンプは、二泊三日で行われる。元々予定されていた物で、参加は義務ではないが強制に近い物がある。父親も母親も柚月も那由太も心配して、参加を取りやめるように言ったのだが、真帆が友達と約束しているから参加すると言って、キャンプに行くことになった。

 キャンプで何が有ったのか家族にはわからない。
 何度も、何度も、何度も、キャンプ場に足を運んだ。そして、学校にも、教育委員会にも直訴した。しかし、返答はいつも同じだ。”警察の捜査結果を待っている”しか帰ってこない。

 キャンプ二日目の肝試しから真帆が帰ってこない。
 連絡を受けた須賀谷家は、父親と那由太が現場に向った。すでに複数の親が子供を迎えに来ていた。

「先生。どういうことですか?」
「須賀谷さん・・・」

 先生の説明でわかったことは一つだけだ。真帆が、肝試しが終わった後から姿が見えないということだ。警察と消防が出てきて、キャンプ場の周りを探しているから、しばらくしたら見つかると説明を受けている。父親と那由太は、説明を聞いて、学校が何もするつもりがない事が解って、自ら動くことにした。
 三日間山狩りに参加したが、手がかりは真帆が当時履いていた靴の片割れと、スカートの一部と思われる物が見つかっただけだ。

「父さん!ナユ!どういうこと?」

 家に連絡して、進展がないことを告げることが辛くなっている。
 母親は、心労が溜まって倒れてしまった。父親も、いつ倒れても不思議じゃない状況だ。

 真帆を発見できないまま父親と那由太は家に帰った。
 靴とスカートの一部を持ってだ。

「きっとヤツラだ!」
「ヤツラ?」
「真帆をいじめていたヤツラに決まっている!」

 那由太は、ナイフを持ち出して、家を飛び出そうとしていた。

「ナユ!」
「ユズ姉!邪魔するな。真帆を取り返す!ヤツラを脅せば何か解るはずだ!」
「那由太!少し落ち着きなさい。それは、私の役目。いい、あんたは、父さんと母さんをしっかり見ていなさい!」

 柚月は、那由太を諌めてから、家を出た。
 那由太が、柚月の生きている姿を見たのはこれが最後だった。

 柚月は、高層マンションが立ち並んでいる一角がある場所の近くにある交差点で車に跳ねられた。
 ひき逃げだった。

 翌日、父親と母親が部屋で刺されて死んでいるのが見つかった。

 第一発見者は、那由太だった。那由太が、柚月の遺体を引き取るために家を空けた時に、空き巣が入ったと警察は考えた。
 短時間に、真帆以外の家族の全員を亡くした。真帆も、今何処に居るかわからない状況だ。

 那由太の心はこわれてしまった。

 警察も何もしていなかったわけではない。しかし、なぜか数ヶ月経って那由太の心が壊れてしまって、子供の居なかった母親の姉夫婦に引き取られてから、祖父を突き落とした釣り人は結局見つからないまま捜査継続は不可能と判断された。祖母をひき逃げした車の特定ができているのに証拠が不十分で捜査打ち切りとなった。真帆は結局いじめを苦に行方不明という曖昧な幕引きとなり、柚月のひき逃げはいくつもの不可解な状況だったのにもかかわらず捜査もされないで放置された。父親と母親を刺した犯人はその後捕まったが、覚醒剤の常習者が薬代を買うためのお金が欲しくて空き巣に入って住民を刺し殺したと説明された。

 柚月は、高層マンションに向かう途中で轢き殺されたとなっているが、なぜか首に殴られた跡があったり、顔にも手で殴られた跡があったり、後頭部に打撲痕がある状態だ。そして、死後に車に轢かれたという最初の報告書がいつの間にか書き換わっている。証拠となる車の破片なども現場には一切に見つかっていない。ブレーキ痕さえもなかった。そして、一番不思議なことは、柚月の服装には一切の乱れがない状態で道路に寝た状態で見つかったのだ。血痕すら見つかっていない。この状態で、ひき逃げと断定した警察が非難されることがなかったのも不思議なことだ。

 両親の場合は、犯人は捕まっている。
 捕まっているが不思議なことがある。金がほしいのなら、リビングに置いてあった財布には手が付けられていない。何かの為にテーブルの上に置いてあった20万の現金にも手を付けていない。そして、夫婦の寝室に一直線に向かっている。4人分の土足の足跡が確認されている。須賀谷家が、土足で生活していなければつかない場所に足跡が残されていた。

2020/03/30

【第七章 王都ヴァイゼ】幕間 孤児院

 俺がしっかりしないと!
 クソジジイから初めて頼まれた。

 弟と妹たちを頼むと言われた。当然だ。俺の妹と弟だ。絶対に守る!

 俺たちの生活が変わったのは、領主のバカ息子が妾のために屋敷を建てると言い出した時だ。
 前から、俺たちが住んでいる場所が目障りで何かと嫌がらせをしていた。成人して卒院した兄ちゃんや姉ちゃんが遊びに来たときに教えてくれた。

 俺たちは、クソジジイが運営している孤児院で俺を含めて11人の子供が住んでいる。
 俺が一番年上だから、長男だ。本当の兄弟や姉妹ではないけど、俺たちは兄弟で姉妹だ。俺の次は、一つ下のイチカだ。しっかり者だけど、甘えん坊だ。それから、弟と妹が9人居る。

 住んでいた場所は、リップル領の領都だ。もともとは、もっと田舎の農村に住んでいたけど、魔物に村が襲われて・・・。
 弟も妹も同じ様な境遇だ。領都に来れば仕事があると思っていた。子供でも雇ってくれる所があると聞いたからだ。でも、そんな物はなかった。俺やイチカはクソジジイに無理やり掴まって孤児院につれてこられた。そのときに、兄ちゃんや姉ちゃんに聞いた話では、子供を領都近くに集めて、捕まえて帝国に奴隷として売っている連中がいる。俺とイチカも捕まりそうになっていた所を、クソジジイに救われた・・・。

 俺は、狼人族。イチカは、羊人族。弟や妹も純粋な人族は居ない。獣人族だったり、ハーフだったりする。
 俺たちのような子供は帝国では高く売れるのだと言っていた。売られた先がどこであれ人として扱われる事は皆無だと教えられた。

 クソジジイたちは俺たちを本当の子供のように扱ってくれた。
 悪いことをすれば怒られる。ジジイとババアは、元冒険者だと言っていた。俺たちに戦闘の手段や交渉の方法だけではなく読み書きや簡単な計算も教えてくれた。俺たちの役に立つと言っていた。正直、戦闘訓練以外は楽しくなかった。クソジジイに何度も殴られた。でも、俺が行かないと妹や弟が泣くから、俺も勉強とやらをしていた。イチカは俺とは反対で、交渉や読み書きや計算が好きだ。

 飯は正直に言って美味しくない。でも、しっかり食べられる。孤児院の裏には畑もある。兄ちゃんや姉ちゃんが、狩りで仕留めた獲物を持ってきてくれる時もある。スラム街のボスの1人であるルーサはクソジジイの昔の仲間だと言っていた。ルーサのシマなら俺たちでも入ってもいいと言われている。よくわからないが、必要悪だと言っていた。あの日・・・。兄ちゃんや姉ちゃんが神殿の話をしてくれた。ユーラットの近くに有るらしいがまだ攻略されていない。冒険者を目指すのなら、神殿の攻略を目指せと言われた。兄ちゃんと姉ちゃんは、リップル領では獣人やハーフには仕事がやりづらいからリップル領から出て王都に向かうと言っていた。王都がダメならレッチュ領で仕事を探すと言っていた。

 俺たちは、兄ちゃんと姉ちゃんを見送った。美味しいお肉を沢山貰った。クソジジイは内緒にしているが、マジックバッグを持っている。その中に余った肉をはじめ物資を隠している。

 兄ちゃんと姉ちゃんを見送った数日後。
 戦闘訓練をして、計算の勉強をしていたときに、奴らは孤児院にやってきた。
 俺が飛び出そうとした時に、クソジジイに止められた。

「カイル。これを持って逃げろ」

「クソジジイ!なんでだよ!俺だって戦える!剣だって使える!孤児院を守る!」

「ダメだ!お前は、イチカや子どもたちを連れて逃げろ。お前にしか頼めない。頼む。カイル!これからは、お前が」

「だったら、クソジジイも一緒に・・・」

「ダメだ。ここは、あの娘だけじゃなく、今まで救えなかった子たちが眠る場所だ!奴らの好きにさせてはならない。解ってくれ。カイル。儂の最後の頼みだ」

「いやだ!俺も戦う!俺は、兄ちゃんや姉ちゃんと約束した!みんなを守るって!ジジイやババアを守る!」

 ドアを叩く音がどんどん乱暴になっていく。
 窓から見ていた妹が震えてイチカに抱きついている。表には、10人以上が武器を持ってニヤニヤしている。窓から顔を出したイチカをニヤニヤしながらいやらしい目で見る。

「カイル。カイル。かわいい。かわいい私の子。カイルは、乱暴な言葉遣いだけど、しっかり考えられる子で、優しい子だよ。だから、最後に、婆と爺さんの願いを叶えて欲しい」

「ババア・・・。だったら・・・。一緒に・・・」

 ダメだ。俺は、長男だ。俺が泣いてはダメだ。俺が、みんなを守る!

「カイル。それは出来ないのじゃよ」

「なんでだよ!みんなで逃げれば・・・」

「奴らは追ってくる。婆と爺さんがここで抵抗すれば、お前たちが街から出て、ルーサの所に行くくらいの時間は稼げる。マジックバッグを持っていけば、ルーサも事情を察するだろう。その後、リップル領を出て、レッチュ領にお行き。あそこなら、カイルとイチカが居れば生きて行ける。それで余裕が出来たら、婆と爺さんのことを思い出しておくれ」

「いやだ!嫌だ!イヤだ!」

 なんでだよ!俺たちが何をした!
 殺してやる!絶対に殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!

「カイル!」

 え?
 なんで?ババアが泣いて・・・。俺・・・。頬が痛い?

 なんで?俺・・・。泣いて・・・。ババアに抱かれて、涙・・・。

「カイル!カイル!お願いだからそんな顔を止めてくれ。カイル。良いかい。奴らは愚かで、馬鹿で、人でなしで、悪人だ。でもね。カイル。カイルまで、あんな奴らと同じにならないでおくれ。お願いだから。カイル。笑っておくれ。婆を嬉しそうにババアと呼んでおくれ。爺さんを、クソジジイと呼んでおくれ」

「・・・。ババア・・・。俺・・・」

 外から声が聞こえる。
 ドアを壊して壁を壊せと馬鹿が怒鳴っている。

「カイル!イチカ!もう時間がない。お前達が抜け出す時に使っていた地下通路を使って逃げろ!」

 クソジジイが叫ぶ。

「イチカ。先に行ってくれ!俺は最後に行く!」

「ダメ。カイルも一緒!」

「大丈夫だ。少し荷物を取りに行くだけだ」「カイル!」

 俺は走り出していた。
 俺とイチカが使っていた部屋に兄ちゃんから貰った短剣が隠してある。武器がないとダメだ。

「クソジジイ。ババア。さっさと奴らを倒してルーサの所に来いよ!一緒に逃げるのだからな!」

「そうだな。婆さん。カイルに一本取られたな。確かに、儂と婆さんならあんな奴らの10程度、殺すのなら一桁足りないな」

「そうじゃな。爺さん。久しぶりに暴れてみるのもいいだろう。カイル。さっさと行きな。あんたが居ると邪魔だよ」

「わかった」

 クソジジイもババアもいつの間にか完全武装している。クソジジイは、バスターソードを二本持っている。兄ちゃんたちとの訓練でも一本しか持っていなかった。ババアも杖とリングをしている。イチカが一度使った時には、ほとんどの魔力を使ったが魔法が発動しなかった杖だ。エルダーエントが材料だとは言っていた。

「カイル。早く・・・」

「クソ・・・。父さん。母さん。死なないで!」

 本当の父さんと母さんの顔も声も知らない。俺の父さんと母さんは、爺さんと婆さんだ。

 隠し部屋から外に繋がる通路がある。隠し部屋に入るときに、父さんと母さんがこっちを振り向いて笑ってくれた。笑っている父さんの肩には弓が刺さっている。父さんのバスターソードの一本からは血が流れている。もう一本は、腕と一緒に床に転がっていた。

「カイル・・・。皆を頼む」

「父さん!!!!」

「カイル!早く扉を閉めなさい」

「母さん!」

 母さんが扉に向けて魔法を発動した。俺は、その勢いで飛ばされた。扉が閉まった。叩いたが開けられない。

「父さん!!母さん!!」

「カイル!早く!」

「イチカ・・・。なんで・・・」

「カイル。早く、母さんが結界を張ってくれているから、今のうちに・・。早く!」

「・・・」

「カイル?」

「イチカ。俺は・・・」

「カイル!父さんと母さんになんて言われたの!最後まで・・・。あんた・・・」

 イチカが俺の手を引っ張る。俺は、父さんと母さんを助けたい。でも、力が・・・。
 イチカなら何か考えられるのか?兄ちゃんたちなら?姉ちゃんたちなら?

 神様・・・なら?

「カイル!あんたがしっかりしなきゃ!誰が私たちを助けてくれるの!父さんと母さんの約束を・・・」

 そうだ。父さんは、俺に頼むと言った。母さんも俺に笑って欲しいと言った。俺が居ると邪魔だと・・。力がないからか?俺が弱いからか?俺が馬鹿だからか?

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「カイル!?」
「カイル兄」「カイル兄ちゃん」

 俺は弱い。弱い!強くならねば・・・。父さんと母さんの代わりは無理でも、妹と弟を!
 そうだ、父さんと母さんを殺してしまった俺にもできる事がある。絶対に誰も死なせない。俺が守る。

「イチカ!カロン!ルイナ!セブ!モニカ!クビサ!ニコ!ダンテ!マリノ!エルモ!」

 皆が俺の呼びかけに返事をする。情けない俺をまだ慕ってくれているのがわかる。父さんと母さんを救えなかった・・・。殺してしまった俺を頼りにしている。

「逃げるぞ!」

 長い、長い、逃亡の始まりだった。

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2020/03/30

【君と決めたルール】僕がルールを破る時

 何気ない日常の何気ない時間。
 それが僕にとってかけがえのない物だったと知ったのは、何もかも・・・。”自分の身体”と”君への想い”と”君と決めたルール”だけが残された日だった。

 君は、僕にそんな事を望んでいないだろう。
 僕は、初めて、君との約束を僕の都合で破る事にする。

 君と決めたルールは4つ。この4つは何が有っても変えないと二人で決めた。
1.嫌がる事はしない
2.他人に迷惑をかけない
3.辛くても笑おう
4.大切にする
 だ。
 今から1番と4番のルールを破る。


 高校1年の最初の席決めの時に、隣に座ったのが君で良かった。
 最初にルールを決めようと言ったのは君だった。どうせ、1学期だけだと思って、僕は承諾した。

 それから、君は高校3年間ずぅーと僕の隣だった。
 数え切れないほど、君はルールを決めた。

 明日持ってくるお弁当をルールで縛った事も有った。
 君はルールという名前のゲームを楽しんでいるようだった。僕も、君と決めたルールを守るのが嬉しかった。

 ルールで君と繋がっているのがわかったからだ。

 最初のキスも、君が決めたルールだった。

 初めて身体を重ねたのは、僕が決めたルールと罰で、君がわざと破って罰を実行する事にしたからだったよね。

 お互いにルールを決めて、ゲームを楽しんだ。
 僕たちは、高校3年間で数えきれないルールを決めた。

 僕たちは、高校3年間の高校生活をルールに則った恋愛ゲームを本気で楽しんだ。


 私は、君に恋をした。
 私は、君を最初から好きだった。

 私は、最初から君を求めていた。

 私は、最後まで君を守るつもりだ。

 私は、ルールを決める事で、君を守りたい。

 君は、私のすべて。私が、君のすべてじゃなくてもいい。私のすべては君の物。
 私が、私で決めたルールだ。


 男と女は、高校卒業して、就職した。

 男の両親も女の両親も、高校卒業後に二人がプレゼントした旅行で・・・。飛行機事故で帰らぬ人となった。
 それから、二人はお互いしか居ないと、より強く思うようになった。

 高校時代から続けているお互いのルールでお互いを縛った。

 二人しか居なくなった、男と女は自然な流れで、結婚した。

 言葉は少なかった。
 お互いが決めたルールではなく、社会的なルールには興味がなかった。

「結婚しよう」
「うん」

 これだけだった。

 二人だけの小さな小さな結婚式をあげた。職場の人も、古くからの友人も、誰も呼ばない二人だけの結婚式だ。

 それが周りから見て異常な事だとしても、お互いは二人だけが決めたルールに従っている。

 男と女には、社会が決めたルールに従って、多額のお金が舞い込んできた。
 しかし、男と女は、そのお金を全額寄付してしまった。自分たちの決めたルール。

・お金は自分たちで稼いだ分だけを使う。

 したがって、お互いに稼いでいないお金は必要がない物だった。
 自分たちと同じ様に両親を無くした子供たちが居る事を知って、その子たちが過ごす児童養護施設に寄付する事に決めた。

 もともと、肉親への興味が薄かった二人は、お互い以外は必要としていなかった。

 そんな二人が決めたルールは、4つのルールの上に成り立っていた。
1.嫌がる事はしない
2.他人に迷惑をかけない
3.辛くても笑おう
4.大切にする

 二人だけが解る二人だけのルールだ。


 男は暗い部屋に通された。頭に巻いた包帯が痛々しい。

「細川さん。落ち着いて聞いてください」
「大丈夫です。落ち着いています」
「奥様・・・。真帆さんで間違いありませんか?」
「・・・。刑事さん。教えてください。僕が、ここで、真帆じゃありませんと言ったら、真帆は帰ってきますか?」
「・・・。細川さん」
「大丈夫です。落ち着いています。真帆と決めたルールで、いつだったかな・・・。そうだ、高校の文化祭で決めた物だ。”取り乱さない”と決めました。そうだ。破ったら、相手の望む所にキスをするだったかな・・・。ねぇ刑事さん。教えてください。僕が、ルールを守らないから、真帆は寝たままなのですか?」

 男は、泣くわけでもなく、喚くわけでもなく、淡々と刑事に質問していた。
 刑事が答えられるわけもなく・・・。時間だけが流れていった。

 男は、唯一人の理解者で、ただ1人の肉親を失った。
 通り魔に殺されたのだ。

 お互いの休みを利用して、買い物にでかけた。二人で街にあるスーパーにでかけた。買い物をすませた帰り道。

「真帆!」

 ナイフを振り回す男が、男の目に映った。
 男は、女と男の間に身体を入れた。女は振り返って、ナイフを持った男が自分の半身を世界で一番大切な男に向かって、ナイフを振りかざしたのを見た。

 女は、咄嗟に男を抱きしめて、身体を回転させた。
 ナイフは、女の背中に刺さった。ナイフを持った男は、ナイフを抜いて、女を何度も刺した。骨にナイフがあたって折れるまで何度も何度も刺した。男は、倒れ込む女を支えて、地面に頭を打ち付けて意識を飛ばした。

「よかった・・・りゅうちゃんを守れた・・・。よかった。ルールを・・・わたし・・・守れたよ・・・りゅ・・・うちゃ・・・ん」

 女は自分が死ぬ事が怖かった。
 最愛の竜司に会えなくなるのが怖かった。

 竜司が守れたのが嬉しかった。

 竜司は1人だけになってしまった家に戻った。
 笑っている真帆の写真を見つけて、部屋に飾ってある。

 遺影は、二人で決めていた。
 お互いにいつ死んでもいいようにルールを決めていた。

 竜司は、真帆の生命保険を全額寄付した。二人が決めたルールを守ったのだ。
 翌日から仕事に出た竜司を同僚や上司は心配した。でも、竜司は、真帆以外から心配されても嬉しくなった。

 毎日のように流れるニュースにも興味がなかった。
 犯人が解っても、真帆が帰ってくるわけではない。
 犯人の父親が偉い議員の先生だからと言って、真帆が新しいルールを決めてくれるわけではない。
 犯人の父親が代理人を通して慰謝料を持ってきたからって、真帆が自分のルールを守ってくれるわけではない。

 竜司の顔は、笑顔で愛想笑いの状態で固まってしまったかのようになっている。
 真帆と決めたルールの三番目を実行している。”辛くても笑おう”

 親戚を名乗る者たちや、竜司と真帆の事を知っていると言っている者たちがマスコミを賑わしている。そんな話を聞きながら、竜司は笑って過ごしている。

 竜司は、真帆と一緒に過ごした時間を大切にしたいだけなのだ。

 マスコミや世間が、竜司を追い詰めていった。
 竜司は、いつの間にか、壊れていた。

 竜司は、真帆が眠る場所を毎日訪れて話しかけるのが日課になった。
 高校の出会いから、真帆と最後に買い物に行った日までを繰り返している。

 そして、真帆のルールを思い出して、最後に笑ってその場を立ち去る。
 まるで、なにかやらなければならない事を思い出したかのように、にこやかに笑って立ち去るのだ。

(真帆。僕は、君と決めたルールを守るよ。でも、君はルールを守ってくれなかったよね。だから、僕もルールを破る。君と決めた罰を君は実行してくれるのだろう?)


 男は、2つのルールを破る事に決めた。

 ”嫌がる事はしない”
 男は、女が自分の復讐なんて望んでいない事は解っていた。嫌がるだろう事も解っていた。でも、自分の気持ちが抑えられないのだ。妻を、最愛の女性を、世界で唯一人の身内を奪った犯人ゴミが許せない。

 ”大切にする”
 男と女は、決めていた。お互いの身体を大切にする事。自分の身体も心も大切にして、疲れたら休む事。自分の身体を傷つけない事。男は、復讐を果たした後で女の所に旅立とうと思っている。もしかしたら、会えない旅路かもしれない。長い長い旅路になるかも知れない。そう思っていても、男は女が居る場所に行くために、旅立つ決心した。

 男と女のルールには、破った時の罰則がある。

 4つの基本のルールを破ったら

 男は言った
「死んでも許さない。ずぅーと一緒に居る」

 女は言った
「ルールを破ったら、探してずぅーと側に居る」


「また、その事件ですか?」
「・・・。不思議な事が多いからな」
「そうですよね」

 二人の刑事が見ている調書は、被疑者死亡で終わった事件だ。

 被害者は、5年前に通り魔殺人事件を起こしている。
 薬をやっていて、善悪の判断ができていなかったという理由で無罪になっている。父親が有名な議員先生だった事も影響しているのかも知れない。マスコミも、事件当初は通り魔事件と大々的に報じたが、犯人が解ってからは報道を自粛するようになった。

 厚生施設に送られていた男が、遠い施設に移される事が決まった当日。

 通り魔事件で唯一死亡した女性の旦那が通り魔犯を殺害した。

 自分の妻が刺された場所をと寸分違わない場所を刺していた。背中を9箇所刺した。

 警官の護衛も居た。少ないがマスコミも居た。

 だが、誰一人として犯行現場を見ていなかった。
 白昼の空白。そんな言葉が皆の頭によぎった。

 男は、最愛の妻が眠る墓地の前で、墓地を汚さないように、布をかけて、墓地に寄り添うように自分で腹を切って自殺した。自分の血で墓地や地面が汚れないように、細心の注意がされていた。墓地とノートを抱きしめて眠るように死んでいた。

 墓の前には、几帳面な字で事件を起こした事の謝罪と経緯が細かく書かれていた。
 議員の息子が何時出てくるのかを知るために、男は議員の事務所で働き始めた事も書かれていた。議員の不正も全部メモとして残していた。

 ”他人に迷惑をかけない”
 自分の死後に、警察が調べたりする手間を省いたのだ。男は女の決めたルールを守っただけなのだ。
 墓地が汚れたりしたら迷惑をかけると思ったから、男は細心の注意をはらった。

 男は、ルールを書いた、三冊にも及ぶノートを胸に抱いて、眠るように旅立った。

「どうやって殺したのか?」
「そうですよね。マスコミもいたし、警察も居たのですよね?」
「・・・。それに、刺し傷が全部同じなんてあり得るか?」
「無理ですよね。それに、事件現場から見つかる場所までもかなりありますよね?」
「あぁまるで誰かが助けたようだよな」

 二人は持っていた調書を閉じた。

fin

2020/03/29

【第七章 王都ヴァイゼ】第十六話 孤児とユーラット

 子どもたちはすぐに見つけられた。

 セミトレーラのライトに照らされた子どもたちは怯えていた。
 馬が居なくても走る大きな馬車で、大きな目玉から光を放って、自分たちを見ているように見えれば大人でも怖くなってしまうだろう。子どもたちは、粗末な格好で生きているのが不思議な状況になっている者も存在している。

 皆が怯えた目でライトが落とされたセミトレーラを見ている。
 最初、ヤスが近づこうとしたのだが、ドーリスに止められた。男性が近づくよりも、女性である自分が行った方がいいと判断したようだ。

 ドーリスを降ろして運転席から状況を観察しているヤスにマルスから連絡が入った。

『マスター。個体名ツバキが後30分ほどで到着します』

『わかった』

 ヤスは、窓を開けてドーリスに呼びかける。

「ドーリス。ツバキが3-40分で到着する食べ物が必要なら運んできた物資を使ってくれ」

 ドーリスはヤスの声を聞いて、OKのサインを送る。
 言葉を出さなかったのは、前に居る少年や少女との話を優先したほうがよいと判断したからだ。

 10分くらいして、ドーリスはヤスの所に駆け寄ってきた。

「どうした?物資が必要か?」

「あっ・・・。大丈夫です」

 ヤスは、ドーリスがアイテムボックスから食料を出しているのを見たがスルーして問いかけたのだ。意味はなかったが、ドーリスが隠したので、話をしていて何かアイテムボックスにしまったのだと判断した。

「そうか」

「彼らは、リップル領から、神殿の噂を聞いて流れてきたようです」

 唐突にドーリスはヤスに説明を始めた。

 ヤスは、黙ってドーリスの説明を聞いた。
 ドーリスが聞き出した内容は少なかったが、重要な話も多かった。

・彼らは当初はレッチュ領の領都を目指していた。
・入都を断られた。
・デイトリッヒに会うために領都に向かった。
・冒険者に神殿の噂を聞いた。冒険者が近くと通る商隊に乗っていけるように手配してくれた。
・休憩所では近くの木々から果物を採取して食べた。

「ドーリス。子どもたちは無事なのか?」

 ヤスの問いかけの意味をドーリスは正確に理解した。

「はい。リップル領を出てから1人の脱落もないと言っています」

「そうか、よかった。でもな、ドーリス。根本部分を説明してもらっていないぞ?」

「・・・」

 ドーリスが言葉を濁した部分だ。
 彼らが、レッチュ領を目指すきっかけがあったはずだ。

「彼らの居た孤児院が・・・」

「どうした?」

「はい。彼らの孤児院が、リップル子爵の次期当主を名乗る男性に接収されたようです」

「は?孤児院は、別に子爵が運営していたわけじゃないのだろう?」

「はい」

「それで、経営者や世話をしていた人たちが居ただろう?なんで、子供だけになっている?」

「・・・」

「ドーリス」

「彼らの言葉なので、本当かわかりません」

「そうか、教えてくれ」

「はい。引退した冒険者の老夫婦が経営していたらしいのですが・・・」

「あぁ」

 ヤスは、この時点ですでにどうなったのか解ってしまっている。
 言いにくそうなドーリスと先程見た子どもたちの様子で薄々とは気がついていた。

「殺されました。目の前で・・・」

「そうか・・・。証拠があっても、次期当主だと罪に問うのは難しいのか?」

「無理だと思います。レッチュ領ならしっかりとした証拠があれば・・・。でも、リップル子爵領では無理です」

「そうか、だから、領都では彼らを保護出来なかったのだ」

「え?」

「門番がどこまで考えていたのかまではわからないが、彼らを領都で保護しているとリップル子爵が知ったらどうすると思う?」

 ヤスの指摘は的外れだったのだが、ドーリスには危険があると思えた。

「子爵家から、領民を奪ったと言われる可能性があります」

「子供だけだから余計にそうおもうよな」

「はい」

 ドーリスもヤスも勘違いしていた。
 リップル子爵の自称次期当主が欲しかったのは、孤児院が建っていた場所なのだ。自分が気に入った者に与えて自分の評価を上げるためだ。孤児院が邪魔だったのだ。ただそれだけのために孤児院を潰して、管理人を子供の前で斬り殺したのだ。
 中に子供が住んでいたとしても興味の埒外にあった。実際、孤児院を取り壊す時に死んだか、逃げ出してスラム街にでも移り住んだと考えた。ただ、孤児院に有るはずだった物がなかったために、自称次期当主は荒事を専門に行っている者たちを雇って子どもたちを追わせた。追わせたが、子どもたちの行動が早かった。指の間からすり抜けるように難を逃れた。

 子どもたちが荒事を専門にしているやつらの手を逃れて自領を出て神殿近くにたどり着いているとは思っていない。

「あぁそれで彼らは神殿に連れて行っていいよな?ダメっと言っても、ツバキを呼んでいるから連れて行くけどな」

「大丈夫です。それで申し訳ないのですが、ヤスさんはユーラットに寄るのですよね?」

「そうだな。アフネスが何か渡したい物があるとか言っていた」

「ここまでくれば道案内も必要ないと思いますし、私はツバキさんと神殿に戻ろうと思います。私がここでツバキさんを待っていますので、ヤスさんはユーラットに移動してください」

「・・・。そうか、頼む」

 ヤスは、窓を閉めた。
 ツバキもすぐに来るだろう。ドーリスが入れば、子どもたちも安心できるだろう。
 それに、あの場所ならセバスの眷属たちが見守っていてくれるだろう。

 ヤスは安心しユーラットにハンドルを切った。

 途中でツバキが運転する小型バスとすれ違った。

 ヤスは、懐かしいユーラットに戻ってきた。

 ヤスは、裏門までセミトレーラを移動させた。セバスの眷属たちによる舗装された道を通り抜けた。

 裏門では、アーティファクトが近づいて来たのを知ったアフネスが待機していた。

「ヤス」

 セミトレーラを停めた。ヤスにアフネスが声をかける。

「アフネス。俺に用事が有るのだろう?」

「伝言を聞いてくれたのだな」

「あぁ・・・。それで?」

 アフネスは、窓越しに丸めた羊皮紙をヤスに渡す。

「これは?」

「リーゼの父親を中心にまとまった者たちで決めた事だ。ヤスが神殿を攻略したと認める証書だ。それと、アーティファクトがヤスの物だという証書も作成してある」

「え?」

「神殿の方は、持っていてくれればいい。エルフの関係者に何か言われたときに見せれば、大丈夫だ。アーティファクトは、ドーリスかサンドラに渡せばわかるだろう」

「どういうことだ?」

「ヤスのアーティファクトは複数存在するだろ?」

「あぁ」

「魔剣なんかと同じ扱いにして、所有登録をギルドでしてしまえば、たとえ盗まれても見つかれさえすれば取り戻せる」

「そりゃぁ登録しないとダメだな」

「頼む。ギルドに書類を出せばできるようになっている」

 ヤスは、アフネスに礼を言って神殿に向かう。
 セミトレーラでも曲がれるように設計された道なのでなんとか曲がれている。ヤス以外がセミトレーラを運転出来たとして、神殿-ユーラットの道は無理だとは思うが、ヤスしかセミトレーラを運転しない状況では困らないだろう。フルトレーラはヤスでも無理だと思うが、現状の運搬ならセミトレーラで十分だろうと思っている。

 何事もなく、神殿の都テンプルシュテットに到着した。神殿の守りテンプルフートでは丁度カスパルがバスでユーラットに向かう準備をしていた。何人かの神殿に入られなかった者たちを載せていくようだ。料金は取っていないので文句は出ていない。門の通過儀礼を試して入られなかったので、ユーラットで休んでからもう一度試すと言っている。幾度行っても結果は同じなのだが、諦めなければ道が開かれると思っているのだ。

「ヤス様!」

「カスパル。ユーラットか?」

「はい!行ってきます!」

「お!頼むな。途中でツバキとすれ違うかも知れないけど、俺は神殿に到着したと伝えておいてくれ」

「わかりました!」

「そうだ、ディアスは家に居るのか?」

「その・・・」

「どうした?もう喧嘩か?」

「違います!リーゼとサンドラと神殿の地下に・・・」

「え?カートか?」

「はい。夕方には帰ってきますが・・・」

「わかった。サンドラも一緒なのだな?」

「はい。多分」

「わかった」

 定刻になったので、カスパルは7人を載せてユーラットに向かった。
 ヤスは神殿の守りテンプルフートを通り抜けて神殿に向かうロータリーに近づくと、セバスが待っているのがわかった。

 ロータリーでは停めずに、そのまま地下の駐車スペースにセミトレーラを停めた。

2020/03/29

【紙とペンと復讐】復讐を誓った男の行動

 そこは、寂しい港町。始発を待つ者は誰も居ない。

 誰も居ないと解っていながら、1人の男性は毎日ホームに立つ。

 ホームで始発電車が到着するのを待っている。

 男が持つメモ用紙には、電車の時刻表と到着時間がメモされている。

 ホームに電車が滑り込んでくるのを待っている。

 数分後に、電車がホームに滑り込んできた。
 男は、ホームに吊り下げられている時計を見る。毎朝、男が調整している時計だ。

 電車が止まって扉が開く。
 寂れた港町の駅では降りる客も少ない。

 始発となれば、0人が規定の数字だ。

 男は、ホームで客を見ている。
 改札は自動改札が導入されている。それでも、お年寄りが多い港町なので、男の手伝いが必要になる場合がある。

 男は、誰も降りてこない事を確認した。
 男は、ホームから電車が離れたのを確認して娘が残した唯一のペンで、メモ用紙に電車が止まった時刻と利用者数を書き示す。

 男の仕事は、駅長となっている。男1人で廻しているような小さな駅だ。

 男は、天涯孤独だ。元々は、妻と小学5年生になる娘が居た。男の娘は、学校でいじめられていた。
 男が知ったのは、娘が海に身を投げてからだ。男が仕事をしている最中の出来事だ。
 そして、身体が弱かった妻が娘の自殺を知って・・・。翌日に自分で、自分の人生の幕引きを行った。

 男は、いじめで宝物だった娘と最愛の妻を失った。
 男は、止める周りの言葉を無視して翌日から業務に戻った。心に決めた事がある。誰にも話していない、誰にも相談していない事だ。

 それから、男は1人で過ごしている。死ぬことを考えた、しかし死ぬのを辞めた。辞めたと言うのは間違っている。男は、ある事を心に決めているのだ。それから、電車の時刻と利用者数を書き始めた。そして、時々利用者数の数字を4色で印を付けている。数字を○で囲んでいる。

 1日1枚のメモ用紙を使って、娘が修学旅行で買ってきた唯一の形見であるペンを使って、時刻と電車と利用者数と丸印を付けている。

 男が、メモ用紙にメモを作り始めて、7年。娘が本来なら高校を卒業する年になっていた。
 毎日付けていたメモも溜まっている。

 男は、終電が出ていくまで同じことを繰り返す。時間帯によっては、利用者の人数が数えられない事もある。その場合には、自動改札のデータを見る事にしている。

 そして、利用者が減っている事が解っている。

 7年。男にとっては長くも短くもあった7年がすぎた。形見である娘からもらったペンも修理をしながら使っている。メモ用紙も大量になっている。大量の紙とペンで記された印を見ながら、男は決心した。

 男は、娘をいじめた奴らが、娘が高校卒業するまでに、娘に詫びを入れてくる事を期待していた。
 そして、校長を除く学校関係者が1人でも謝罪に現れる事を期待していた。

 学校側もいじめの事実を認めた。男は、学校側が謝罪してくれるものとして、謝罪を聞いてから、娘と妻が待つ場所に向かおうと考えていた。しかし、学校だけじゃなくいじめていた本人たちやその親の1人も、謝罪に現れなかった。

 ただ1人、校長だけが・・・校長として謝罪に現れた。
 校長は、学校を辞めた。自分なりのけじめをとったのだ。男が嬉しかったのは、校長が自分の事を覚えていてくれたことだ。男は、校長がまだ新人と言われる年齢の時に、男の担任だった人物だ。
 涙を流しながら謝罪してくれた。そして、命日には毎年墓前を清掃して、仏壇にも謝罪に来てくれている。妻にも同じ様に謝罪してくれている。

 関係者の中で校長だけは許そうと男は考えた。

(まずは娘の担任の女性だ)

 7年間、担任は学校には電車を使って通っている。
 毎日顔を合わせておきながら会釈もしない。男が一番許す事ができない人物なのだ。

 メモから剥がして、大量になった紙の中から、担任の印を探す。
 担任は、今年に入ってから木曜日に遅くなる事が解っている。

「結城さん」
「え?」

 男は、担任を拉致して、県境を越えた山の中に生きたまま放置する事にしている。
 娘と妻が眠る海から遠ざけたかったのだ。

「結城さん。私の事がわかりますか?」
「なっ・・・。なんで・・・。こんな辞めて・・・。私が何をしたって言うのよ!離しなさい!」

 担任がヒステリックな声をあげる。
 男は、うるさそうにしながら話を続ける。

「そんな、ヒステリックにならないでください。私の事がわかりますか?」
「あんたなんか知らないわよ!早く、私を離しなさい」
「はぁ・・・。そうですか。残念です。私の事がわからないのなら、目は必要ないですよね」

 男は、持っていたペンで、娘の形見とは違うペンで、担任の目を潰す。
 担任の絶叫が響き渡る。心地よい音を聞いているかのように、男の心には揺らがない。

「うるさいですね。こんな人だったのですね。残念です。それに、謝罪するつもりが無いのなら、必要ないでしょう」
「し・・・ゃ・・ざ・・・い?」
「まだわかりませんか?本当に、残念な人ですね」

 男は、口枷をする。
 口枷が取れないように、顔に瞬間接着剤で固定する。手枷をして、足枷をして、小屋を出る。
 顔が判断できないように、薬剤を顔にかける。別に、これで死ななくてもどうでもよかった。事情を知ってから苦しんでもらっても構わない。男を恨んでくれても構わない。そう考えているのだ。
 小屋は男が購入したものだ。男は、自分がやりたい事が終われば、その後の事など考えていない。

「簡単に死なないですから安心してください。私はそろそろ帰らないと朝の業務に遅れてしまいます」

「それでは、結城。さようなら」

 男は、また翌朝から同じ事を行う。
 ホームや待合室から聞こえてくる噂話に耳を傾ける。

「結城先生が今日無断欠勤したけど、なにか聞いているか?」
「うーん。またじゃないのか?あの人、月に何回か同じ事をするからな」
「だよな。それに心配してもしょうがないだろうな」
「あぁそうだな。口うるさいヒステリックな人が居なくて静かで良かったよな」

 そんな話声が聞こえてくる。
 男がつける印の色がその日から減った。

 男が付けている印はあと3つ。
 娘からもらったペンで付けられ色は全部で5つ。一つは、これで使わなくなる。

 男は、そっと、ペンからその色を抜き取って、元々入っていた。使えなくなってしまったインクをペンに戻す。

(次は誰にしましょうか?決まった行動をしている人からにしましょう。そうなると、こっちの男ですね。この女は最後にしたほうがいいでしょう。早くしないと、娘と妻に合うのが遅くなってしまいます)

 男は、定期的に電車を使っている、二人の男を順番に拉致する事にした。
 男は、二人の男性を観察していた。それこそ、7年間毎日の様に観察していた。1人は、力があるように思えたので、男は考えて身体を鍛えた。力負けをしたら計画自体がダメになってしまう。

 インターネット通販で気絶させる事ができるほどの威力になっている違法なスタンガンを購入している。
 同じ様に、大量の違法薬物も入手している。自分で使うためではない。

 まず、男は、男性を拉致する。
 スタンガンで気絶させて、担任が待っている場所につれていく。首輪をして目隠しと口枷と手枷をしてある。首輪や目隠しや口枷や手枷を外すと電流が流れる仕組みになっている事を教える。実際に電流は流れるが死ぬほどではない・・・と、考えていた。

 男は次の日に、もうひとりの男を拉致する。
 そして、同じ様に首輪を目隠しと口枷と手枷をする。餌も何も与えない。必要ないと思っている。

 担任はまだ生きている。顔を潰した状態で二人の男の前に全裸で放置している。

 翌日、男は、娘を自殺にまで追いやった女を拉致する。

 男は、担任以外の口枷を外す。手枷を外して、男は姿を見せないで、3人に問う。

「7年前に自分たちが何をしたか覚えているのか?」

 3人から期待した言葉は返ってこない。

 男は、黒色以外をもとに戻したペンで、持ってきた紙に言葉を書く。

”思い出したら言ってくれ、明日また来る”

 そして、目隠しを外して、その場を立ち去る。
 用意してある食べ物や飲み物には、大量の媚薬が混ぜ込んである。
 同じ様に、部屋を温める為に用意した囲炉裏には違法薬物が混ぜ込まれた草木が置いてある。火をつければ幻覚作用がある煙が出るようになっている。

 最後の女は、全裸で首輪だけの状態になっている。
 どうなろうと関係ないと、男は思っている。

 翌日、男が小屋を尋ねると、予想通りの展開になっている。
 首輪を外そうと頑張った形跡もあるのだが、無理だったようだ。

 鉄の鎖で首を覆っているだけではなく首の周りも鉄製の者を使っている。

 男は、昨日と同じ様に、新しい紙に娘のペンで言葉を綴る。

 最初に死んだのは、担任だったようだ。
 男と女に食事を与えられなくて、何度も犯されてから死んだ。

 次は、片方の男だ。もうひとりの男に殺された。

 次は男が死んだ。
 女が最後に残ったのにはわけがある。

 男が、男と女だけになった時に、女にナイフを渡した。

 女は、男を刺して、自分の首輪を外そうとしていたができない。男に、懇願したが、男が求めている言葉ではなかった。

 男は、女の様子を観察した。そして、ヒントを与えたが女が思い出す事はなかった。
 女は最後まで、謝罪の言葉を口にする事はできなかった。でも、女は生きていた。

 男は、監禁してから、7日目に男のところに警察が来た。

 男は、翌日に娘が自殺した港から身を投げた。

 男は、詳細にメモを残していた。
 警察がたどり着く時に、女が生きていようと死んでいようと関係ないと書きながら・・・だ。

 女は、娘の友達だと、娘が紹介した女だからだ。
 男は、娘の友達が助かるのか、死んでしまうのか、どちらでもいいと考えていた。

 男の遺体はすぐに見つかった。
 男は、娘のペンと、妻が残した紙を持って、海に浮かんでいた。

 男の顔は穏やかだった。

 男が使っていた部屋には、男がメモに使った紙とインクが無くなったペン先と復讐の為に使った道具が残されてた。

fin

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2020/03/28

【隣の料理人】食事のスパイスは勘違い?

 その女性の住む部屋は、古いアパートだだ。

(はぁ今日も疲れた)

 誰も待っていない部屋に女性が入っていく。手に持っているのは、近くにある弁当屋さんの袋だ。

 部屋に入って、仕事場にしていくポニーテールを解いて、髪の毛を下ろす。

(どんどん。好きだけど・・・今日も、隣の部屋からはいい匂いがしている)

 アパートと言っても、女性の一人暮らしだ。セキュリティには気を使った。
 部屋を借りる時に、隣に音が聞こえないようにとか、周りにどんな人が住んでいるのかを確認していた。

 しかし、匂いまでは気にしていなかったのだ。キッチンは通路側ではなく、ベランダ側になっている。少し変則的な2LDKの作りになっている。
 そのために、ベランダ越しに匂いが漂ってくるのだ。

(美味しそうな匂いだな。今日は、何を作っているのだろう?焼きそばかな?)

 女性は隣に住んでいるのが、一つ年上の男性だと教えられている。

(まさか、美味しそうな匂いさせやがってと怒れないよな)

 買ってきた、”舞茸のり弁”を袋から取り出す。

(私も料理したら。時間がないから無理!)

 という言い訳をし続けて、もうすぐ1年が経つ。
 その間、キッチンを使ったのは3回だけ。

 キッチンではお湯を沸かすだけになってしまっている。

(ゴミ捨てとかでお隣さんに会うけど、料理なんてしているように見えないけどな。でも、ギャップがいいなぁ。彼女とか居るのかな?イケメンってよりは、かわいい系?古川慎くん似で好みだな)

 彼氏居ない歴=年齢の女性には隣の男性に声をかけるなどという高難易度のミッションをこなすことなどできない。

(はぁ今日もお隣さんは、美味しそうな物を作っているな。ソースのいい匂いだな)

 男性は、綺麗なキッチンで、封を切ったカップラーメンにお湯を注いでいる。
 3分待てばできるやつだ。

 仕事場から近くだからと借りた部屋だったが、その仕事場が不況の煽りを受けて、田舎に引っ越してしまった。
 せっかく入った会社なので、男性は辞める事なく勤めている。

(通勤時間5分。夢の生活だと思ったのに、いきなり通勤時間30分だからな。それでも幸せだと思わないとな)

 男性が部屋を決めたのは、裏に駐車場がついている事だ。隣は空き部屋だと教えられた、角部屋とそうじゃない部屋のどちらでも大丈夫だと言われたが、角部屋の方が家賃が高くなっているし、駐車場もついていないと言われた。

 男性が部屋を決めてから3ヶ月後に、空き部屋の一つに女性が引っ越してきた。

 年齢=彼女いない歴の男性は、今日もカップ麺をすすって餓えをしのいでいた。

(ごちそうさま!ゴミ出しの時に会う様な子が作った料理ならもっとうまいのだろうな)

 今日は近くのスーパーの安売りをしている日だ。男性はカップ麺を求めてスーパーに来ていた。

「あれ?大家さん?」
「古川さん?」

 大荷物を抱えた、大家さんが男性の前でレジを行っていた。

「古川さんも、買い物?」
「はい。安売りだったので」
「それにしては、あまり買っていないようだね」
「えぇ一人暮らしですから、こんな物じゃないですか?」
「そうなのね?」

 二人は無人のレジで支払いを済ませた。

「そうだ。大家さん。車で来ていますから送っていきますよ。荷物もあるし歩いて帰るよりはいいでしょ?同じ場所に帰るのだし」
「そうじゃね。お言葉に甘えましょうかね」
「はい。正面に車を廻してきますね。あっ。荷物、持っていきますね車に積んでおきますよ」
「それなら、私も一緒に行きますよ」

 二人は並んであるき始めた。
 男性は、自分の買い物を手に持って、カートには大量に買っていた、大家さんの荷物を入れている。日用品も多いが、食料も多い。男性から見たら、何ができるのかわからないような、肉や野菜や魚介類が大量にカートに積み込まれている。

「大家さん。こんなに食べられるのですか?」
「ハハハ。孫が、今度遊びに来るからな。その時に出す料理の材料じゃよ」
「あぁそうなのですね。それで、調味料とかも沢山あるのですね」
「なんと言ったかな、あの板みたいな奴。孫娘が持ってきて、これでレシピがいろいろ見られるからって置いていってから、試しにやってみているのですよ」
「へぇそうなのですね」

 男性は、車に大家さんが買った物を積み込んで家まで帰る事にした。

 暫く車を走らせたら
「あっ!古川さん。ちょっと停めて!」
「どうしました?」
「孫娘が高校合格したお祝いを予約してくる!」

 近くのケーキ屋さんで予約をするようだ。

「それなら待っていますよ」
「後で取りに行くから買い物したものをお願いしていいかい?」
「問題ないですよ。冷蔵庫には余裕がありますから」

 男性は自虐的に少しだけ笑ってから停めた車を走らせた。

 駐車場について、大家さんが買った大量の食材や調味料を抱えながら、自分のカップ麺が入った袋を持って部屋に戻る事になった。

「あっこんばんは」

(え?普段はポニーテールだと思っていたけど、学校?に行くときだけど?普段は下ろしている?こんな時間に、デートなのかな?やっぱり彼氏が居るのだろうな)

 女性は、今日は仕事が休みだったので、一日部屋で過ごしていた。
 さすがに何も食べないのは辛いがせっかくの休日にお弁当では気分が滅入ってしまう。そう考えて、夕方に外に食事に出かける事にした。自分で作るという発想は女性の頭からすっかり消えている状態なのだ。

「あっこんばんは」

(え?)
「あっこんばんは」

 女性は、荷物を抱えた男性とすれ違った。

 男性が持っていた物を女性が見て少しだけ残念な気分になってしまった。

(やはり、料理を作っているのね。それに、あの量。やっぱり、彼女が居るのね)
(こんなすっぴんで、髪の毛に縛った跡を残して、普段着のまま近くの定食屋に食事に出かけるような女じゃ彼女にはなれないよね)

 女性は、マンションの敷地から出て、どっちに行こうか迷っていた。駅方面に向かうか、スーパー方面に向かうかだ。

 スーパー方面から小柄な女性が歩いてきた。

「大家さん。こんばんは」
「はい。こんばんは。森川さん。今からデートかい?」
「違いますよ。今日お休みだったから、なにか買ってくるか、食べてこようか、考えていたところですよ」
「そうなのかい?」
「はい」

 大家さんは少しだけ考えていた。
 女性は、孫娘よりも少しだけ上だが、最近の女性には違いない。

 大家さんから見たら、15歳も23歳も大した違いはない。

「そうかい。森川さん。ちょっと私の手伝いしてくれないかい?」
「手伝いですか?」
「孫娘の合格パーティを開くのだけど、その時に出す料理を食べてみて感想が欲しいのだけどダメかい?」

 女性は少しだけ躊躇したが、以前に食べた大家さんからもらった”お煮しめ”の味を思い出して、承諾してしまう。
 そして、外食をするという計画から、大家さんの家で食事をするという話になってしまった。

 一通りの食事を終えて、女性は食事代を払うと大家さんに言ったのだが
「いいよ。意見ももらったし、食事代なんていらないよ」
「そう言われても」
「そうかい?」
「はい」

 大家さんは少しだけ考えてから
「それなら、明日ゴミの日だろう。ゴミ出しを頼めるかい?」
「もちろんです」

 女性は、明日の朝のゴミ出しの約束をして、少しだけ幸せの気分で部屋に帰った。

— 翌朝

 男性はいつもの時間に起きて、いつもの様に支度をして、部屋を出る。ゴミの日なのはわかっているが自炊をしていない男性の1人ぐらいではゴミは殆ど出ない。月に一回程度で十分なのだ。

 女性はいつもよりも早く起きて、大家さんの部屋に行った。
 約束していたゴミ出しをするためだ。

「おっ」

 男性が扉を開けると、大きなゴミ袋を持った女性がドアにぶつかりそうになっていた。

「あっ申し訳ない」
(やっぱり、あの匂いは、この子からだったのか?大学生なのに毎日料理を作るなんて)

「いえ、大丈夫です」
(社会人だと聞いていたけど、魚とか匂いがしてくる、やっぱり料理しているみたいだね)

「おはようございます。ゴミ。持ちましょうか?」
(少しでも話せるチャンスだからな。彼氏が居るとは思うけど)

「いえ・・・。あっそれなら、これお願いします」
(そんな捨てられた子犬みたいな顔されたら・・・。私のゴミは恥ずかしいけど、大家さんのゴミなら・・・)

「わかりました」
(生ゴミって事は、昨日の夜に作ったのかな?)

「あっありがとうございます」
(優しいな。勘違いしちゃいそう)

(話が続かない・・)
(なにか話さないと・・)

 二人は黙って、階段の方に歩いていく。

「あっ」
「どうしました?」
(私、なにかまずかった?)

「いえ、なんでもないです。学生さんですよね?」
(俺は、いきなり何を聞いている!?馬鹿なの?馬鹿なの?ほら、困っている)

(え?私の事?)
「え・・・いえ、働いています。社会人一年目です」

(え?)
「そうなのですか?」
「はい。あっゴミ重くないですか?」
(・・・。大家さんのゴミだから大変かな?)

「いえ?平気ですよ。でもすごいですね。一年目で、しっかりされていて」
(すごいな。一年目なんて大変なのに、料理を毎日しているみたいだし)

「いえ、そうでもないです」
(仕事は慣れちゃったけど、食べ物が・・・なぁ)

 二人は黙ってゴミ捨て場まで歩いた。
 ゴミ捨て場では、大家さんが掃除をしていた。

「あれぇ二人ともおはようさん」
「おはようございます」「おはようございます」
「古川さん。昨日は荷物ありがとうね。森川さん。ゴミ捨てありがとう。帰りに寄ってね。お煮しめ作っておくから!」

 大家さんは掃除をしながら、昨日お互いに聞いた、料理をしない話や彼氏や彼女が居ないと言った話をしてしまった。

「え?」
「え?」

 二人に微妙な空気が流れる。
 お互いの勘違いが一気に解消されていった。

 一年後に角部屋の表札が”古川・森川”という物から”古川”に変わった。
 そして、使い込んだキッチンからは匂いではなく二人の笑い声が聞こえてくる。

fin

2020/03/28

【読了】転生したらスライムだった件 16 (GCノベルズ)

雑感

表紙詐欺?
表紙は、ギィがかっこよく書かれていますが、ギィの登場は最後に外伝ぽく書かれているだけです。戦争の後始末といつものテンペストです。安定した面白さで安心出来ます。Web版とは違ってきていますが軌道修正があるのでしょうか?
あと4冊(予定は未定)だということです。アニメ二期が放送中に一冊出て、二期の最終で最終章のスタートの1冊が出るのでしょうかね?

書籍紹介

内容紹介
帝国との戦いに勝利を収めたリムルだったが、
ルドラの身体を乗っ取ったミカエル、妖魔王フェルドウェイの暗躍と、
やっかいな問題はまだ残ったままであった。

リムルが戦っていたその裏で起きていた、地下迷宮のラミリス防衛戦もまた不安を煽る。
とはいえ一先ず窮地は脱したことで、リムルはこの機に部下たちの面談を行うことに……。
出版社からのコメント
シリーズ累計1,500万部突破!
スライムが異世界で成り上がる!
チートスキル『大賢者』と『捕食者』を武器に
最強モンスターへの道を突き進む!
大人気異世界転生ファンタジー小説!


関連作品

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2020/03/28

【読了】OAD付き 転生したらスライムだった件(14)限定版 (講談社キャラクターズライツ)

雑感

アニメになったら一番盛り上がる所だと勝手に思っています。各主人公級が活躍するのでアニメが待ち遠しいです。
ODAは、その1になっています。7月に出るはずの自作も期待できる内容です。

書籍紹介

内容紹介
TV放送開始とともに大ヒットとなったアニメ「転生したらスライムだった件」。
その完全新作オリジナルアニメーションが登場!!

■STORY
サラリーマン三上悟は、通り魔に刺されて死亡し、気がつくと異世界に転生していた。ただし、その姿はスライムだった!リムルという新しいスライム人生を得て、さまざまな種族がうごめくこの世界に放り出され、「種族問わず楽しく暮らせる国づくり」を目指すことになる。

イングラシア王国・自由学園で教師としてシズさんの教え子たちと過ごすリムルだったが、
毎年恒例の学校行事・野外訓練の季節がやってきた!
クラスごとに目的地まで旅をしながら実地で戦闘を学ぶオリエンテーションだが、
なぜかやたらとリムルを目の敵にする名誉教諭のジェフ先生に挑発され、
優勝賞金に目が眩んだリムルは思わず勝負に乗ってしまう。
しかし生徒たちの前に思わぬ敵が現れて…!?

原作・伏瀬先生がOADのために描き下ろした、完全新作エピソード!
自由学園のSクラスの愛すべき問題児たちも登場!

■収録時間約25分

■スタッフ
原作:川上泰樹・伏瀬・みっつばー(講談社「月刊少年シリウス」連載)
監督:菊地康仁
副監督:中山敦史
脚本:筆安一幸
キャラクターデザイン:江畑諒真
モンスターデザイン:岸田隆宏
美術監督:佐藤 歩
美術設定:藤瀬智康、佐藤正浩
色彩設計:斉藤麻記
撮影監督:佐藤 洋
グラフィックデザイナー:生原雄次
編集:神宮司由美
音響監督:明田川 仁
音楽:Elements Garden
音響制作:マジックカプセル
アニメーション制作:エイトビット
製作:講談社

■キャスト
リムル 岡咲美保
大賢者 豊口めぐみ
ベニマル 古川慎
シュナ 千本木彩花
シオン M・A・O
ソウエイ 江口拓也
ハクロウ 大塚芳忠
ゴブタ 泊明日菜
ランガ 小林親弘
リグルド 山本兼平
ガビル 福島潤
ソーカ 大久保瑠美
トレイニー 田中理恵
ミリム 日高里菜


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2020/03/28

【読了】神に愛された子1 (アルファポリスCOMICS)

雑感

作画崩壊?最後の方がひどい。Webで読んでいた時は感じなかったけど、コミックスになって読んでみたらひどく感じてしまった。

書籍紹介

内容紹介
善人が異世界転生したら国王の孫に!?しかもその身体は眉目秀麗で絶大な魔力を持つチート性能な美少年だった!

神の特徴とされる白髪と青い目そして「神に愛された子」という謎の称号――。世界から愛されまくりのまったり救世ファンタジー第一巻!


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2020/03/28

【読了】ナイツ&マジック (11) (ヤングガンガンコミックス)

雑感

少し駆け足になったかな?もう少し説明が欲しいところですが、しょうがないのでしょうね。書籍版を読んでいれば問題はないレベルですが、そうでなければ置いていかれる可能性があります。

書籍紹介

内容紹介
反撃は、鮮烈にーー。
王女エレオノーラの希望の光は、煌々とクシェペルカの旧領を照らす。
だがその明るすぎる灯火は、ジャロウデクの敵意をも引き寄せる。
迫る大軍、立ち向かうエル達「銀鳳商会」はーー、モチロン大胆不敵に正面突破!?
「大西域戦争編」大会戦の第11巻!!


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2020/03/28

【読了】もふもふを知らなかったら人生の半分は無駄にしていた (1) (MFC)

雑感

Web版を読んでいたのでコミカライズを購入。初っ端が少しだけ残念だけど、かわいいは正義なのでしょう。それ以降は、主人公の年齢設定がよくわからなくなってしまいますが、それも作品の良いところなのでしょう。

書籍紹介

内容紹介
転生少年ともふもふが織りなす異世界ファンタジー!

魂の修復のために異世界に転生したユータ。
異世界で再スタートすると、ユータの素直で可愛らしい様子に周りの大人たちはメロメロ。
おまけに妖精たちがやってきて、魔法を教えてもらえることに。
いろんなチートを身につけて、目指せ最強への道…?
いえいえ、目指すはもふもふたちと過ごす、
穏やかでのんびりした田舎ライフです!

転生少年ともふもふが織りなす異世界ファンタジー、第1巻!


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2020/03/28

【読了】オーバーロード (13) (角川コミックス・エース)

雑感

詰め込んだね。帯だけが違う世界観になっているのがいいですね。
ハムスケの出番がないのが悲しい。

書籍紹介

内容紹介
王国編クライマックス!! ナザリック日常編も描き下ろし50Pで収録!!

王国編、ついに決着!! モモンを筆頭とする王国軍とヤルダバオト率いる悪魔の軍勢との戦いの行方は――?! デミウルゴスによるゲヘナ計画の真の狙いが明かされる注目の第13巻! ナザリックの日常も覗き見!!


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